英国からの独立の是非を問うスコットランドの住民投票は19日、反対多数で否決された。選管の最終発表によると、得票数は賛成161万7989票(得票率44.65%)、反対200万1926票(55.25%)。投票率は過去最高の84.6%だった。一部世論調査で賛成派が一時リードするなど住民を二分する大接戦となったものの、終盤で英国の主要3政党が自治権限の拡大を約束したり、反対派が経済への悪影響を訴えたりした戦略が功を奏し、英国は土壇場で国家の分裂を回避した。
事前の世論調査では独立反対派のリードは数ポイント程度で接戦が予想されていたが、結果は10ポイントの差がついた。背景には、経済悪化の懸念に的を絞った反対派の戦略がある。終盤に現地入りした反対派のブラウン前首相は、独立後は英通貨ポンドを使用できない可能性などを挙げ、「独立でスコットランド経済は地雷原を歩くことになる」と繰り返し警告した。
民間企業も「ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド」などの金融機関が、独立の場合本社をイングランドに移転すると表明。大手小売りチェーンも「値上げが避けられない」と相次いで声を上げた。こうした攻勢に、独立運動を主導したスコットランド自治政府のサモンド首相らは十分対応できず、最終盤で家計の影響に敏感な女性有権者らの支持を失った。
経済重視の傾向は地域別の得票数でも鮮明だった。約66%が「独立反対」に投票したダンフリーズ・ギャロウェイ、スコティッシュボーダーズの両地区はいずれもイングランド境界に近く、分裂によってビジネスへの悪影響が懸念されていた。反対派が多数を得たエディンバラも金融業が盛んで、現状維持を望む声が投票行動に反映した模様だ。
一方で、賛成票が予想以上に多かった地域もある。グラスゴーを含む南西部の3行政区だ。伝統的に製造業・重工業が盛んな地域だが、エディンバラやアバディーンに経済の中心が移行し、産業の空洞化や高齢化が進む中、変革志向が強かったとみられる。もう一つの「賛成派勝利」地区の東部ダンディーでも工場閉鎖が相次ぐ中、現状打開へのエネルギーが賛成票を押し上げたとみられる。英国が進める産業のサービス化や、ロンドンへの一極集中に対する人々の不満の強さを浮き彫りにした格好だ。
サモンド首相は19日の記者会見で「結果を尊重する」と独立断念の考えを表明する一方、「この数週間、スコットランドの人々の前進が、ウェストミンスター(英議会)の体制を脅かした。我々の前進に自信を持とう」と住民に呼びかけた。
英国は分裂を回避したが、独立を巡るスコットランド住民の対立の解消が今後の課題となる。スコットランドの権限拡大が進むことに他の地域からは不満も出ており、英国全体の融和をどう進めるかも問われている。
祖国復興の思いと現実との狭間で揺れ動いたスコットランドは連合王国の枠組みの中に止まるという現実を選択した。連合王国分裂の危機は一応回避されたが、今後も民族独立の潮流は連合王国を揺るがし続けるだろう。個人的なことを言えばスコットランドが連合王国の枠組みに止まったことは良かったと思う。連合王国は国際社会の道義的指針として君臨して欲しいと思う。しかし、イングランドはスコットランドに対し、自治の拡大と言う宿題を背負いこんだ。これもなかなか難しい問題として長く尾を引くだろう。
Posted at 2014/09/20 01:05:26 | |
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