この1週間色々分析してきた結果,「
低速コーナーでは向きを変え易く,高速コーナーではしっかりと踏ん張ってくれる」そんな動きを,私は実現したい事が分かってきました.
これをもうちょっと単純化して表現すると,以下なんだと思います.
低速コーナー ⇒ ロールさせたい
高速コーナー ⇒ ロールさせたくない
これって,足回りの特性として矛盾した事を言っている訳なのですが,そもそも何で私はこんな動き方が良いと感じるんだろうなー?と悶々としていたら,某SNSでこれを図解していらっしゃる方がいました.
上の図は,タイヤに掛かる荷重とコーナリングパワー(≒タイヤのグリップだとでも思って下さい)の特性です.タイヤというのは,荷重を掛けていけばいくほどグリップが高くなる代物なのですが,荷重を掛けて上げられるグリップには限界があり,その限界以上に荷重を掛けると逆にグリップが減ってしまいます.このため,図に表すと山型のような形なり,タイヤのグリップを最大限引き出すためには,
この山の頂点をなるべく長い時間使う事
が大事という訳です.という事は「山を登る時は早く」「山を下る時は遅く」したい訳で(↓),
「登るのを早く」するためには,早くタイヤに荷重を掛ける必要があり,反対に「下るのを遅く」するためには,一定の荷重が掛かった後,それ以上は掛からないように抑える必要がある訳です.この「荷重」をそのまま「ロール」という単語に置き替えてやれば,私がやりたい事の理屈をそのまま表してくれているんですよね.
(VD講座:
5. ロール荷重移動 (2)より)
低速コーナーでは,荷重を素早く外輪側に移し,短時間でタイヤのグリップを立ち上げて一気にクルマの向きを変えたい.そのためにはステアリングを切った瞬間,抵抗なくクルマはロールして欲しい.一方,高速コーナーではなるべく内輪側の荷重を抜かず,タイヤの左右合計のグリップが高い状態を維持したまま,ゆっくりとクルマの向きを変えたい.そのためにはステアリングを切った時に,クルマはロールに抵抗して欲しい.
ああ,自分が感じている事は理屈として間違っていなかったんだなぁ~と思いました.
では,この矛盾した特性をどうやって実現するか?となる訳なのですが,普通のバネを普通に使っているだけでは当たり前ですが実現出来ません.特性を途中で変える,変曲点を生む存在が必要になってきます.
その1つとして考えられるのが「バンプラバー」でしょうか.
(AutoExe 貴島ゼミナール:
チューニングを楽しむための動的感性工学概論 §10より)
レートの低いスプリングに,長いバンプラバーを組み合わせる事で,
低速コーナー ⇒ スプリングのレートが低いのでが素早く縮まって,素早くロールする
高速コーナー ⇒ スプリングが縮まり,バンプラバーに当たって以降はロールしない
という動きが作り出せる訳です.このバンプラバーが当たるポイントを先述の山の頂点(=タイヤのグリップのピーク)に合わせられれば,私が望んでいる挙動が作り出せる可能性があります.おおっ! 良さそう!!と思いたくなりますが,そう簡単な話でもありません.大きく分けて2つの問題点があります.
1つ目が,山の頂点(グリップのピーク)とバンプラバーが機能し出すポイントの合わせ込み.コレはコーナリング中に掛かる荷重とサスペンションのストローク量が正確に分からないと導き出せないので,それらが計測出来ない一般車両ではトライ&エラーで導き出すしかなく,難易度が高い.
2つ目は,バンプラバーの当て方.バンプラバーにガツン!と当てるとそこから先は一切ストロークしないのでクルマの挙動が急激に変化してピーキーな特性になります.これを避けるために長めの柔らかいバンプラバーを使って,早めにバンプラバーにタッチさせて,バンプラバーがストロークする過程で徐々に支える,2つ目のスプリングとも言える手法があるそうなのですが,これまた難易度が高いので,素人の手に負えるかどうか・・・.
また,別な手段としては「樽型スプリング」も考えられます.
(HAL springs:
オーダースプリングより)
「樽型(バレルタイプ)スプリング」とは,スプリングの中央部の内径が大きくなる形をしたものです.スプリングレートというものは,内径が大きくなればなるほど下がる傾向があるので,それを使って同じ固さのスプリングでも中央部は柔らかくて縮み易く,そこが縮み切って外側に力が掛かると固くなる,といった変化を生み出す事が出来ます.
先程の「バンプラバー」が非連続な変化であるのに対し,「樽型スプリング」は連続的な変化の中で固さが変わるので,こちらの方が多少は扱い易いかな?と思います.
昔,オープンエンドのスプリング(swift)→クローズドエンドのスプリング(HYPERCO)に変えた際,縮み始めの動きが違って戸惑った事があるのですが,イメージ的にはあれの逆なのかなぁ~?と想像しています.だとすると案外私の好みの方向になるかも?とも思っています.
以上,実現したい事の理屈確認と対策案でした.
ENDLESSが「
メイクバンプラバー」という製品を出した事もあり,バンプラバーセッティングも気にはなっているのですが,その難しさから低反発・高反発の時以上にハマる気もしていて,躊躇しています.それよりは,まだ動きが予想し易い「樽型スプリング」の方が,トライし易いかなぁ~?と思いつつ,またバネが増えるのか・・・とも思いつつ(苦笑),まだまだ悩みは続きそうです.
最後におまけ.
サーキットアタッカーな方々のサスペンションは「ハイレートなスプリング+低い減衰力のダンパー」である事が多いのですが(○○キロなのに乗り心地が良い!と宣伝してるヤツ),私はこの正反対の「ローレートなスプリング+高い減衰力のダンパー」の方が好みなんですよね.なんでか?というと,そっちの方がドライビングが楽だから(=高い精度で限界を維持出来るから)です.
これの理屈がなかなか説明出来なくて困っていたのですが,先述のSNSの方がこちらも単純明快に語っていらっしゃいました.
リバウンド側(伸び側)の減衰力を高める事で,タイヤのグリップのピーク(山の頂点)からなかなか離れないからだそうです.なるほど! こういう感覚と理論をリンクさせて言語化出来る人ってホント凄いなぁ~と感じるお話でした.
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セッティング(ダンパー編) | 日記
Posted at
2024/02/04 00:21:51