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2016年10月03日 イイね!

あり得ないことが、(111)




「何だか奥が深そうな話だなあ。そうだ、佐山さんにはさっき話したんですが、一次会が終わったらここにいる四人でどこかに繰り出しませんか。これからお世話になるご挨拶代わりに私にご馳走させてください。」


「え、いいんですか。」


テキストエディターのお姉さんは二次会に乗り気なようだったが、クレヨンは尻込みしていた。


「伊藤さんが来ないと私行けないわ。」


「そうね、彼女に聞いてみるわ。」


相変わらず体を摺り寄せてくるクレヨンの肩を抱きながら僕はクレヨンにそう囁いた。

 
宴会は午後六時半から始まった。型通りに社長が挨拶をして乾杯を北の政所様が主催してそれからは歓談ということになった。社長と北の政所様は新来の諸氏に挨拶をして回っていたが、僕と言葉屋は戦国武将の話などで盛り上がっていた。僕は戦国時代や明治維新あるいは昭和初期の動乱期に出現した人間の生き方をたどるのが好きだ。

 
昭和の初期を除いてこういう時期には傑出した人物が集中して世の中に登場してくる感があるが、この手の人物は平時には逼塞して目立たないだけで何時の世にも何処かにいるのだろう。近年ほとんど傑物が見られないが、その理由は世の中があまりに複雑になり過ぎて一人二人の英傑では世の中をどうにもしようがないからかも知れない。

 
そうした歴史上の英傑の中でもやはり群を抜いているのは織田信長だろうし、後にも先にもこれ以上の英傑はいないと思っている。とにかく目的のためには神も仏も滅ぼし、あるいは道具に使うという冷徹なまでの合理主義は日本人離れしている。こんな合理主義は永遠に日本人には理解されないかも知れない。ところでかなりの書物に信長が神になろうとしたと書かれているが、それはどうだろう。

 
神を利用して自分が望む統治体制を作り上げようとしていたかもしれないが、自分自身が神として君臨しようは考えていなかったように思う。信長が本能寺で明智光秀の謀反に遭った時、信長は「是非に及ばず」と言ったというが、親兄弟の血で購っても自分が覇を得ようとするのが戦国時代の掟だった。その時百人足らずの御側衆しか伴わない信長が弱肉強食の掟に照らしてみれば弱者だったことは間違いがない。

 
明智光秀にしても偶然廻って来た千載一遇の機会を得て、ただその掟に従ったまでのことで、それを良いの悪いのと言ってみても詮無いことだという思いは神でも何でもない人間らしい諦念感に溢れている。だから信長は神を利用することは十分に考えただろうが、自分自身が神になるつもりなど全くなかったのだろうと思うのだ。

 
こんな話を僕と言葉屋は延々と続けていた。言葉屋は信長よりも秀吉のような機智に富んだ人物が好きだという。僕は信長という人物は政略、戦略の天才、秀吉は戦術の天才だと思う。徳川家康は極めて優秀な秀才行政官だろう。だから彼は天才である信長や秀吉には弓を引かなかった。天才には勝てないことを知っていたからこそ時間の経過に運命を賭けて見事にその賭けに勝ったのだろう。


「いやあ、佐山さんは嗜好も考え方も本当に女性とは思えないな。それじゃあ男が取り付いたなんて言われるはずだ。そういう人も最近は多くなったけど、でも僕は好きだな、そういうしっかりした自分の生き方を持った強い女性というのは。」

 
しっかりした生き方って今は男よりもしっかりし過ぎている女の方がずっと多いだろうなどど文句を言っては見るものの言葉屋との話は話で面白く際限がなかった。

 
途中、ちょっと女土方が中座したのを追いかけて外で捕まえて二次会のことを聞いてみたが、「用事があるので時間が自由にならない。」とあっさりと跳ねつけられてしまった。


「私は何も変わっていないわ。どうしてそんなにつまらないことに拘るの。」

 
立ち去ろうとする女土方に少しばかり腹が立って一言言ってやった。すると女土方は僕の方を振り向いた。


「私のことは放っておいて。あなたに私の気持ちなんか分からないわ。」


「分かるか分からないかあなたが自分の気持ちを言わないと私には何とも言い様がないじゃないの。話なさいよ、あなたの言い分を。」


女土方は僕には答えずに背を向けようとしたので僕はまた腕を掴んでやった。


「離しなさい、あなた話すことなんかないわ。また叩かれたいの。」

 
どうも女土方の内面は大分に込み入っているようだった。女土方と格闘戦になっても十分に勝てる自信はあったが、今度ばかりは格闘戦に勝利したところで何の解決にもならないのでたとえ先制攻撃を受けても反撃は控えることにした。

