国際社会をあえて横に歩くのはいいが、そんな見えを張っても果たして能力が備わっているのかしら-。中国が先月23日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の上空を含む防空識別圏(ADIZ)を東シナ海に設定し、日米両国はもとより、世界各国から国際的な非難を浴びている。でもその空域をきちんと守れるのか…。「張り子の虎」なんて声もある。なぜそこまでして中国は力むのか。中国が防空識別圏を発表してすぐさま、その監視能力にいささか疑問を抱く出来事があった。
米国が26日、核爆弾を搭載できるB52戦略爆撃機2機を通告することなく、この空域で訓練飛行させ、その事実を公表。28日には、菅義偉官房長官が自衛隊の航空機が従来通り飛行し、警戒・監視活動を実施していることを明らかにした。いずれも中国機の緊急発進(スクランブル)はなかったという。
「中国軍は全航程を監視した」。中国側はすかさずこのような談話を発表し、日米をけん制。B52の際には「中国は関係する空域を有効にコントロールする能力を持つ」とまで言い切った。
だが、防空識別圏の設定に関する声明などで中国はこう豪語していたではないか。空域を飛行する航空機が中国の指令に従わない場合には、「中国の武装力が防御的な緊急措置を講じる」と。つまりは、事前通報のない航空機が空域に入れば、軍用機が緊急発進する方針を明示していたわけだ。
空域を飛行していた事実をつかんでいながら、指令せずにほったらかしていたなら、防空識別圏を設定した意味がない。このため、にわかに指摘され始めているのは、中国の監視能力のお粗末さである。政府関係者によると、「あんな広い空域をすべて監視できる能力があるとは到底、思えない」という。
中国は先月中旬に開かれた共産党の第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で、防空管理体制を整える方針などを盛り込んだ「決定」を採択したばかりで、「レーダー網がきちんと整備されていないのに、『決定』を受けて、見切り発車したのではないか」(同)とされる。
よく中国の対日戦略として、「3戦」という戦術が引き合いに出される。自国や国際世論などに訴えて反中国政策を抑止する「世論戦」。同様の目的で、法的な正当性を主張する「法律戦」。そして、恫喝(どうかつ)や懐柔により相手国に士気低下をもたらす「心理戦」-。
このたびの中国の振る舞いもこの文脈でとらえると分かりやすい。中国共産党の機関紙「人民日報」では、防空識別圏の設定をめぐる日本など国際社会の批判に逆ねじを食わしている。
「日本の不当な申し入れといわれなき非難については、中国はすでに理詰めで退けた」「国家の核心的利益を守る中国の意志は断固たるものであり、その行動も力強い」
これなどは典型的な「世論戦」とみていいだろう。「法律戦」にしても「国際法に防空識別圏の設定を禁止する規定はない」「各国は国防上の正当な必要から防空識別圏を設定できる」などと唱える。「心理戦」は中国の言動をつぶさに見聞きしていれば、おのずと明らかだ。
ただ、日本側が問題視しているのは、加藤勝信官房副長官が記者会見で明らかにしたように、日本固有の領土である尖閣諸島の領空がまるで中国の領空のような表示になっていることであり、また、現状を一方的に変更することは事態をエスカレートさせ、不測の事態を招きかねないことなどにあるのだ。
「張り子の虎」と疑われかねない防空識別圏を強硬に設定したことに、別の政府関係者はこんな見立てをしている。
「中国には尖閣諸島を念頭に、日中間の危機管理メカニズムを構築すべきとの意見がある。けれども日本が乗れば、尖閣諸島の領有権が存在していることを認めることになり、到底、受け入れられない」
実際、中国外務省の秦剛報道官は29日、防空識別圏にかかわる日中協議が必要との認識を示している。強硬姿勢で日本を揺さぶり、尖閣諸島で譲歩を引き出す-。こんな腹がうかがい知れる。
経済規模が大きく、国連安保理の常任理事国である中国は、その言動が国際社会に与える影響は小さくない。しかし、自分たちは国際社会の頂上にいて、縦横に振る舞っていいと思っているとしたら、もうその時点で他国からは信頼も尊敬も得られない。
日本の尖閣国有化以来、中国が打った手の中でも最も大きなものだろうし、それだけ中国も焦っているのだろう。日本もここは腹を据えてしっかり対応しないといけないだろう。今回の問題は単に日本と言うだけでなく国際社会を敵に回したことも中国にとっては頭痛の種だろう。しかし、やったからには撤回はできない。張子の虎と嘲られても続けるしかない。追いつめられた中国が民間機にちょっかいを出さないと良いのだが、・・・。
Posted at 2013/12/01 23:10:34 | |
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