Business Journalの記事より。
【転載開始】
■中国の紫光集団の“爆買い”
今年は世界の半導体業界でM&A(合併・買収)の大津波が起きている。
特に、中国が猛烈な勢いで半導体メーカーを買い漁っている。
その中でも、紫光集団の“爆買い”は凄まじい(表1)。
今年5月に、米ヒューレッド・パッカード(HP)の子会社H3Cテクノロジーズを
55億ドルで買収し、7月に米マイクロン・テクノロジーに
230億ドルで買収を持ちかけて業界の耳目を集めた。
10月には、ハードディスクドライブ(HDD)のトップメーカー
米ウェスタン・デジタルの15%株式を取得して筆頭株主となり、
そのウェスタン・デジタルが東芝とNANDフラッシュメモリで提携している
米サンディスクを買収すると発表した。
続いて後工程メーカーの台湾・力成科技の25%株式を取得、
さらにスマートフォン(スマホ)用プロセッサの設計メーカー台湾メディアテックと、
半導体製造専門のファンドリー分野で世界一の台湾TSMCの25%株式を
取得しようとしている。
これらの買収の裏には、
中国の半導体自給率が2014年時点でたった12.8%しかないことから、
習近平国家主席が同年6月に半導体新興を目指す
「国家IC産業発展推進ガイドライン」を制定したことが背景にある。
15年の国内の半導体売上高を13年比で4割増大させ、
さらに30年までに世界トップクラスの半導体企業を複数育成することを国家目標として掲げ、
新たに2兆円規模の「中国IC産業ファンド」を設立した。
また、この半導体政策の最終的な目的は、軍事技術と宇宙産業にあるという。
そして最近、紫光集団は、車載半導体マイコンで世界シェア1位の
ルネサス エレクトロニクスを買収しようと画策している。
ルネサスの筆頭株主は、約70%の株式を持つ官民ファンドの産業革新機構であるが、
株式を一定期間売却できないロックアップ契約が15年9月末に解除され、
さらにルネサスが15年3月期に黒字化を実現し経営再建を果たしたとの判断から、
株式の売却を決めた。このルネサス株を紫光集団が狙っているのである。
一方、ルネサスから破格の安値で車載半導体マイコンを調達しているトヨタ自動車は、
ルネサスが中国企業の手に渡ることをなんとしても阻止するだろう。
したがってルネサス株をめぐっては、
実質的に中国の紫光集団とトヨタが対決の火花を散らすと思われる。
この行方には、注目したい。
■ウェスタン・デジタルによるサンディスク買収
前述の通り、中国の紫光集団が筆頭株主となったウェスタン・デジタルは
サンディスク買収を決めた。
この買収により、紫光集団は東芝とサンディスクが15年間かけて開発した
NANDフラッシュメモリの技術を、まんまと手に入れることに成功した。
ここで疑問なのは、なぜサンディスクが身売りに出たかということである。
NANDフラッシュメモリは、
東芝が1987年に発明した電源を切っても記憶が消えないメモリで、
その特徴を生かしてデジタルカメラ、iPod、携帯電話、スマホ、
PCなどに次々と採用され市場を拡大してきた。
最近では「モノとインターネットの融合(IoT)」の普及とともに、
需要が増大しているサーバーやデータセンタのHDDを
NANDフラッシュメモリが代替し始めており、さらなる市場拡大が見込まれている。
14年のNANDフラッシュメモリの売上高世界シェアでは、サムスン電子(30.8%)、
東芝(20.5%)、サンディスク(19.7%)、米マイクロン・テクノロジー(12.9%)、
韓国SKハイニクス(9.5%)、米インテル(6.6%)となっており、
東芝とサンディスクの合計シェアがサムスン電子を上回っている(図1)。
サンディスクの売上高、営業利益、および営業利益率の推移を見てみると、
01年のITバブル崩壊、08年のリーマン・ショックの時は赤字に陥ったが、
ほぼそれ以外の時期は営業利益率が20%を超えており、
全体的に業績は好調であるといえる(図2)。
つまり、将来NANDフラッシュメモリ市場が拡大すること、シェアが高いこと、
業績が好調なことから考えると、
