「イスラム国」を名乗る集団から殺害が警告されている湯川遥菜さんと後藤健二さんに対し、ネットでは「自己責任論」が噴出している。
2004年、紛争地だったイラクで日本人3人が武装勢力の人質となった当時を思い起こさせる状況だ。
■後藤さんは「責任は私自身に」と話していた
2人がイスラム国に拘束されるまでの経緯は2015年1月21日現在はっきりしないが、これまでの報道をまとめるとシリア入りの目的が少しずつ明らかになってきた。
北部アレッポで拘束された動画が8月に公開されて以降、消息が分からなくなっていた湯川さんに関して、軍事会社の関係者は「実績が作りたかったのではないか」などと各紙の取材に答えている。一方の後藤さんは、知人で現地ガイドの男性が「友人の湯川さんの情報を得るために行った」と話しているとし、救助のために現地入りしたと各紙が報じている。
2人は現地での危険を認識していなかった訳ではない。湯川さんは最後の更新となった7月21日のブログで「今までの中で一番危険かもしれない」と書いた。後藤さんも、ガイドの男性が撮影したという動画の中で「これからラッカ(シリア)に向かいます。どうかこの内戦が早く終わってほしいと思っています。何が起こっても、責任は私自身にあります」と話している。
しかし結果は人質として拘束され、日本政府には計2億ドルという法外な身代金が要求されることとなった。ツイッターをはじめ、ネットでは「そもそも行くなって言われてんのに行ったのは自己責任でしょ」「もし払うなら自己責任は明白なので自分で払わせれば良い。危険地帯を承知で出かけているのだから」と「自己責任論」が吹き荒れている。
「拘束された奴の命がどうなろうと、現地へ行った奴の自己責任なんだからほっときなよ」という書き込みや、「そもそも後藤、湯川両氏はイスラム国と意を同じくしているのではないか?とすら思う」「捕まったやつはイスラム国の仲間で日本から資金得るため演技してんだよ」とイスラム国と共謀した自作自演を疑う人までいる。
同様の見解をする著名人もいる。タレントのフィフィさんは「この時期にあの地域に入るのには、それなりの覚悟が必要で自己責任」とツイート。元衆院議員の渡部篤氏は、2人について「日本政府が要請してシリアに行ったのではない」と突き放す。「冷酷かもしれないけど、イスラム国のテロに屈してはならない。ここで妥協すれば、世界中の日本人がテロに狙われることになる」と持論を書いた。
被害者に批判的な「自己責任論」は、04年にイラクで日本人3人が拘束された当時と似通っている。外務省から渡航自粛勧告が出されていたにもかかわらず現地入りした3人へ批判は強く、今回と同様に共謀説も飛び出した。
当時の関係者は今回の事件についてツイッターで見解を示している。被害者の弁護団だった神原元弁護士は「あのとき、政府関係者が『自己責任論』を唱え、日本社会は被害者家族へのバッシングに覆われた。あれは狂気だった。狂気にとりつかれるな。被害者とその家族をサポートせよ!」という。
18歳で拘束され、現在NPO法人の共同代表を務めている今井紀明さんは「今回の人質事件で『自己責任』と彼らを切り捨ててはいけないことだと思う。海外では様々なことが起こりえる、守られていても殺される時だってある。どんな人でもあっても切り捨てず、最後まで国は対応してほしい。そして国の関係者が『自己責任』という言葉を使わないことを願う」としている。
確かに自己責任と言えば、この時期、常識の通用しない狂信的集団が支配する地域に入ると言うのは、自己責任以外の何物でもないだろう。政府にしても賛否両論はあるだろうが、国際社会の状況を考えれば身代金を支払うという決断はつけ難いだろう。そうかと言って人質を解放する手段がほかにあるわけでもなく、このまま手をこまねいていれば時間切れで人質は間違いなく殺害されるだろう。政府として国民の身体生命を守るために身代金を支払うと言うのも一つの見識だろうし、西欧社会の一員としてテロに屈しないという姿勢を貫くと言うのもまた一つの見識だろう。英米露は断固として身代金の支払いを拒否し、仏独など欧州の国家は身代金を支払っている。ただフランスなどは個人の命を救うためには金は支払うが、テロは許さないと武力攻撃に参加している。日本はその武力攻撃に参加してテロを絶対に認めないと言う姿勢を示すことができないのが最大の弱みだろう。テロ組織との和解はあり得ない。身代金を支払う、支払わないとは別に、向こうが敵対姿勢を示すのであれば武力で殲滅する以外にはないだろう。しかし、これはイスラム教対キリスト教の宗教対立ではない。あくまでもテロ組織と言う犯罪集団との対決である。それだけは認識しておかないととんでもないことになる。
Posted at 2015/01/22 00:20:25 | |
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