 
ところがそんな僕の深い思いやりにもかかわらず女土方は僕に対する先制攻撃権の行使に何の躊躇いもないようで僕はまた頬を叩かれてしまった。さすがに腹が立ったが、武力行使はしないことに決めていたので女土方の腕を思い切り引き寄せて抱きしめて精一杯のキスをしてやった。

 
女土方は呆気に取られたのか暫らくは僕の腕の中で大人しくしていたが、突然目覚めたように僕を突き飛ばして体を離した。女土方は僕を睨みつけたが、その両目から幾筋も涙が頬を伝って床に落ちていった。

 
こういう時はきっと僕の方が相手の心情を察してきめ細やかな対応をしてやらないといけないのだろうけど何と言われても説明を受けないと分からないことがあるじゃないか。だからはっきり言えばいいんだよ、私はこうだと。


Posted at 2016/10/03 20:23:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | 小説 | 日記
2016年10月03日 イイね!

謝罪の手紙を出さないのは不届き千万と半島君は言うが、・・。




安倍首相が韓国の慰安婦被害者に対しておわびの手紙を送る問題について「我々は毛頭考えていない」と述べた。



安倍首相は3日の衆議院予算委員会で、昨年12月の韓日慰安婦合意の「追加措置」として日本側が慰安婦被害者におわびの手紙を送る可能性があるのかという野党議員の質問に対し、「合意した内容の外だ」とし、このように答えたと、共同通信が報じた。



これに先立ち岸田文雄外相も先月30日、韓国政府が前日に慰安婦に対する日本政府の「追加の感性的措置」を期待すると明らかにしたことに関し、「合意はなされていない」とし「日韓合意は昨年12月に発表された通りで、それ以上でもそれ以下でもない」と述べた。



安倍首相のこうした発言に対し、韓国のネットユーザーからは「日本首相があんな発言をしても、政府はまだ日本が慰安婦問題について謝罪したと考えるのか」「最初から日本当局の謝罪を受けることを考えるべきだったが、どうしてお金を受けたか」「あれが日本の本性だ。朴槿恵(パク・クネ)政権は慰安婦合意で過去の歴史をすべて解決したかのように主張しているが、我々がもてあそばれたと言うべき」「我々も少女像の撤去は毛頭考えていないから期待するな」などの声が出ている。



あるネットユーザーは「安倍首相はただ『考えていない』と話すこともできるのに、わざわざ『毛頭』と強調したのは、自分の支持層である日本極右勢力に対するリップサービスということ以外に解釈することはできない」とコメントした。




こんな連中を相手にしても何の意味もない。日本はもう不可逆的最終合意に関して合意内容を履行したのだからもう構わずに放っておけばいい。どうしようもねえなあ。





Posted at 2016/10/03 19:49:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | 政治 | 日記
2016年10月03日 イイね!

中華月餅は危ないだって、・・??危ないのはそれだけじゃないだろう。




中国では、十五夜の満月を愛でながら秋の豊作を祝う「中秋節」という伝統行事がある。今年は9月15日。中秋節では、満月に月餅という菓子を供え、一家だんらんを楽しむのが習わしになっている。一方、各メーカーや店は「月餅商戦」に力を入れ、日本でいうとクリスマスのケーキやバレンタインデーのチョコレートのように盛り上がりをみせるが、今年は、中国のニュースサイトで日本人の想像を超える数々の「ゲテモノ月餅」が登場し、話題になった。