サンディスクが身売りしなければならない理由が見当たらないのだ。
粉飾会計が発覚した東芝に愛想を尽かしたのかとも考えられたが、
その理由が最近やっとわかってきた。
■東芝の3次元NANDに対する不信感
その理由は、ポストNANDフラッシュメモリをめぐる東芝との意見の相違にあるようだ。
東芝は、BiCS(Bit Cost Scalable)と呼ばれる3次元構造のNANDフラッシュメモリを
推し進めようとしている。ところが、
サンディスクは東芝のBiCSの技術をあまり信用していない気配がある。
3次元NANDでは、サムスン電子と東芝の一騎打ちになると思われる。
しかし、数年前から今に至るまで、どうも東芝の旗色が良くない。
学会で初めて3次元NANDを発表したのは東芝だが、
サムスン電子は13年8月6日に「V-NAND」と呼ぶ3次元NANDを量産すると発表した。
東芝はその翌日の7日に「2013年度 経営方針説明会」で、
今年7月に辞任した田中久雄前社長が、「BiCSを14年上期に量産する」と突然発表した。
2日続けて、サムスン電子と東芝が3次元NANDの量産計画を公表したわけだが、
本当のところはサムスン電子が先に量産を発表したので、
東芝としては沽券にかけても遅れるわけにはいかないと、
慌てて翌日発表したということだろう。
では、果たして東芝は本当にBiCSを量産できるほど開発が進んでいたのか、
13年9月に行われた秋の応用物理学会にて、東芝のBiCSについて情報収集したが、
「目途が立っていない」というのが事実のようで、
客観的に見てサムスン電子から2年ほど遅れていると判断せざるを得なかった。
話は逸れるが、こんな状況なのに平気で
「BiCSを14年上期に量産する」などと発言するところに、辞任に追い込まれた東芝の
経営陣の世の中を舐めている態度が透けて見える気がする。
さて「(量産の)目途が立っていない」東芝は、それを裏付けるようにその後BiCSの構造、
材料、製造装置などで迷走を続けた。サンディスクは、
そのような東芝のBiCSの技術を信用できなかったと思われる。
■ポストNANDの意見の相違
では、東芝のBiCSを信用しないサンディスクは、
ポストNANDフラッシュメモリ候補として何を考えているのか。
それは、電圧の印加による電気抵抗の変化を利用した
ReRAM(Resistance Random Access Memory、抵抗変化型メモリ)であると思われる。
ところが、東芝はReRAMの開発に積極的ではない。
つまり、ポストNANDをめぐって、かたや東芝はBiCS、
かたやサンディスクはReRAMをその候補と考えており、
意見の相違が明確になってしまった。
これが、東芝と決別して身売りしようとする大きな要因になったと思われる。
そのようなタイミングで、NANDフラッシュメモリに加えてReRAMの技術を欲しがっていた
ウェスタン・デジタルが出現した。
そして、渡りに船とばかりに、買収に応じたものと思われる。
ではなぜウェスタン・デジタルやサンディスクは、ReRAMを推進したいのか。
それは、ReRAMがストレージクラスメモリ(SCM)という
新市場を生み出す可能性があるからである。
このSCMとはDRAMとNANDの中間の性能を持つメモリで、
ビッグデータを扱うデータセンタに適用すると、
データ処理が格段に速くなるといわれている。
そのSCMに、ReRAMがフィットすると、両社は踏んでいるわけだ。
2000年以降15年間NANDを共同生産してきた東芝とサンディスクが、
決別することになるかもしれない。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
【転載終了】
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中国は、10年以上前から新潟などの水現地の山林を買収しており、
そして、観光事業、記事にあるような半導体などの技術を買い漁っているようですね。
中国人が安倍政権の移民政策に便乗し、大挙して移住してくるかも・・・(苦笑