防衛省は26日公表した「防衛計画の大綱(防衛大綱)」見直しの中間報告で、相手国のミサイル基地などを破壊し、日本の被害を未然に防ぐ「敵基地攻撃能力」の保有を検討する姿勢を打ち出した。近年の安全保障環境の厳しさを踏まえ、日本は防衛、攻撃は米国という「盾と矛の関係」を転換し、日本の防衛力の「自立」戦略を描いた形だ。ただ、国内外からの慎重論も予想され、年末の新防衛大綱にどこまで反映されるかは未知数だ。
◇反映には課題も
「自衛のためにミサイル基地を攻撃するのは、当然検討すべき内容だ」。小野寺五典防衛相は26日の記者会見で、敵基地攻撃能力の保有に関しこう説明した。
自衛隊は▽地上配備型のPAC3▽海上配備型のSM3--の2段構えで弾道ミサイルを撃ち落とす「ミサイル防衛(MD)システム」を構築。日本に飛来するミサイルの97~98%は破壊できるとされるが、「撃ち落とせない可能性が数%あり、何発も撃たれたら大変なことになる」(小野寺氏)との懸念がある。
他国内の攻撃拠点を断つことで自国を守る敵基地攻撃について、政府は1956年の国会答弁で「自衛のための攻撃であれば憲法上認められる」との見解をすでに示している。だが攻撃に使用する大陸間弾道ミサイルや長距離爆撃機は、政府は憲法上保有できないと解釈しており、巡航ミサイルの保有も高度な技術や多額の予算が必要だ。このため実際には、敵基地攻撃能力の保有・行使を米国に100%依存してきた経緯がある。
ところが近年、北朝鮮によるミサイル発射の脅威や、国内のミサイル技術の高度化などを背景に、自民党を中心に敵基地攻撃能力の保有を求める意見が拡大してきた。自民党は「日本が独自に攻撃力を持てば抑止力が強まり、敵にミサイル発射を思いとどまらせることができる」(党幹部)として、今年6月、敵基地攻撃能力の保有を検討するよう政府に提言した。
一方、米国の東アジアへの影響力が低下している事情もある。安倍晋三首相は5月の参院予算委員会で、「(他国が)米軍が矛を使わないのではないか、という印象を持ちかねない」とした上で、「攻撃してください、と米軍に頼むという状況でいいのか」と述べた。日本政府関係者は「昔と違い、米国は日本の防衛に全責任を負うことに消極的になっている」と懸念を口にする。
日本が独自の攻撃力を持てば、周辺国が警戒を強め、結果的に地域の緊張が高まる恐れは消えない。「敵」の範囲を明確にしにくいだけに、アジア諸国からの懸念も予想される。公明党の山口那津男代表は26日のBS朝日の番組で「敵基地攻撃能力を持つこと自体が非常にリスクを伴う。慎重に議論する必要がある」とくぎを刺した。
さらに敵基地を攻撃する巡航ミサイルなどを導入する財源や、米国の同意が得られるかなど、課題は山積だ。防衛省幹部は「結論を出すまで4、5年はかかる」と話し、当面は「保有を検討している事実で他国をけん制する」(自民党幹部)ことが主眼になりそうだ。
どんな兵器を保有しようが兵器が勝手に他国を攻撃することはないので要はそれを使う人間の意志の問題だろう。日本だけが攻撃兵器を持つと他国に脅威を与えるというのもうがった見方でもっと危ない国はいくらでもある。核兵器は常に悪者にされるが、第二次世界大戦後、核兵器で死んだ人間は一人もいない。核兵器はそれなりに抑止力として機能してきた。それよりも自動小銃は各国で大量に生産されてこれで命を落とした人間の数は100万人を優に超えるという。要はそれを持った人間の使い方次第と言うことだろう。
しかし、他国を攻撃することが出来る兵器とは言ってもどんな兵器をどの程度保有し、どんな時にそれを使うのかと言う戦術的な問題の方がはるかに難しい問題だろう。中途半端では抑止力として機能しないし、そうかと言って持ちすぎても金もかかれば手もかかるのでこれも困る。緊縮財政下、あれもこれもというわけにもいかない。さて、どうする。
Posted at 2013/07/27 01:43:31 | |
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