初海外から帰還した「くまの」 目的は訓練と親善だけではなかった
海上自衛隊のもがみ型護衛艦の2番艦「くまの」が2023年6月10日、約2か月間に及ぶインド太平洋方面派遣を終えて、母港の海上自衛隊横須賀基地に帰還しました。海上自衛隊の最新鋭護衛艦もがみ型の2番艦として2022年3月22日に就役した「くまの」にとって、今回のインド太平洋派遣は初の海外展開任務となりました。2018(平成30)年から毎年行われている海上自衛隊のインド太平洋方面派遣は、艦艇部隊や航空機部隊がインド太平洋地域に長期間展開し、その間に同地域の各国を訪問します。その国だけでなく、同じく同地域に展開している同盟国アメリカ、その他同志国の海軍、国境警備隊などとの意見交換や友好親善訓練を通じ、海上自衛隊の技量の向上と相互理解の増進、信頼関係と連携の強化を図る事を目的としています。
「くまの」も出港直後の4月と帰還直前の6月に同志国であるフランス海軍の艦艇と日本近海で共同訓練を行ったほか、5月11日にはジャワ海でインドネシア海軍のコルベット「パチムラ」といて親善訓練を実施しましたが、今回の「くまの」の展開には別の意図もあったと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。それは、「くまの」の属するもがみ型護衛艦のベースとなった「30FFM」の、インド太平洋地域の国々に対するセールスプロモーション、すなわち売り込みという側面です。4月11日に海上自衛隊横須賀基地を出港し、6月10日に同基地へ帰還するまでの2か月間、「くまの」はシンガポール、マレーシア、インドネシアの3か国に寄港していますが、シンガポールでは5月4日に開催された国際海洋防衛装備品展示会「IMDEX Asia 2023」へ、マレーシアでは5月30日にランカウイ島で開催されたランカウイ国際海洋航空宇宙装備品展示会へ、それぞれ参加しています。いずれもインド太平洋地域から多くの海軍関係者が集まるイベントです。
インドネシアに売り込んできました!
30FFMを開発した三井E&S造船を買収し、もがみ型の建造を行っている三菱重工業は、日本の防衛・セキュリティ装備展示会「DSEI JAPAN」などで30FFMの模型展示などを行っているほか、防衛装備品の輸出を司る防衛装備庁も、2022年 12月にベトナムの首都ハノイで開催された防衛装備展示会「ベトナム国際ディフェンスエクスポ」で30FFMのプロモーション映像を放映したり、ペーパークラフトを配布したりしてきました。それを経て、IMDEX Asia 2023とランカウイ国際海洋航空宇宙装備品展示会への「くまの」の参加と一般公開は、セールスプロモーションにおいても大きなインパクトがあったものと思われます。
「くまの」は5月9日から11日まで、インドネシア、北ジャカルタのタンジュンプリオク港に寄港。この際、艦長の櫻井敦2等海佐は横須賀基地への帰還行事で、もがみ型(30FFM)の優れた先進性・技術力・省人化対応について紹介できたと総括しています。セールスのメインターゲットのひとつと目されているインドネシアに寄港し、同国海軍の要人などにアピールできた事は、30FFMのセールスだけでなく、日本とインドネシアの防衛協力の強化という側面でも、大いにプラスになったと筆者は思います。ただ、護衛艦として30FFMをまるごと輸出することにはハードルもあり、日本政府としては当面、考えていないようです。2022年10月15日付の共同通信は政府関係者の話として、30FFMそのものではなく、“ユニコーン”をインドへ輸出する方向で調整を進めていると報じています。
輸出のハードルも下がる“ユニコーンだけ”の輸出
もがみ型と30FFMはステルス性能を重視しており、海上自衛隊の護衛艦として初めてステルス性能を高める形状のマストを採用しています。このマストはその形状から、「ユニコーン」(一角獣)と呼ばれています。現在の防衛装備移転三原則では、救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型の防衛装備品に輸出を限定しているため護衛艦をまるごと輸出するには三原則の見直しが必要となりますが、ユニコーンは警戒と監視に用いる防衛装備品のため政府は現行の三原則でも輸出が可能であると見て、インドへの輸出を進めているものと思われます。日本は水上戦闘艦を輸出した経験が無いため欧米諸国やロシアなどに比べて競争力では見劣りがします。また防衛装備移転三原則の制約もあって、30FFMそのものの輸出の成功は未知数です。しかし、技術的に競争力があり、法的な制約も小さく済むユニコーンのような新技術の輸出はより現実的なのではないかと筆者は思います。(竹内 修(軍事ジャーナリスト))
ステルスマストだけの輸出というのもなかなか難しいだろう。輸出するなら船体も一体でと言う方が輸出しやすいだろう。搭載武器は米国製、主機は英国、ドイツ製なので製造国の了解が必要だろう。搭載武器や主機はバイヤーの好みである程度の冗長性を持たせて西側の主要武器、主機であれば搭載可能と言うことにすべきだろう。武器の輸出にはいろいろ裏があるのでただ単に性能がいいとか価格がどうとか言うだけでは難しい。日本の場合、さらに余計な条件が付くのでもっとややこしくなる。ロシアのウクライナ侵攻はいい機会だからウクライナに防空ミサイルシステムでも供与してやればいい。短射程なら無人機やミサイル防御のみだから人を殺傷することはないだろう。仮に殺傷したとしてもそれは使用した国の問題なので目を瞑るべきだろう。武器の輸出と言うのは本来殺傷用のもので使い方は買い手の良心に委ねるべきだろう。輸出するなら余計な条件を付けず武器輸出についてもっと学ぶべきだろう、・・(◎_◎;)。
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Posted at
2023/07/06 14:54:45