【論調比較・2019年度概算要求】“イケイケ”ではなく、慎重で身の丈に合った議論を
安倍晋三政権で7回目の予算編成がこれから佳境に差し掛かる。各省庁が提出した2019年度予算の概算要求を財務省が精査している段階だが、総額は過去最高の102兆7658億円(2018年度当初比5兆530億円増)に達し、仕上がりも当初予算として初の100兆円突破の可能性が高い。
この中で、最大の焦点が、伸びの目立つ防衛費だ。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア(陸上イージス)」の導入(2基2352億円)などで過去最大の5兆2986億円(同1075億円増)を要求している。ただ、これさえ少なく見せかけた数字。概算要求には「事項要求」という、金額を示さないで要求だけするものがある。
防衛省は今回、装備品を複数年度に分けて支払う「後年度負担」の大幅増などを受けて積み上げた額が5.4兆円規模になり、そのままでは概算要求基準(シーリング)を超えてしまうため、米軍再編経費(2018年度予算で2000億円超計上)などを事項要求として金額を計上しないことで5兆3000億円に収めた経緯がある。
このため、実質的な概算要求額は5兆5000億円を超え、2018年度予算比は6%を上回る高い伸び率になる。安倍政権で防衛費は毎年増えているが、これまで最大でも2.8%で、今回の要求の突出ぶりが分かる。
今年は中長期的な防衛力のあり方を決める「防衛計画の大綱」と、5年に1度見直す「中期防衛力整備計画(中期防)」が年末にまとまるので、兵器など高額装備品の購入が膨らむのは既定路線だ。自民党からはこれまで国内総生産(GDP)の1%、5兆円前後で推移してきた防衛費を一気に増やし、GDP比2%を目指すべきだとの提言も出されている。
額の膨張と裏腹だが、防衛費の中身で特に問題になっているのが、軍事機密の多い最新鋭の米国製兵器を取得できる有償軍事援助(FMS)契約だ。
これによる調達額(契約ベース)は2014年度予算の1906億円から2018年度予算は4102億円と2倍、さらに2019年度概算要求では6917億円と前年度の1.7倍に膨らんでいる。このうちイージス・アショアのFMS分は1991億円。最新鋭、かつ機密ということでFMSの価格は米国側の「言い値」、しかも調達の大半は複数年度に分けて支払うから「後年度負担」として次年度以降の予算も縛られることになる。
年末に向け「大綱」「中期防」と防衛費が一体で議論されるだけに、主要紙は社説(産経は「主張」)でほぼ一斉に取り上げている。防衛費の膨張は、直接には北朝鮮や中国が理由で、増額に一番熱
心なのが産経。
9月4日の主張で、<(概算要求額は)十分とはいえない。抑止力向上のため、弾道ミサイル防衛の充実や敵基地攻撃能力の保有は急務だ。日本は冷戦終結後、防衛努力を怠った。そのつけを払う必要に迫られている>と、適地攻撃能力を肯定し、発破をかける。産経としては<周辺国は軍事力を急速に拡大し、日本との差は開いている。傍観を続ければ、日本をめぐる軍事バランスは不利になる一方である>という危機感があるのだろう。
産経と並んで基本的に安倍政権支持で、防衛力強化にも理解がある読売も、今回の概算要求提出前の社説(8月20日)で、「大綱」策定に向けた課題を論じ、中国の軍拡や北朝鮮情勢の行方が<なお不透明>との認識の上に、<将来の安全保障環境を見極め、日本の防衛力を着実に整備していくことが重要である>と主張する。
とはいえ、厳しい財政事情は2紙も承知。読売は、次期主力戦闘機開発や宇宙監視システムの構築など<巨額の費用が想定される>ことについて、<政府は調達価格の見直しを図るとともに、装備を重点化し、経費節減を目指さねばならない。……増え続ける社会保障費など他の予算を考慮した場合、(防衛費のGDP比)2%は現実的な数字とは言えまい>と慎重な対応を要求。
特にイージス・アショアについて、必要性を認めつつ、昨年は1基800億円としていたのが1340億円に膨らんだことを指摘し、<金額が次々と増えていくようでは、防衛調達への信頼は損なわれよう>とくぎを刺し、配備予定の秋田、山口両県で反対論が強いことにも触れ、<地元に対する説明を重ね、理解を得る努力>を求めている。
これに比べて産経はGDP比2%も念頭に、<柔軟な発想で防衛費の充実を図る。それが平和を保つ最善の道筋だと政府は国民に説くべきである>と、政府の尻を叩いているが、その前段での<平和が破れると、人命が失われ、多大な財政支出も余儀なくされることを考えておくべきだ>と、戦前の「満蒙生命線」を彷彿とさせるような言い回しは産経らしさか。
2紙に対し、朝日、毎日、東京は慎重姿勢だ。<安倍政権になって、防衛予算の特別扱いが目立つ。厳しい財政事情の下、予算の制約を忘れたかのような増額を、いつまで続けるつもりなのか>(朝日1日)、<情勢の厳しさを理由とするが、防衛費を増やすために緊張を煽(あお)るべきではない>(東京6日)と、安倍政権での防衛費の伸び、さらに今後の歯止めなき拡大への懸念といえる。
毎日(3日)は、<自民党は……(GDP比2%を念頭に)防衛予算を確保するとの提言を5月にまとめている。提言には敵基地攻撃能力の保有やヘリ搭載護衛艦の空母化なども盛り込まれ、……概算要求の伸びが防衛政策の転換を図る布石だとしたら危うい>とけん制。朝日も<防衛費のタガが、一気に外れる恐れがある>と、大綱の議論の行方に危惧を示す。
読売が指摘したイージス・アショアの費用の膨張懸念、FMSへの懸念も共通で、特に日米貿易不均衡との絡みで、毎日は<配備まで6年かかるとされる陸上イージスの導入を、大綱の見直し論議を待たずに決める必要があったのか。その背後に、武器の大量購入を迫るトランプ米大統領がちらつく>と指摘する。
年末に向けた議論の行方は見通せないが、産経のような「イケイケ」ともいえる議論は別にしても、読売のような慎重で丁寧な議論が必要なのはいうまでもない。
その際、<日本周辺では、歩みは遅いものの緊張緩和に向けた模索が続く>(東京)との視点も踏まえ、<少子高齢化が進む日本の身の丈にあった「真に必要な防衛力」の議論を、年末に向けて徹底的に行わねばならない>(朝日)というのは、当然のことだろう。
日本のお隣の超覇権国は日本などはるか彼方に追いやるスピードで軍事費を膨張させている。東アジアの情勢が「緊張緩和に向けて模索が続く」とはどこのことを言っているんだ。ただ、日本の防衛政策もあれもこれもでどうやってこの国を守って行くのか、その辺が見えてこない。少子化で隊員が不足する中、何に重点を置いて国を守るのか、それをはっきりさせてから重点的に予算を配分すべきと思うが、最もコストパフォーマンスが高いのが、弾道弾と核弾頭でこれに関しては北のバカ大将も先見の明がある。まあ、不可能は置くとしてやはり海空重視と長距離攻撃兵器の充実だろうかするとまた「専守防衛の逸脱」とか騒ぐ勢力があるか。難しいものだなあ、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2018/10/16 15:47:50 | |
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