2016年01月07日
「冴子、君はそんなに怒るが原因を作ったのは君自身じゃないのか。」
社長の穏やかな表情は全く変わらなかった。
「佐山さんの顔を見てみろよ。あんなに酷いアザになって。怪我をするほど女性の顔を叩くなんて酷すぎやしないか。それに比べれば自分がしたことでお尻くらい叩かれても文句は言えないだろう。どうかな。」
社長に言い返されると北の政所様は顔を背けて黙り込んでしまった。確かに自分の被害だけを論って言えたものじゃないかもしれない。もっとも国家でもこの手のものが多いのだから個人のことなど言えた義理でもないかも知れないが。
「確かに酷いことだったかも知れないわ。佐山さんが口からたくさん血を流しているのを見ていて怖くなったわ。」
しばらく沈黙が続いた後、北の政所様が低い小さな声で呟いた。
『加害者のお前が怖くなってどうするんだ。怖くなる前に悪かったと思わないのか。』
僕としてみれば北の政所様の言葉には納得しかねるものがあったが、取り敢えずは黙って聞いていた。
「しかし驚いただろう。お前の様に裏の女王として君臨して反抗する者もなく思いのままに生きている女がいきなり取り押さえられて尻を叩かれたんだから。いやあ見物だっただろうな。僕も見てみたかったよ、冴子が尻を叩かれているところを。」
社長はまた大波風が立ちそうなことをあっさりと口にして大笑いした。北の政所様は不機嫌な表情で黙り込んでいた。そして一旦テーブルの上に置いたビールを引っ手繰る様に手に取ると口に運んで一気に飲んだ。
「冴子、僕は今まで黙っていたけど伊藤さんとお前のトラブルも知っている。小さな狭い世界だ。何でも話は耳に入ってくる。そうして鬱屈しているお前の気持ちが分からないこともない。お前の生い立ちに同情すべき点は十分にあるのだからな。でもそうして鬱屈した生活をこれからも続けていくことがお前にとって良いことだとは思えないんだ。どうだろう、これを機会に自分の生き方を考え直してみたら。」
北の政所様は相変わらず不機嫌な顔で何も言わずにビールを飲み続けていた。そこにルームサービスが料理を運んで来た。オードブル、郷土料理、サラダ、果物などなかなか豪華だった。
「さあ食べて、食べて。楽しくやろう。」
誰もが黙り込んでいる中、社長一人が場違いなように明るく振舞っていた。
「佐山さん、僕はね、あなたが最近劇的とも言うほど変わったことも聞いている。伊藤さんと接近していることも耳に入っている。でも二人ともしっかりと会社のために良い仕事をしてくれている。今こうして話していても二人はとても魅力的な素敵な女性だ。
個人の私生活に会社が全く関与しないと言うのも問題かも知れないが、僕は出来るだけ個人の生活は手付かずのままにして会社が介入すべきではないと思う。その分個々の社員は会社の性格を考えてそれなりに自分の生活を律していただきたい。いわばこれは会社と個人の紳士協定だ。
冴子、僕は君の私生活もいろいろ耳に入って来る。あまり芳しいものは聞こえてこないが、今話したようなわけだから黙っていた。だけどな、君の持っている才能を考えると今の状態で時間を過ごしているのは会社にとっても冴子自身にとっても大きな損失だと思う。」
二本目の缶ビールに手を出していた北の政所様は缶を持ったまま社長の方に顔を向けた。
「私に何をしろって言うの。どこに行っても妾の子、愛人に生ませた子供ってそう言われるだけじゃないの。これ以上他人の好奇の目に自分を晒すのはいやだわ。」
北の政所様は聡明さに似合わない単純な駄々をこねていた。大体好奇の目に晒されるのがいやならそんな父親の会社などに留まらないで全く別の生き方を探せばいい。形は異なっても結局親の影響下で生きているのだから他人の目に文句を言う筋合いでもないじゃないか。そんなことを言っていたら僕のように目が覚めたら女に変わっていた者はどうすればいいんだなどと考えていたらこのいい年をした甘ったれに急にそれを言ってやりたくなった。
「森田さん、あなたはそう言うけどどんな立場にしても今の会社にいるってことは自分から人の好奇の目に晒していることになるし結局先代社長の影響下でその恩恵を受けて生きているってことじゃないの。」
女土方が僕を見た。困惑した顔つきだった。そしてお返しは早速やって来た。
「あなたに私の何が分かるの。知ったような口を聞かないで。」
北の政所様は顔を引きつらせていた。また殴りかかって来たら今日は社長の前でけつをひん剥いて思い切り叩いてやる。
「あなたのことなんて分からないわ。じゃあそういうならあなたは私のことが分かるの。私が何を背負って生きているのかをあなたは分かるの。あなたは人の好奇の目に晒されたくないと言いながら公私とも自分の生い立ちに絡む影響力を十分過ぎるほど使っているじゃないの。それは誰が見ても間違いのない事実でしょう。
