九州の玄関口である福岡市のJR博多駅前で起きた道路陥没事故の復旧工事は、通常なら数カ月を要するところ、市はわずか1週間足らずで道路の通行再開のめどをつけた。特殊な工法を用いて作業の効率化を図り、市内外のミキサー車や作業員を総動員。異例の「スピード突貫工事」を実現させた。その背景に何があったのか。
「1分1秒でも早く安全に復旧させたい」。事故翌日の9日、報道陣の質問に市トップの高島宗一郎市長は早期復旧を強調した。陥没事故は8日早朝に発生した。穴は、道路いっぱいにわたる30メートル四方で深さは15メートル。すぐ下を通る地下鉄工事のトンネル天井の一部に空いた穴から、砂時計の砂が落ちるように流出した土砂は3千立方メートルに及んだ。強固に埋め戻すにはミキサー車約1750台分の約7千立方メートルの土砂が必要と試算された。
ただ、通常は数カ月の工期を要するといわれていたが、高島市長は強気の姿勢を崩さなかった。「道路を一刻も早く通行可能にする。目指すは14日だ」。9日朝に開かれた会議でそう明言。集まった職員や工事関係者は息をのんだ。
異例のスピードを要求された工事で選択された工法が、土と砂、セメントを混合した「流動化処理土」による埋め戻しだ。この土は水の中でも固まる性質で、破損した下水道の水などが大量にたまっていた現場には最適だと考えられた。この工法では、水を抜くまでセメント注入を待つ必要がなく、水の中に流し込むだけで固まるため作業を効率化できる。市交通局の担当者は「通常は地盤を強固にする際に用いている工法。一刻も早く作業を終わらせるためだった」と説明する。
一方、事故を誘発したとされる地下鉄工事を請け負っていた大成建設も“汚名返上”とばかりに復旧工事に邁進した。必要なミキサー車を近隣営業所を通じるなどして手当たり次第動員したほか、ピストン輸送を継続。千台以上に及ぶ土砂などを短期間で現場に集めた。市によると、職員や作業員らを合わせて1日100人以上の態勢で夜通し作業を続け、9日夜には水道管や送電線などが通る地下3メートルの高さまで埋め戻した。
10日にはライフラインの復旧工事も始まり、通信や上下水道の専門作業員が相次いで現場入り。最大で作業員は200人近くに膨らんだ。「九州の玄関口で1カ月も穴を開けたまま放っておいたら笑われますけんね」と男性作業員(58)は話した。
短期間で成し遂げた復旧工事だが、肝心の安全性は確保されるのか。市交通局工事事務所の岸本信恭所長は「関係機関と相談しての適切な工程。無理はしていない」と安全性を強調する。14日の現地視察にも加わった福岡大工学部の佐藤研一教授(地盤工学)も「流動化処理土が十分固まれば再陥没はない」とみている。
ただ、地下にインフラが集中するのは全国共通。老朽化や地盤の緩みによる「空洞」も各地で懸念されている。現場の空洞調査を実施したインフラ調査会社「ジオ・サーチ」(東京)の冨田洋社長は「水道管などは古いものから更新されていないものも多く、地震などの災害が起きれば陥没はどこでも起きうる。今回の事故を警告と受け止めるべきだ」と訴える。
根本的な原因も不明で、市は国と協力しながら究明を急ぐとしている。冨田社長は「通行再開後も『有事』に備え、地下水のモニタリング調査などをきめ細かく継続し、チェック体制を敷くことが重要だ」と話している。
普段は、「大丈夫かよ、この国は、・・。」と言うような状態でも危機に瀕した時のこの国の現場力は驚くべきものがある。東日本大震災もそうだし、そのほかの大災害でも日本人は普段とは全く違うかを見せる。そして驚くべき力を発揮して状況に対応する。トランプ政権になって米国が引いて日本が危機に瀕してもおそらくこの国は驚くべき力を発揮して切り抜けるだろう。もっとも危機が去った後は、「大丈夫かよ、この国は、・・」と言う状態で呆けて暮らしているだろうけど、・・。
Posted at 2016/11/15 15:22:57 | |
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