1707年にイングランドと合同
なぜスコットランドで独立を求める声が高まっているのか理解するために、歴史的な背景を見てみましょう。かつてスコットランドは独立国でした。それがイングランドと合同してイギリスを形成したのは、300年ほど前の1707年のことです。スコットランドがイングランドと合同した1つの理由として経済的な利益があります。当時、イングランドは世界中で植民地を拡大して広大な帝国を形成しつつあったので、スコットランドではイングランドとの合同は大きな経済的な利益をもたらす、という期待があったのです。
実際、イギリスの植民地の内外で多くのスコットランド人が活躍することになりました。ちなみに、長崎のグラバー園で有名な幕末の武器商人グラバーもスコットランド出身です。
経済的利益が「独立」封じ込めてきたが
大英帝国の利益はほぼ300年にわたって独立を求める動きを封じ込めました。植民地がもたらす利益を享受していたスコットランド人にとって、イギリスからの独立は考えられなかったのです。
しかし、第二次世界大戦以降、イギリスが植民地を失うとともに変化が見られました。植民地独立がピークに達した1960年代に、独立を目ざすスコットランド国民党が急速に勢力を拡大したのです。また、60年代から70年代にかけて経済的な変化もありました。スコットランドに近接する北海油田が操業を開始したのです。大英帝国の利益がなくなる一方、北海油田の収益でスコットランドは独立しても経済的に自立可能である、という主張が説得力を持つようになりました。
1980年代のサッチャー政権の新自由主義的改革も独立を求める動きを後押ししました。サッチャー政権の改革で主要産業が衰退したことで反発が強まり、スコットランドでは保守党がほとんど議席をとれなくなりました。それにもかかわらずサッチャー政権が継続したことから、スコットランドでは独立しない限り自分たちが望まない政策を押しつけられるという見方が強くなったのです。ちなみに、そうした状況は、現在でもイギリスの中央政府が保守党中心の連立政権となっていることで継続しています。
その後、一定の自治権を持つスコットランド議会が設立されましたが、独立を掲げるスコットランド国民党が2011年にスコットランド議会の多数派となり、独立の是非を問う住民投票が実施されることになったわけです。
通貨は? EU加盟は? 国王は?
もしスコットランドが独立すればどうなるのでしょう。独立したスコットランドには厳しい船出が待っているようです。
まず、通貨についてですが、スコットランド国民党は独立後も現在のポンドを使用するとしています。しかし、イギリス政府や主要政党は、独立したスコットランドにはポンドの継続使用を認めない立場です。その結果、スコットランドは独自通貨を導入するか、ユーロを導入するかの選択を迫られますが、どちらの選択肢も経済的な混乱をもたらすことは必至です。
また、EUやNATOへの加盟も簡単ではありません。EU加盟についてはイギリスと同様に国内に独立問題を抱える国がスコットランドの加盟を妨害する恐れがありますし、NATO加盟についてもイギリスの核ミサイル原潜基地撤去をめざすスコットランド国民党の立場が障害となる可能性があります。EUやNATOへの加盟がスムーズに実現できなければ、独立したスコットランドは大きな不安材料を抱えることになります。
なお、イギリスの君主制はスコットランドの独立でどうなるのでしょう。スコットランド国民党は、独立しても現国王のエリザベス女王がスコットランドの国王となるという立場を明確にしています。実は、まだスコットランドが独立国だった頃、17世紀初頭からイングランドとの国家合同に至る18世紀初頭にかけて、スコットランドとイングランドは別々の国家でありながら同じ国王を持つ同君連合を形成していました。スコットランドが独立すれば、かつての同君連合が復活することになるようです。
通貨は? EU加盟は? 国王は?
もしスコットランドが独立すればどうなるのでしょう。独立したスコットランドには厳しい船出が待っているようです。
まず、通貨についてですが、スコットランド国民党は独立後も現在のポンドを使用するとしています。しかし、イギリス政府や主要政党は、独立したスコットランドにはポンドの継続使用を認めない立場です。その結果、スコットランドは独自通貨を導入するか、ユーロを導入するかの選択を迫られますが、どちらの選択肢も経済的な混乱をもたらすことは必至です。
また、EUやNATOへの加盟も簡単ではありません。EU加盟についてはイギリスと同様に国内に独立問題を抱える国がスコットランドの加盟を妨害する恐れがありますし、NATO加盟についてもイギリスの核ミサイル原潜基地撤去をめざすスコットランド国民党の立場が障害となる可能性があります。EUやNATOへの加盟がスムーズに実現できなければ、独立したスコットランドは大きな不安材料を抱えることになります。
なお、イギリスの君主制はスコットランドの独立でどうなるのでしょう。スコットランド国民党は、独立しても現国王のエリザベス女王がスコットランドの国王となるという立場を明確にしています。実は、まだスコットランドが独立国だった頃、17世紀初頭からイングランドとの国家合同に至る18世紀初頭にかけて、スコットランドとイングランドは別々の国家でありながら同じ国王を持つ同君連合を形成していました。スコットランドが独立すれば、かつての同君連合が復活することになるようです。
イギリス側にも大きな影響
一方、スコットランド独立により、イギリスは国土の約3割、人口や経済力のほぼ1割を失います。さらに、イギリスとスコットランドとの関係が通貨やEU加盟などをめぐって悪化すれば、イギリスの国際的な影響力がダメージを受けることになります。これまでイギリスはアメリカとともに国際社会のイニシアティヴをとってきましたが、スコットランド独立の影響で内向きの傾向が強くなれば、イラクやウクライナの内戦などでの国際社会の対応にも悪影響が出るかもしれません。
また、ヨーロッパの中には分離独立運動が見られる国が少なくありません。特に、スペインのカタルーニャではスコットランドにならって分離独立住民投票の実施が求められています。スコットランドの独立はヨーロッパの分離独立運動に大きな刺激となるでしょう。スコットランドの住民投票の結果は国際的に大きな影響をもたらす可能性があります。
20年ほど前に仕事で知り合ったスコットランド人に会いにスコットランドを訪ねたことがある。北国とはいえ、穏やかな気候のいいところだった。その当時もスコットランド人の英国人に対する反感や不信感は相当なものがあった。元々、イングランドはアングロサクソン人、スコットランド、ウェールズ、アイルランドはケルト人で人種も文化も言語も違う。ただ当時は経済的、あるいは軍事的に独立できるのかと言う不安がスコットランド人にはあったようだ。その後北海油田が発掘・開発されて経済的には不安はなくなって来たのかもしれない。いずれにしても戦いに負けて併合された国の自国文化に対する思いは計り知れないものがあるのかもしれない。あるスコットランド人が、「我々の正装であるキルト(スカート)をイングランド人は気持ちが悪いと言う」と憤慨していた。そう言えばエジンバラ城の衛兵もすべてスカートをはいていた。様々な民族が混じり合った国家では今後民族の自決独立の動きが強まるだろう。日本も琉球の独立が現実味を帯びて来るかも知れない。一民族一文化一言語と言われる日本だが、東日本と西日本、そして九州では何となく民族的な違いがあるようにも思う。いずれにしても民族自決独立の傾向が国際社会にどのような影響を与えるのか、注目していくべきだろう。ただ、個人としては英国は今のままで残って欲しいように思う。日本の近代化に大きな影響を与えた英国だが、かつての栄光は影を潜めたもののやはりその考え方は極めて誠実かつ紳士的で世界の常識とも言えるものだ。その英国が分裂して力をそがれるのは残念なことだ。
Posted at 2014/09/16 23:45:15 | |
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