■外交…抗議に加え対外発信
■海保…専従船数の増強視野
■自衛隊…海上警備行動発令も
日本固有の領土である尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権を不当に主張する中国が連日、尖閣周辺の接続水域に公船を送り込み、領海侵入を繰り返している。海上保安庁によると、10日も接続水域で10隻が航行。中国のあからさまな攻勢に、日本政府は有効な対応策を迫られている。
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「決して楽観してはいけない」
外務省幹部は10日、中国公船の動きが弱まったとしても警戒感を緩めることはないと強調した。中国は南シナ海問題をめぐり、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が中国の主権を全面的に否定したにもかかわらず、軍事拠点化に向けた力による現状変更を強行している。尖閣をめぐっても中国への不信感は拭えない。
外務省は、中国公船が漁船と同時に尖閣周辺の領海に侵入した5日以降、再三にわたって幹部が中国側に強く抗議してきた。9日には政治レベルに格上げし、岸田文雄外相が中国の程永華駐日大使を外務省に呼び出したが、その後も領海侵入はやまなかった。政府関係者は「外交だけでは限界がある」と指摘する一方で、同盟国・米国との連携こそが最大の抑止力になると強調する。今年3月に施行された安全保障関連法は、自衛隊による集団的自衛権の行使を可能にし、中国に対する最大の抑止力となるものだ。
政府は今後も米国とともに「法の支配」を訴えて国際社会を巻き込み、国際法に従わない中国の“いびつさ”を強調していくことにしている。また、中国が議長国となる9月の20カ国・地域(G20)首脳会議に安倍晋三首相が出席し、習近平国家主席と会談した際には強く抗議する方針だ。
また、外務省は対外発信にも力を入れ始めた。9日には、中国公船の活動状況や政府の対応に関する資料を同省ホームページなどで公表し、「多数の中国公船が集結し、中国漁船に続いて領海侵入を繰り返す事象が確認されたのは今回が初めて」と訴えた。
■ついに「13」隻
「どこまで増えるんだ」。中国海警局の公船が同時に13隻で接続水域内を航行した7日、海上保安庁は一時、緊迫した空気に包まれた。大量の漁船とともに現れた公船群。6日の7隻からほぼ倍増し、過去最多だった平成24年9月18日の12隻を超えた。
「13」という数字には意味がある。
海上保安庁が今年2月に完成させた「尖閣警備専従部隊」は大型巡視船10隻とヘリ搭載型巡視船2隻の計12隻。これを上回る数字だ。中国の公船1隻に対し、巡視船1隻以上の勢力で対応するのが定石だが、全船を稼働させても1隻足りないことになる。乗組員のローテーションや修理などを考えると「実際に12隻が同時に稼働することはない」(同庁幹部)というが、中国の“示威行動”を如実に示すものといえる。
尖閣警備専従部隊は、24年9月の尖閣諸島国有化後、中国公船が付近の日本の領海や排他的経済水域(EEZ)に頻繁に侵入したことから、24~27年度に新造船10隻、既存船改修2隻を増強して完成。27年度末時点の要員は606人だ。この結果、それまで全国にある管区から応援に来ていた巡視船の多くが本来業務に戻ることができた。
しかし、尖閣警備専従部隊発足後も、全国で最多の大型巡視船19隻を擁する第11管区海上保安本部をはじめ、全国的な応援を得ながら監視活動が行われてきた。今回も、8日には接続水域と領海を航行する計15隻の公船に加え、多数の漁船に対応したが、全国からの応援を増やしてしのいだのが実態だ。
9日には、中国公船がEEZ内で漁船に立ち入り検査を実施したことが確認された。同様の検査は少なくとも24年から毎年確認されており、これらが漁業に関する検査であれば、日本の主権の一部を侵害したことになる。
「既成事実を積み重ね、実効的な支配を強調していくのが中国のやり方」(公安関係者)とされ、政府内部では巡視船や航空機の増強が必要ではないかとの見方も出ている。
■中国海軍も活発
尖閣周辺海域では、中国公船や漁船が領海侵入を繰り返しているだけでなく、中国海軍艦艇の動きも活発化している。今年6月には中国海軍のフリゲート艦が尖閣周辺の接続水域を航行したほか、口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県)の領海に情報収集艦が侵入した。
防衛省は海上自衛隊のP3C哨戒機や護衛艦を周辺海域に展開。中国軍艦艇の動向に目を光らせるとともに、中国公船などについても警戒監視活動を行い、海上保安庁との連携を強化している。ただ、軍艦ではない公船の活動に自衛艦が直接対処すれば「中国海軍が尖閣周辺に展開する格好の口実を与える」(防衛省幹部)という恐れがある。
このため、警告射撃などが可能となる海上警備行動の発令は、主に中国軍艦艇が尖閣周辺の領海に無害通航ではない形で侵入したケースなどを想定している。だが、中国軍艦艇が動かなければ自衛隊が動かないわけではない。
仮に尖閣諸島が武装漁民に占拠され、海上保安庁や警察が保持する装備で対応が不可能ならば自衛隊に海上警備行動が発令される。昨年5月に安全保障関連法が閣議決定された際には、海上警備行動の手続きを迅速に進めるため、閣僚に電話で了解を取り付ける閣議決定の方式を導入した。
政府はこうした態勢を通じて、中国海警局に漁民保護などを名目に“主権行使”の既成事実を作らせることを防ぎたい考えだ。
まさに不快を通り越した中国のやり方だが、日本から先に手を出す必要はないので相手の動きを注視しながら静観だろう。中国は仲裁裁判所の裁定で活動を鈍らせたと思われたくないこと、南シナ海と東シナ海にダブルスタンダードを作りたくないことから躍起になってやっているのだろう。中国にしてみれば仲裁裁判を受け入れて対応しても勝てそうにない。ならば無視を決め込んで裁定を認めない方が都合がいい。しかし、日米などが強硬に裁定を受け入れるよう攻勢をかけるので何とか一矢報いたい。そうだ、尖閣と南シナ海に存在するダブルスタンダードを放置するわけにはいかない。よし、攻勢をかけて日本を揺さぶってやろう。ただし、武力衝突に至る事態だけは避けるようにしよう。とまあ、こんなところではないだろうか。攻勢をかけられる日本も苦しいだろうが、攻勢をかけている中国はさらに苦しい立場にある。ここは万が一の事態に備えつつ冷静に対応して乗り切るのがベストだろう。
Posted at 2016/08/11 15:28:23 | |
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