少なくとも先代社長の実子で今の社長とは兄弟なんていう周囲に大きな影響力を持っている立派な大人の女性がそんなすねた小娘みたいな生き方をされたら周りの者は堪らないわ。頭は悪くはないようだから少しは考えたら。今のままではあなたにとっても周囲にとっても不幸だわ。」
北の政所様は怒りで顔を真っ赤にしていたが、さすがに殴りかかって来はしなかった。社長の前だからということもあるが、昨日の手痛い敗北が身に沁みているのかも知れない。
「いや佐山さんにはずい分厳しいことを言ってもらったが、全くそのとおりだと思う。冴子に考え直してもらいたいのはまさにそのことなんだ。」
社長と僕の連合軍の猛攻に遭った北の政所様はだんだんと追い詰められて終いには下を向いて泣き出した。
「そうしてみんなで私を責めればいいわ。私に今のところから出て行けというなら私は出て行くわ。こんな芝居がかったことをしないではっきりそう言えばいいじゃないの。」
北の政所様は目から大粒の涙を流した。強がっている女が追い詰められて泣き出す姿はなかなか可愛らしかった。
「もうやめてください。そんなに言ったら森田さんがかわいそうだわ。」
女土方が間に割って入った。普段はしれっとした無表情なこの女はこうして窮地に陥った者には誰にも優しい女なんだ。
「森田さんだって生まれたくて今のようになったわけではないわ。彼女の責任もあるのかもしれないけど、だからと言って二人がかりでそんなに責めるのはよくないわ。」
女土方は宿敵である北の政所様の擁護を始めた。自分にとって相手が良い悪いではなく弱い立場の者を放っておけないというのが彼女の性格だった。
「社長さんも佐山さんも悪気で言っているんではないと思うわ。あなたに変わって欲しいからあんなことを言うんだと思うわ。私ね、あなたはもっと素直に生えればいいと思うの。いいじゃない、先代の子供には間違いないんだから堂々と生きれば。私はそう思うけど。何だか時代錯誤のような気がするわ。嫡流じゃないから日陰で生えるなんて。元気を出して胸を張って生きればいいと思うわ。森田さんは能力のある人だから社長さんもあなたの能力を認めていろいろ言われるんだと思う。」
妾の子だから日陰で生きると言うのは確かに今の世の中に照らして考えると時代錯誤かもしれない。威張ることもないが日陰で忍ぶこともない。自分の能力を発揮して正々堂々と生きれば良い。北の政所様はそういうところは古風でいらっしゃるのかそれとも責任の及ばないところで影響力だけを行使して安閑としようとしているのかそれは本人に聞いてみないと分からないが、それにしても僕は全く女土方に同意してしまった。
Posted at 2016/01/07 18:38:13 | |
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小説 | 日記
2016年01月07日
共産党の志位和夫委員長は6日、北朝鮮が水爆実験を行ったと発表したことについて「核実験の強行は地域と世界の平和と安定に対する極めて重大な逆行だ。暴挙であり、厳しく糾弾する」との談話を出した。
志位氏は「国際社会が一致して、政治的、外交的努力を強め、北朝鮮に核兵器を放棄させるための実効ある措置をとることを強く求める」とも強調した。
志位氏は昨年11月7日のテレビ東京番組で、当時から核・ミサイル開発を進めていた北朝鮮について「北朝鮮にリアルな危険があるのではない」と発言していた。
志位氏の発言に関し、同党の穀田恵二国対委員長は6日の記者会見で「北朝鮮は脅威か」との質問に対し、「地域や世界の平和と安定に逆行するものだという意味では、けしからん話だということに尽きる」と語った。
「危険ということか」との質問にも「核実験を行うこと自体が良くない。けしからん話だということははっきりしている」と述べるにとどまり、自ら「脅威」や「危険」との認識は示さなかった。
結局、共産党というのはこういう政党と言うことだ。何をしても北朝鮮が核を放棄するわけがないだろう。大体、核保有国がそれを言っても説得力がない。安保法制を戦争法制と非難する割には核武装することがけしからんと言う程度なら日本も核武装するか。
Posted at 2016/01/07 17:03:22 | |
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政治 | 日記
2016年01月07日
安倍晋三首相は7日午後、各党代表質問が行われた参院本会議で、2017年4月予定の消費税率10%への再引き上げについて、リーマン・ショックや大震災のような事態発生を除き「確実に実施する」と重ねて強調した。
