MONEY VOICE
【転載開始】
■政府が言う個人消費「回復」は幻想。
賃上げしても消費が伸びない理由と
2つの処方箋
2025年2月11日
■消費は本当に伸びたか?
総務省は7日、昨年12月の「家計調査」の
結果を公表しました。
これによると物価上昇を差し引いた実質の
家計消費は前月比2.3%増、10-12月期でも
前期比3.7%増と、久々に消費が高い伸びを
見せ、回復へ向かったかに見えました。
しかし、実態はそうではないようです。
家計調査は調査サンプルが少ないため、
12月はたまたま自動車を購入したり、
ふるさと納税で寄付を多くしたり、また家
の設備修繕にお金をかけた世帯が多かった
ようで、これらをほかの支出統計で調整
した日銀の「消費活動指数」でみると、
12月も10-12月も前月(期)比減少と
なっています。
確かに冬のボーナスは増加して家計収入
は増えたのですが、無職世帯も含めた全体
の家計消費は依然として伸び悩み、
足元ではむしろまた減少する形になってい
ます。
政府日銀の個人消費の判断とは裏腹に、
現実の消費は物価高の中で弱々しい動きと
なっています。
そしてこれは足元の一時的な弱さではない
ところに、日本経済が抱える大きな問題が
うかがえます。
■10年間の消費低迷
日銀の『消費活動指数』の水準が日本の
問題を示唆しています。
この指数、2015年平均を100とした指数
ですが、昨年10-12月期の水準が97で、
2015年の水準を下回っています。
この内訳をみると、耐久消費財が108と、
10年前より8%ほど上回っていますが、
サービスが103、非耐久消費財に至っては
92と縮小傾向にあります。
このうち、耐久消費財については、日銀が
「機能向上」分を付加価値と評価し、
その向上分を物価指数の下落の形で「調整」
をしているので、その分実質値が大きくなり
ます。
例えば、自動車の機能が10%高まると、同じ
1台300万円の車が1台売れても、価格指数が
10%低下して、実質自動車消費は1.1台売れ
た形になります。
機能向上分を恣意的に実質増の扱いにして
いるので、耐久財の108はその分割り引いて
みる必要があります。
耐久消費財の実質消費はそれだけ「水ぶくれ」
しているので、現実の消費は、この指数より
小さいと考えられます。
従って昨年10-12月の指数水準97は過大評価
で、実際にはもっと低く、それだけ消費の
実態はより弱いことになります。
これは日銀の指数だけにみられる現象では
ありません。
内閣府の「国民所得統計」、つまりGDPでも
同じ問題が見られます。
例えば10年前の2014年10-12月の実質GDP
は年率529.4兆円で、足元の実質GDPは
557.1兆円です。
この10年で5.2%増えたことになります。
これに対して民間最終消費(広義の個人消費)
は10年前の298.5兆円から足元では298.4兆円
でややマイナスの横ばいです。
このうち、実体のない帰属家賃も除いた純粋
家計消費は242.9兆円から240.4兆円に1.2%
減少しています。
日銀の「消費活動指数」ほど大きな減少では
ありませんが、方向としては同じように消費が
この間減少しています。
このため、GDPに占める家計消費の割合は、
非営利団体も含めた広義の「民間最終消費」
でみると10年前の56.4%から足元で53.6%に、
非営利団体や帰属家賃も除いた狭義の家計消費
は10年前の45.9%から43.2%に低下していま
す。
GDPに占める家計消費の割合は中国ほど低くは
ないものの、先進国の中では異常に低くなって
います。
GDPで最大の需要項目である個人消費が弱け
れば、それだけGDP成長も低くなります。
■人件費抑制による収益確保に限界
日本で消費が長期低迷を続けている最大の
原因は、OECDも指摘する実質賃金がこの
30年増えていないことにあります。
これは主要国の中で異例の形で、所得が増え
なければ消費も増えない当然の帰結となって
います。
その発端が85年の「プラザ合意」です。
突然ドルが半分になり、輸出型製造業は
競争力を失いました。
そこで下請け企業も含めて皆でコストカット
を進め、効率化で乗り越えようとしました。
その際、最大の費用項目が人件費で、企業は
人件費の抑制に走りました。
それでも日銀の円高対策、つまり大規模緩和
により、日本経済はバブルに突入、株や土地
など資産価格高騰で人件費抑制の影響が埋没
しました。
ところが91年にバブルが弾けると、今度は
資産デフレと所得の圧縮が重なって、
ここから消費の低迷が始まりました。
「失われた30年」の始まりです。
このうち、資産デフレはその後アベノミクス
による株高で緩和され、地価も下げ止まりまし
た。
ところがアベノミクスは企業本位で、
人件費抑制のための雇用体系(非正規雇用の
活用)を進めたため、資産価格は上がっても
実質賃金は減少が続き、消費は出遅れました。
この所得にメスが入ったのは、コロナ禍で
経済が落ち込んだ上に、OECDが主要国の中で
日本だけが30年も賃金が増えない「異常さ」
を指摘し、政府もこれを無視できなくなった
ことです。
折しも、コロナ対策で財政金融両面から
大規模な刺激策をとり、さらにロシアの
ウクライナ侵攻も加わって、資源高、
輸入インフレが進行、物価全体を押し上げ、
物価は22年には一気に目標の2%を超えて
きました。
これを機に、政府や産業界から「物価上昇
をカバーする賃金引上げ」の機運が高まり、
23年以降、ベースアップが高まるようになり
ました。
特に人手不足が進む中で、人員確保の観点
から賃上げを利用する企業が増えたため、
これ以降、賃金抑制から賃金引上げに流れが
変わりつつあります。
■悪循環を断つ必要
企業の賃金、人件費に対する姿勢が変わり、
賃上げをしても企業は値上げで利益を確保
できる形が定着しつつあります。
定期昇給を除いた純粋賃上げ部分に近い名目
の所定内給与の伸びは、従来1%増がせいぜい
でしたが、最近では3%前後にまで高まって
います。
低賃金の構図は修正されたのですが、残念なが
ら物価がそれ以上に高まって実質賃金は依然
としてマイナスにあります。
政府日銀が目指す「賃金物価の好循環」は
実現せず、ここまでは賃上げ分を価格転嫁し、
物価が上がるために賃上げ効果が打ち消され
ています。
これは「いたちごっこ」「悪循環」と言わざる
を得ません。
この悪循環を断ち切る必要があり、賃上げ分
を丸々価格に転嫁しなくても利益が上がる形に
する必要があります。
これには2つの道があります。
1つは先端半導体やAI関連で新商品開発を進
め、生産性、付加価値率を高めるための投資を
進めることです。
新市場の開発、育成が値上げと無縁の利益を
生み出し、価格転嫁無用の賃金を生み出します。
もう1つは、省エネや為替の円高を利用し、
輸入コストを引き下げ、交易利得の増加を目指
すことです。
所得の国外流出から流入に変われば、価格転嫁
を抑えても企業は利益を確保できます。
つまり、政府は技術開発、新市場の育成を
狙った投資の促進を行い、日銀は低金利ゆえの
円安を修正し、徐々に円高にシフトさせ、
省エネで原油需要を抑えてエネルギー価格の
下落を促すことです。
【転載終了】
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今の経営者は消費を促すには可処分所得を
増やすことだと知らないのではないですかね?
Posted at 2025/02/12 08:07:30 | |
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