 
人民日報日本語版が取り上げたのは「ザリガニ月餅」。13種類のスパイスを利かせ、油で揚げた後にとろとろ煮込んだザリガニが丸ごと「餡(あん)」になっているという代物だ。ザリガニ月餅を製造する店は、1日100箱限定、1箱180元(約2800円)で販売している。日本人には絶対になじめない食べ物であることは間違いない。しかも高価な印象がぬぐえない。しかし、新華社日本語版サイトによると「抜群のおいしさだという」と高評価。ダフ屋が横行して1箱300元以上にまで値がつり上がるほどで、1人2箱までしか買えないという。

 
新華社はほかに、「甘さとしょっぱさの絶妙なコラボが口に広がる」というインスタントラーメンや、ドリアン、ニラ、キノコを「餡」にした月餅も紹介した。月餅は日本でもなじみのある中国菓子で、一説では、国内で最初に市販したのは新宿中村屋とされる。同社のホームページによると、創業者夫妻が中国に視察旅行に出かけたときに月餅を見つけ、土産として持ち帰った。しかし、日本人の口にはなかなか合わないものだったため、創業者が工夫し、「中国の月餅」を「和菓子としての月餅」に仕立てて、昭和2年に発売を始めたという。このため、中国の本場の月餅とは見た目は同じでも中身がかなり違うのだ。

 
では、中秋節に合わせて製造・販売される「本物」の月餅はどういうものか…。黒い餡の中に「タンファン」と呼ばれる塩漬けにしたアヒルの卵黄が入ったものが本物だ。漆黒の空に満月が浮かぶ様子をイメージしたといわれる。ところが、34の国が数年も前から「本物」の輸入を禁止しているという。

 
人民日報日本語版サイトによると、禁止しているのは次の国だ。ドイツ、フランス、デンマーク、スペイン、ベルギー、ハンガリー、スウェーデン、スイス、ロシア、チェコ、エストニア、メキシコ、ブラジル、ウルグアイ、コロンビア、韓国、タイ、シンガポール、フィリピン、カタール、インド、インドネシア、ミャンマー、サウジアラビア、コンゴ、赤道ギニア、ナイジェリア、チャド、カメルーン、ブルンジ、ガボン、エチオピア、スーダン、リビア。

 
理由は、月餅の中に詰められる餡のほとんどが肉や卵の成分を含んでおり、鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫など感染症散布の危険が潜んでいるためという。また、郵送に時間がかかり、中身が変質する可能性があるとして、海外から郵送されてくる月餅の制限措置を取っている国もある。このほか、オーストラリアや英国、米国、カナダ、マレーシアなどは卵黄や肉を含む月餅の輸入を禁止し、ニュージーランドは卵黄やはちみつを含む月餅の輸入を禁止している。

 
日本はどうか。厚生労働省によると、一律に輸入禁止にはしていないという。ただ、業者が輸入する中国製月餅については、日本で使用が禁止されている甘味料などが含まれている可能性があるとして、輸入規制をかけている。中国のあるサイトでは、各国の月餅輸入禁止措置について「中国への制裁措置ではない」と強調、中国人に向けて「冷静になるよう」呼びかけている。

 
日本の食品メーカーの関係者によると、中国製の月餅に関しては「非衛生的な工場で作られる場合もあるし、いろいろな添加物が含まれている可能性もある」という。いずれにしても要注意ということのようだ。ちなみに、横浜をはじめとする日本各地の中華街でも、中秋節に合わせて各店が、タンファンの入った「中秋月餅」を特別に販売・提供したり、店頭に巨大な月餅を展示したりして行事を盛り上げた。横浜中華街発展会協同組合は「横浜中華街に並ぶ月餅は各店が製造している」と、安全性と味をアピールしていた。




