最強候補でひときわ輝く、冷戦時代に活躍した米戦闘機
皆さんは「世界で最も空中戦能力に優れた「最強の戦闘機」は何か」と聞かれた場合、どのような機種を思い浮かべるでしょうか。2018年現在ならばF-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」の名を挙げる人が多いかもしれません。はたまた古い時代ならばいまだ現役のF-15「イーグル」や、第二次世界大戦世代の零戦などもその候補となりえるでしょう。
戦闘機の性能は、ミサイルの搭載量や航続距離、速度、加速力、上昇力、旋回性能、電子機器など、時代や用途、国によって求められる能力が大きく異なりますから、比較基準は様々であり、どれが最強であるとは一概に言うことはできません。ゆえにあらゆる候補機がそれなりの説得力を持ち得ます。
数ある最強候補のなかにあって、ひときわ輝くコンベアF-106「デルタダート」という機種をご存知でしょうか。日本では同世代機であるF-104J「スターファイター」やF-4EJ「ファントムII」が航空自衛隊で活躍していますが、F-106はよほどの航空マニアでないと名前すら聞いたことが無いかもしれません。
F-106はアメリカ空軍のみが採用、その主要任務は防空管制システムと一体となり地上から自動操縦指令を受けて飛行、冷戦期を通じアメリカ本土を守ることにありました。1988(昭和63)年の退役から今年で30周年を迎えた過去の機種ではあるものの、現代のF-22やF-35さえ上回っていたとさえ断言できる最強の能力を持っていました。
最強のワケはその装備、目には目を!
F-106が最強たるゆえんは、その主力搭載兵装であるAIR-2「ジーニー」空対空ロケットにあります。F-22やF-35はいかに最新鋭といえども、敵機を破壊する直接的な手段自体はF-15やF-16「ファイティングファルコン」と同じAIM-120「アムラーム」視程距離外空対空ミサイルです。「アムラーム」は18kgの高性能爆薬が弾頭部に内蔵されており、標的の近辺で炸裂することによって爆風と破片によってダメージを与える武器です。
空対空ミサイルはおおむね数kgから数十kg程度の弾頭をもち、ほぼ直撃が期待できる優秀な誘導性能を持ったAIM-120ならば、18kgといえども大型機を破壊するに十分な威力がります。参考までに大韓航空ボーイング707のエンジンを破壊し不時着に至らしめたソ連製R-60空対空ミサイルの弾頭は3kg、同じく大韓航空ボーイング747を「撃墜」したソ連製R-98空対空ミサイルの弾頭は40kgでした。
F-106のAIR-2は誘導装置を持っていないため、「空対空ロケット」ではあっても「空対空ミサイル」とは言えません。しかし空対空攻撃用の兵装としては破格の、実に爆薬150万0000kg相当の弾頭が内蔵されていました。これはAIM-120空対空ミサイル8万3333発ぶんにほぼ匹敵する威力であり、AIM-120を8発搭載可能なF-22が1万機同時に全弾発射してもなおF-106が発射したたった1発のAIR-2を上回ることができません。
この桁違いなAIR-2の高威力。皆さんきっとおわかりでしょう。AIR-2の弾頭は「核」です。F-106はこのAIR-2を積んで実戦配備されていたという点において、まさに最強の戦闘機といえる存在でした。F-106の主要なターゲットは、ソ連製の核搭載戦略爆撃機です。戦略爆撃機を1機逃せば米本土の都市が数個消滅することになります。したがってこれを逃すことは絶対に許されません。つまりF-106とAIR-2は「核に対して核で対抗する」ために開発されたのです。
要撃機が核を積む至極もっともな理由
F-106やAIR-2が開発された1950年代は空対空ミサイルの信頼性が低く、いまのAIM-120のようなほとんど必中を期待できるような性能がありませんでした。したがって誘導性能の低さを弾頭威力で補うという思想の究極形が核弾頭だったといえます。
AIR-2は発射後、時限信管によって最大12秒内に起爆。爆心地から直径600mの航空機を完全に破壊する威力を持ち、また電磁パルス(EMP)はさらに広範囲の電子機器を破壊すると推定されています。また無誘導であるという事実は「妨害されない」メリットをもたらし、任務の確実性を向上させました。
AIR-2は1957(昭和32)年に核実験を目的として一度だけ実弾が発射されており、その時の発射母機はF-106の前任機であったF-89「スコーピオン」戦闘機でした。その後幸いにして米ソによる最終戦争は勃発することはなく、F-106は「人類最後の日」のための能力を発揮しないままソ連崩壊直前の1988年にその役割を終え全機が退役、同時にAIR-2も廃棄されました。
核兵器を搭載できる戦闘機は決して珍しくありません。しかしながら空対空任務で核兵器を使うことを想定したF-106は稀有な存在だといえるでしょう。今後F-106に匹敵しうる最強戦闘機が登場しないことを願いたい。そう思うのは筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)だけではないはずです。
F106は旧ソ連の戦略爆撃機迎撃用に開発された迎撃機だったが、比較的軽量で低翼面荷重のために機動性は当時の米空軍機中トップクラスとも言われたそうでミグ21と飛行特性が似ていると言うことから仮想敵機としても使用されたが、当時のF4をずい分てこずらせたそうだ。迎撃管制システムも当時としては高度なものを搭載していたので高価格で当時の空自の防空システムと適合せず空自のFX候補からは外されたようだ。1950年から60年代は敵を確実に破壊するために陸海空ともに戦術核の使用が流行っていたようだ。これはミサイルの精度が低かったせいもあるだろう。F106も今になってみてみるとなかなかスマートな機体ではある。もう少し後方視界のいい風防にカナードでも付けたら高性能制空戦闘機になっていたかもしれない、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2018/08/23 11:50:11 | |
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