その上で、「経済の好循環を力強く回すことにより、そのための経済状況をつくり出す」と述べた。共産党の井上哲士氏への答弁。
安全保障関連法に関し、井上氏は「戦争法」と断じ廃止を求めたが、首相は「国民の命と平和を守るために必要不可欠な法律だ。廃止は全く考えていない」と拒否。民主党の大野元裕氏が武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処するための「領域警備法」制定を要求したのに対しても、「現時点で新たな法整備は必要ではない」と拒んだ。
景気を良くするには国民が金を使わないとねえ。国民が1人当たり10万円多く使えばGDPは2.5%ほども上昇する。景気が良くならないのは金を使わないからなんだけど、・・。また、安保法制も未だに戦争法案などと言うが、この東アジアの情勢を考えればさらに踏み込んだ安全保障が必要だろうと思うが、・・。ただ、核の脅威を抑止するには核武装しかないのでこれは極めて困難だろうが、テロだの核だの覇権争いだの、年が変わっても世の中がきな臭いのは変わらないなあ。
Posted at 2016/01/07 17:02:10 | |
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政治 | 日記
2016年01月07日
安倍晋三首相は7日午前、北朝鮮の核実験実施を受けて米国のオバマ大統領と電話で約20分間協議した。韓国を含む関係国と連携し、国連の安全保障理事会で北朝鮮への新たな制裁に向けた議論を日米が主導していくことを確認した。
首相は「地域と国際社会の平和と安全を損なう安全保障上の重大な脅威だ」と北朝鮮を強く非難。「国際社会が断固とした対応をとることが、さらなる挑発行為を防ぐために重要だ。日米韓はじめ関係国が緊密に連携し、迅速に対応したい」と伝えた。オバマ大統領も賛同し、「日本や同盟国の安全を守るあらゆる措置をとる」と応じた。オバマ大統領はまた、安保理での議論への協力を要請し、北朝鮮に対する新たな制裁について一日も早く協議することでも合意した。
また、首相は昨年12月に日韓両政府が慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決で合意したことを巡り「米側の理解と協力に感謝する」と伝えた。オバマ大統領は「合意により日米韓の協力が平和と安定に大きく貢献し、国連でもさらなる力を発揮できる」と関係改善を歓迎した。
オバマ大統領は6日(日本時間7日午前)、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領とも電話協議し、北朝鮮の核実験に対して国際社会が一体となった対応に向けて連携することで一致した。ホワイトハウスが発表した。
これに関連し、安倍首相は7日午前の参院本会議での各党代表質問で、日米電話協議に関し「国連安保理の対応を含め、日米が国際社会を主導していくことで一致し、米国があらゆる手段を用いて日本を防衛する確固たるコミットメントを再確認した」と強調。今後について「国際社会が一致して対応するよう努め、我が国独自の措置の検討を含め、毅然(きぜん)かつ断固たる対応を行う」と述べ、独自の制裁措置を強化する考えを示した。
萩生田光一官房副長官は7日午前の記者会見で、北朝鮮が「水爆実験」と発表したことに関して「事実確認に努めており、現時点で水爆実験とは認定していない」と述べた。国内の放射線量に変化がないことも明らかにした。
岸田文雄外相も7日午前、ケリー米国務長官と電話協議した。岸田氏が「核不拡散体制に対する挑戦だ」と指摘したのに対し、ケリー氏は「北朝鮮は自らの行動のコストを支払う必要がある」と述べ、北朝鮮に対する制裁強化の必要性を示唆した。
制裁しても北朝鮮も元気だなあ。着々とミサイルの改良をするし、核弾頭の改良も進んでいる。一時は崩壊の危機にあると言っていたが、どうしてこんなに元気なんだろう。しかし、中国は海を埋め立てて軍事施設を作ったり、尖閣諸島の領海に武装公船を侵入させたり、北朝鮮は核開発を継続するし、日本の周辺は本当にきな臭く危ない。日本の安全をどう守っていくのか、真剣に考えるべきと思うが、足を引張る勢力も少なくないからなあ。憲法は急迫不正の侵害を受けた際に国民に座して死を待てとは言っていないと思うが、・・。もしもそういう憲法であれば改正すべきだろう。
Posted at 2016/01/07 17:00:50 | |
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