食はその国の文化だから何があってもそれはそれでいいのだろうけど中国のものは食いたくない。何を食わされるか分からん。買い物をするときも中国産はできるだけ避けている。日本の中華街はそれなり日本に適合するようにやっているのだろうけどここ10年くらいだろうか、新興勢力が参入してきて価格競争になっている。旧勢力は「競争のために価格を下げざるを得ないが、その分、どうしても味が落ちる」と嘆いていた。最近はどうなっているのか、食道楽でもなければ中華ファンでもないので横浜中華街には足を運んでいないし、分からないが、食べ放題とかずい分と流行っているようだ。ところで先日、財布を買ったが、適当な値段で適当なものがない。それなりの値段だとみんな中国製、日本製にすると半端ない価格になる。男はいい財布を持たないといけないと言うが、機能的に優れていればさほどこだわらない。大金を入れて持ち歩くわけでもないのでこれは妥協して"Made in China"で間に合わせることにした。ブランドは米国だが、・・。


Posted at 2016/10/03 10:36:30 | コメント(0) | トラックバック(0) | その他 | 日記
2016年10月03日 イイね!

ズムウォルト就役、日本配備へ、・・。




任務に必要なステルス性
 
アメリカ海軍の最新鋭ミサイル駆逐艦「ズムウォルト」が2016年10月15日(土)、就役します。

 
この「ズムウォルト」は、何もかもが異様です。海に浮かぶその姿は、ひと昔前の低予算映画におけるCGかと思えるようなもので、不気味さすら感じさせ、まるでこの世のものとは思えません。

 
その不可思議なシルエットは、レーダーによって探知されにくいよう、ステルス性を強く追求したがゆえの結果です。「ズムウォルト」は、大きな脅威にさらされる可能性の高い敵地の沿岸近くに展開し、内陸部へ対してその火力を叩き込むことに特化した艦艇。その姿を「見せない」ようにすることで、生存性を確保する必要があったのです。

 
本来「ステルス」とは、相手に発見されにくいようにする技術やメカニズムを意味します。よって古くからある「迷彩塗装」も、立派なステルスのひとつです。現代の艦艇は、海上で背景へ溶け込みやすい灰色を基調とした塗装が施されていますが、これも単なる灰色ではなく、海域によって微妙に異なる海の色にあわせて、ライトグレーであったりもう少し暗い色調だったりと、国によってさまざま。かつてレーダーがまだ未発達な時代には、敵の目視照準を妨げるために、錯視を引き起こしやすいゼブラ柄の迷彩なども行われました。

ロシア生まれ、アメリカ育ちのステルス技術 艦艇で実用化が遅れたワケ
 
特にレーダー被探知距離を大幅に短くする現代的なステルスの理論は、意外にもロシア人物理学者のウフィムツェムによって確立されました。ウフィムツェムはレーダーの反射を制御しこれが計算可能であることを発見しますが、本国ソ連(当時)ではまったく注目されませんでした。そのため機密指定すらされず、のちに敵国アメリカで注目を集めることになります。

 
ロシア人物理学者ウフィムツェムの発見は、1981(昭和56)年に初飛行したアメリカ空軍のロッキードF-117「ナイトホーク」攻撃機という形で初めて実用化されます。そして皮肉なことに、ロシア発の技術で設計されたステルス機F-117は、ロシア製レーダーをほぼ完全に無力化してしまいました。

 
飛行機のステルス化に成功したアメリカのロッキード社(現・ロッキード・マーチン社)は、引き続きアメリカ海軍と共同で艦艇のステルス化を目的とした「シー・シャドウ」というステルス実験艦を開発。その有効性が確かめられます。

 
しかし艦艇のステルス化は、軍用機のようにすぐさま“突然変異”が生じるようなことはありませんでした。1990年代には、早くもステルスを重視した艦艇の建造計画が立案されるものの、冷戦構造の崩壊によって「アメリカ一強」の時代になり、軍縮の流れからその計画はキャンセルになってしまいます。

 
そのため「艦艇のステルス」は、たとえば1990年代から就役を開始したアメリカ海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に、レーダー反射を制御するため直線部分が多く取り入れられるなど、航空機のそれに比べゆっくり、少しずつ実用化されていきました。


「ズムウォルト」は日本へ 各地で見られる可能性も

「ステルスの理論」は、これまで数千年にわたり蓄積されてきた、「海上を航行するための理論」とはまったく無関係です。そのためステルスをあまりに重視すると、風や波による転覆を防ぐ「復原性」などの航行性能や使い勝手、または多様な任務を可能とする汎用性など、「船としての機能」を犠牲にしなくてはなりませんでした。また、艦艇のステルス化は航空機ほど絶大な効果は無いとみられるため、優先度がそれほど高くなかったことも大きいといえます。


