◆「何もかもが足らない! ボンビー自衛隊の実態! 05」
2016年4月14日、熊本地震のあと、東北に住む友人から、「自衛官はトラックの荷台に板を一枚しいて東北から熊本まで輸送されています。トラックの荷台は人を運ぶためのクッションは何もなく、その振動はそのまま自衛官の足や腰にダメージとして残ってしまうのに。なんでこんなひどいことを防衛省はするの? 人間なのにモノ扱いなの?」というメッセージをもらいました。
熊本地震のような災害派遣は、近隣の地域だけで対処できるのが一番です。東日本大震災のときに、国交省の地方整備局と地域の土建業者は自衛隊が入れるように一夜で道をふさいでいたがれきを取り除いたという話はよく聞くのだけど、その後、国の予算削減でその地方整備局も大幅に予算削減されてその力を失ったそうです。自衛隊員も東日本大震災当時は24万7446人(平成23年度防衛白書)だったのですが、22万7339人(平成28年度防衛白書)と順調に数を減らしています。周辺諸国による軍事的脅威の増大や、テロ活動の凶悪化などで、非常事態がいつ起きてもおかしくないこの時期に、国の財政の黒字化のためなら、リスクマネージメントなんてどうでもよく、「国民の命」よりも「予算削減」という財務省の「潔い」方針に呆れ返ります。
順調に国の予算も人員も減らされているので、熊本の地震対応に九州などの近隣の公務員だけではまったく対応できない有様でした。だから、全国から自衛官を呼び集めることになったわけです。
熊本地震対応で一番遠い遠征は、北海道から熊本までなぜか輸送用トラックの床に板などの部材をしいて、そこに隊員を詰め込み5~6回中継地点の駐屯地で宿泊しながらの移動になりました。東日本大震災など広範囲での地震であれば、輸送トラックなどの移動になってもやむをえません。多くの物資をもって運ばないと途中のインフラが破壊されているため、軍用車である必要があるからです。
しかし、熊本地震は違います。少なくとも福岡までの交通インフラは完全に動いていました。最低限の備品の監視で荷台に残る隊員以外は、北海道から4泊5日、東北から3泊4日のトラック荷台の旅ではなく、新幹線や航空機で熊本近くまで1日で到着できたはずです。
なぜ、自衛隊はトラックで遠路をかけつけたのか?
起こるか起こらないかわからない災害派遣予算を経年でもつことを、単年度使い切り予算しか認めない財務省は許さないからです。また、災害派遣を依頼した地方自治体が自衛隊の予算を補充することもありません。演習や訓練などで使うための予算をけずり、「訓練として」などの名目で防災対応予算を捻出する構造になっているわけです。
だから、震災対応の震災地に向かうための旅費はどこからも出ません。
熊本地震の記事で「1000kmをバイクで走って到着した」という話が美談として語られていますが、内情は予算がないために輸送費でしか移動ができないからケチって人の輸送もトラックでやっただけなのです。また、自衛隊員数が減らされ続けているために遠方の部隊の人員や資材を呼ばないと対処できなくなっているからです。
振動を緩和することができないトラックの荷台での数日の旅をすれば、足腰に支障がでます。チェーンソーなどの腕の振動障害は有名ですが、全身振動によっても障害がおこることもあります。自衛隊員が有事に労災の適応外なのは軍人という性質上仕方ないことでしょうが、平時にただ、予算が足らないだけで激しい振動による移動に耐えていること。労災が起こっても適応除外される可能性があるとなると、奴隷じゃないんだからそんなことは許せないと考えるのがあたりまえです。
防災・テロも1秒を争います。それですら、予算がないために遅れをとる始末。これがテロだったら多くの犠牲者がでたあとにやっと到着です。なんとも恐ろしいことです。
毎年使い切り予算ではなく、非常時のために防災的観点でも、治安維持、侵略への対応などについても経年予算、積み残ししてプールできる予算形態を防衛省だけには認め、自衛隊員も人間として扱うために「旅費」の項目もつくってほしいと思います。
演習のために一日中、山道をトラックの荷台に乗せられて走った自衛官Eさんは、『尻が痛い。座れない。立てない』と不用意に言ってしまうと叱られるので我慢することが身についています。だから、自衛隊はそんなものだと隊員はあきらめている。でも、若いうちは体に無理もきくが、ある年齢以降は仕事とはいえ本当にしんどい。泣けてくる」とぼやいていました。
自衛隊の偉い人たちはそういう現場の隊員の愚痴を叱るのかもしれませんが、民間人の私たちから見ると明らかに非人道的です。自衛官だって人間です。オフロードバイクで1000km走行させるのはおかしい。軍人には敬意を表さないといけないのに、「これじゃ、食肉の輸送ですやん。ひどすぎぃ」と思うのでした。
73式トラックは演習場で乗せてもらったことがあるが、それはそれはすさまじいものだった。この車って緩衝装置がついているのかと疑いたくなるような振動で恐れ入った経験がある。ただその分、全輪駆動でちょっとした不整地などはへっちゃらで走破してしまうタフさもあった。基本的に自己完結が原則の軍隊では移動手段も自前である。帝国陸軍は自分の足が移動手段、それに比べれば自動車化された自衛隊ははるかに恵まれている。ただ装備するのは全輪駆動の装甲車やトラックで戦闘の役に立たないデラックスバスなどあるはずもない。また人員だけを新幹線や民間のバスで運んでも装備がなければお手上げで救護活動などできるはずもない。だから自衛隊は自前の輸送手段で装備一式とともに移動する。人と装備は一体不可分の関係になる。海外の場合は民間の航空機を利用するがそれは自衛隊が大型で足の長い輸送機を持たないためで今後C2の装備が進めば海外も自衛隊機で移動が行われるだろう。最近は一部の装甲車などは高級車顔負けのバケットシートがついているものもあるが、これは乗り心地ではなく地雷などの爆発の衝撃を緩和するためのもの、軍隊と言う自己完結型の戦闘集団の目的は戦闘に勝つこと、すべてはそこに集約される。
Posted at 2017/01/19 12:25:59 | |
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