「ズムウォルト」もまた、そのステルス性のための「犠牲」をともなっており、現行のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に比べて対空戦闘能力、対潜戦闘能力が劣るなど、汎用性はかなり割りきっています。ただ一方で、2門備えている大口径の主砲155mm先進ガンシステム(AGS)や、80セルの先進垂直発射システム(AVLS)を搭載するなど、「対地攻撃重視」という従来の艦艇とはまったく違った思想で設計されており、それがあの異様な姿を現実のものとした、ともいえます。

 
時期は未定ですが、「ズムウォルト」は将来的に長崎県佐世保市の在日米軍基地へ配備されることが決まっています。米軍の艦艇は友好のため、各地へ寄港することが多いので、奇々怪々な姿で日本中を驚かせる日は、そう遠くのことではないかもしれません。




大々的に喧伝していたこの艦だけど価格高騰などでキャンセルされたと思ったら3隻だけ作ることになったようだ。対空・対戦能力が劣ると言うが、それは価格を抑えるために装備をカットしたからだろう。米海軍は戦艦の大口径砲による対地攻撃能力にほれ込み、対地攻撃用に8インチ砲を開発しようとかいろいろやっていたようなのでこんな船を作ったんだろうか。日本に配備すると言うのは対中国。北朝鮮用だろうか。それにしてもおどろおどろしい姿の船ではある。



Posted at 2016/10/03 10:34:10 | コメント(0) | トラックバック(0) | 軍事 | 日記
2016年10月03日 イイね!

翼の向こうに(27)




「敵機だ」
 

山下大尉が叫んだ。その直後、さらに一機が炎上して編隊から脱落していった。基地は大騒ぎになった。第二次制空隊の発進は中止され、後は高瀬の編隊にこの状況を託す以外には手がなかったが、早朝で敵の来襲はないだろうとの判断から高瀬が率いていたのはほとんど実戦経験のない若い搭乗員ばかりだった。

 
高瀬の編隊を蹂躙して駆け抜けた敵機は高速で上昇しながら大きく旋回して、もう一度味方の後方に付こうとしていた。その敵機に向かって第二小隊の二機が機首を翻して向かっていった。


「危ない。退避しろ。」


高藤上飛曹が叫んだ。


「奴等だ。昨日の奴等だ。」

 
第二区隊の二機に向かって再び急降下していく銀色の機体に赤、青、黄、緑の色を見た私は思わず叫んだ。その四機は反撃しようとした第二区隊の二機をいとも簡単に炎上させると、今度は残った高瀬達第一区隊に狙いを定めた。高瀬は相変わらず同じ高度で直線飛行を続けていたが、列機の二機はすでに何処かに退避したようで姿が見えなかった。

 
八機の制空隊は敵の急襲になすところなく壊滅して基地の上空に残るのは高瀬ただ一機になってしまった。地上にいる者は全員が固唾を飲んで見守ったが、高瀬は敵機には全く気づかないように通常の速度で高瀬自身が絶対にしてはいけないと言っていた戦闘空域内での直線飛行を続けていた。その高瀬をめがけて敵機は後上方から二機づつの二隊に別れて急降下を開始した。


「危ない。」

 
高藤上飛曹がまた叫んだ。そして最初の二機がまさに射点に着いた時、高瀬の機体はゆっくりと機首を上げて横転しながら上昇した。そのため敵機の火線は高瀬の機体の下側を通り過ぎた。


「うまい。」

 
高藤飛曹長が手を叩いた。次の瞬間、高瀬は機体を背面のまま急降下させて機体に行き足をつけてから、今度は急激に機体を引き起こした。後の二機は高瀬の機体が急に消えたので面食らったようにそのまま降下していった。その後方に付けた高瀬は機体を背面から百八十度捻って通常の態勢に戻すとそのまま敵機に向かって急降下して行った。

 
機体を引き起こして旋回しながら高度を取ろうとしていた敵機の後方から高瀬の火線が襲った。二機の敵機はその全身に二十ミリ機関砲弾を浴びて爆発し、空中に飛散した。地上でこの光景を見ていた者は誰もが高瀬の巧みな空戦技術に舌を巻いたが、驚くのはそれからだった。

 
高瀬はもう一度急降下で行き足をつけてから機体を引き起こして急上昇を始め、援護に戻ってきた敵の残りの二機を追った。そして今度は背面のまま急降下しながら敵機に火線を集中し、さらに一機を撃墜した。残った最後の敵は機体を捻って急降下で逃れていく高瀬の機体を追った。新鋭の紫電とはいえ速度は敵の方が速い。

 
敵機は徐々に距離を詰めながら高瀬の動きを警戒して様子を見ていたが、高度も下がって急降下で逃れることも不可能と見たのか、速度を上げると高瀬に照準を定めた。今度こそ逃れる手はないかと地上では息を飲んだが、高瀬は機首を上げずにそのまま横転に入った。横転をすると当然高度も速度も落ちるため、高速で降下してきた敵機は目標を失ってのめるように高瀬の前に出た。その瞬間を高瀬は見逃さなかった。そのまま高度を下げていく敵を後下方から追いかけて衝突寸前まで距離を詰めて一撃を加えた。敵機は折れ曲がるように機首を下げ、そのまま地上に突入して爆発した。

 
戦闘を終えた高瀬はたった一機で飛行場上空を制するように旋回を続けた。その間に退避していた列機は着陸した。そしてそれと入れ替わりに第二次制空隊が離陸して高度を取り終わるのを見届けると高瀬は飛行場に悠然と着陸して来た。

 
機体の行き足が止まると高瀬が降りて来た。何時もと変わらず飛行機の周りをゆっくりと歩いて一周して点検を済ませてから機体を整備員に委ねると高瀬は指揮所に向かって走って来た。そして司令の前で不動の姿勢で敬礼した。


「高瀬中尉他二名、制空任務から帰還しました。決戦を前にして貴重な搭乗員と機体を失い、申し訳ありません。」


「ご苦労だった。」


短いやり取りが終わると飛行長が口を挟んだ。


「小隊長、撃墜数を報告しろ。」


高瀬は余り気乗りのしない様子で「第一次制空隊、敵戦闘機四機を撃墜。」と付け加えた。


「高瀬中尉、見事だった。」

 
司令は酒二升と手元に置いてあった赤いマフラーを差し出した。高瀬はそれを受け取ると司令の前を辞して待機所に戻って来た。そこに列機の搭乗員二名が駆け寄った。


「申し訳ありませんでした。」


二人は高瀬に向かって深々と頭を下げた。


「気にするな。戦はこれからだ。命を大事にお互い御国のためにがんばろう。」

 
高瀬は二人に向かって笑顔を見せた。そして一升瓶を差し出すと「後で飲め。戦死した仲間の弔いだ。」と二人に渡した。そして口々に「見事だった。」と称える搭乗員に会釈をしながら待機所の隅にある椅子に腰を下ろして煙草に火を点けた。私は高瀬に声でもかけようと思ったが、しばらくそっとしておいてやろうと思い止まった。それを高瀬が認めて私に声をかけてきた。


「こっぴどくやられたよ。無線が悪くて退避の指示が届かなかった。死んだ者には気の毒なことをした。」


「貴様の戦いぶりは鮮やかだった。見事だ。」


「最初の二機は明らかに油断していた。狙いを外したら速やかに安全圏に退避すべきだ。それをのんびりと緩降下していた。三機目は俺の方が少しばかり運がよかった。最後の一機は紙一重だった。どっちが落とされても不思議じゃなかった。だがいくら敵を落としても味方に被害を出したんじゃ何もならない。」


高瀬は遠くの空を見つめたまま独り言でも言うように言葉を続けた。


「貴様はあの敵の戦い方を残虐だと思うか。女や子供と分かっていて、それでも圧倒的な威力を持って皆殺しにしようとする、あの戦い方を残虐だと思うか。あれが奴等の戦い方なんだ。自分たちに反抗するものは徹底的に殲滅する。とにかく隷従するようになるまで痛めつける。そんな敵と戦うには、しかもどうしようもない劣勢で戦うにはこっちが被害を出しちゃいけなかったんだが。」


「戦えば被害は付き物だ。」


背中に声が響いた。振り返ると山下大尉が立っていた。


「戦闘に被害は付き物だ。指揮官としてそれを恐れていては戦などできん。高瀬中尉、貴様の空戦技量は見事だ。しかし指揮官としては落第だ。あの場合、第二編隊の四機を捨てても自分の直卒を率いて反撃すべきだ。それを全機無事に退避させようとして一瞬躊躇った。そしてあの被害を出した。」


「以後注意します。」


高瀬は山下大尉に一言無表情で答えた。


「隊長、」


私は堪え切れずに山下大尉を呼び止めた。山下大尉は私の呼びかけに足を止めて振り返った。


「高瀬はあの時編隊を維持して技量未熟な搭乗員を安全に退避させようとして戦闘行動に入らなかったのです。もしも高瀬が機動を起こしていたら他の搭乗員は高瀬の機動についていけずにちりぢりになり、各個撃破されて一機も帰還出来なかったでしょう。敵の襲撃を受けて二機が撃墜された後、高瀬は高度を上げて編隊に被さるようにして列機を庇って飛んでいました。高瀬の乗機の無線が正常ならこんな被害は出なかったはずですし、もっとうまい、」

 
そこまで言ったところで私は顔面に衝撃を受けて後ろに飛ばされた。顔を上げると鬼のように顔を赤く染めた山下大尉が立っていた。


「貴様等、逃げることばかり考えおって。戦争をしているんだ、戦争を。」

 
甲高い声が響き渡った。その声に周りにいた者は私たちに注目した。鉄拳制裁が日常茶飯事の軍隊でも士官が士官を衆人看視の中で殴ることはまれだった。辺りは喉を鳴らす音さえ響き渡りそうなくらい静まり返った。そこに椅子から立ち上がった高瀬がゆっくり近づいてきて倒れた私に手を伸ばした。私はその手をそっと押し退けて立ち上がった。


「隊長、私たちが悪かったのです。小隊長や武田中尉を責めないでください。今度は立派に戦って見せます。」


高瀬の列機の搭乗員が間に割って入った。


「我々は今度出撃したら生きて帰ろうとは思いません。」


必死の形相で訴える若い搭乗員を制して高瀬が静かに言った。


「すべて指揮官の責任です。申し訳ありませんでした。」

 
この高瀬の一言で山下大尉もようやく矛を納めてその場を立ち去った。高瀬はその場に残されてうな垂れる搭乗員に静かに語りかけた。


「死んで見せるなどと馬鹿なことを言うな。簡単に死ぬなどということは尻尾を巻いて逃げ出すのと同じことだ。貴様らが死んでしまったら、一体誰がこの国を守るんだ。力一杯戦え。そして生きて帰って来い。次の世代が育つまでこの国を守っていくんだ。」

 
高瀬はそれからしばらく兄のように静かに優しく泣きじゃくる若い搭乗員達に語りかけていた。その日は夕方まで即時待機が続いたが、結局敵の大挙来襲はなく策敵に出ていた偵察機も日が傾きかけた空を突き抜けて次々に基地に帰投した。この日の戦闘は早朝高瀬達が戦った小規模なものだけだったが、その余波は静かに部隊に広がりつつあった。

 
特に若い搭乗員達にとって衝撃的だったのはあれだけの厳しい訓練を重ねて自他ともに海軍切っての精鋭部隊と自負していたのが、奇襲を受けたとはいえ、四機の敵に瞬く間に五機が撃墜されたその事実だった。もしも高瀬のような天才的な搭乗員がいなければなすところなく全機が落とされていても何の不思議もなかった。それを目の当たりに見せつけられた塔乗員達の落胆ぶりは想像に余りあるものだった。


Posted at 2016/10/03 00:37:55 | コメント(0) | トラックバック(0) | 小説2 | 日記

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