JBpress
【転載開始】
アベノミクスに重大な疑惑、GDPを改ざんか
覆い隠された大失敗、日本は未曽有の事態に
突入している ※抜粋
アベノミクスは「究極の現実逃避」
「史上空前の大失敗」だ。
──『アベノミクスによろしく』(集英社)の著者
である弁護士の明石順平氏はこう看破する。
アベノミクスに対して世の中では、疑問を呈する
声もあるが、おおむね結果を出していると評価
する声が一般的だ。
ところが明石氏が政府や国際機関による公式
発表データを精査したところ、とんでもない現実
が見えてきたという。
ほとんどの人が気づいていないアベノミクスの
真の姿とは?(JBpress)
■実質賃金が下がり、消費が歴史的落ち込み
異次元の金融緩和で消費も伸びると言われ
ていましたが、結果は真逆でした。
実質民間最終消費支出の推移を見てみましょう
(下のグラフ)。
実質民間最終消費支出(兆円)
(『アベノミクスによろしく』図3-1と同じデータを使用)
見てのとおり、2014年度~2015年度にかけて
「2年度連続で下がる」という戦後初の現象が
起きました。
また、2014年度の前年度比下落率(約2.9%)は、
あのリーマンショック時の下落率(約2%。2008
年度)を上回りました。
さらに、2014年度、2015年度共に、アベノミクス
開始前(2012年度)を下回ってしまいました。
実質民間最終消費支出は実質GDPの約6割を
占めていますので、実質GDPの方も悲惨な結果
となりました。
年度実質GDP(兆円)(『アベノミクスによろしく』図3-3
と同じデータを使用)
ご覧のとおり、2015年度の実質GDPは、2013年度
を下回ってしまいました。
3年分の成長が1年分の成長を下回ったということ
です。
この間の成長率は約1.9%であり、3年もかけて2%
の成長率にも届かないという惨憺たる結果となり
ました。
これほど低迷した原因ですが、実質賃金
(物価を考慮した賃金)が下がったことが最も大きい
でしょう。
名目賃金、実質賃金、消費者物価指数の推移を
見てください(下のグラフ)。
名目賃金、実質賃金、消費者物価指数(2010年=100)
(『アベノミクスによろしく』図3-11と同じデータを使用)
要するに(1)賃金がほとんど伸びないのに(黄)
(2)物価が増税と円安で急上昇したので(赤)
(3)実質賃金が急激に落ちた(緑)ということです。
実質賃金指数の計算式は名目賃金指数÷消費者
物価指数×100です。つまり、名目賃金が伸びない
のに物価だけ上がると実質賃金が落ちます。
増税も円安も「物価が上がる」という面では全く
効果は同じです。
それが同時に来た一方で賃金がほとんど上がら
なかったのですから、消費が歴史的落ち込みを
記録したのは当然です。
結局、国民はアベノミクスによって単に実質賃金を
下げられただけだった、ということです。
なお、「実質賃金が下がったのは、非正規雇用が
増えて賃金の平均値が下がったから」というもっとも
らしい説が流布されていますが、ウソです。
平均値の問題なら名目賃金も下がるはずですが、
グラフを見れば分かるとおり、下がっていません。
アベノミクスは「資金需要はあるはず」
「物価が上がれば勝手に賃金も上がるはず」という
2つの仮定を前提にしていました。
しかし、それは間違いだったのです。
前提が間違っているので、うまくいかないのは当然
です。
アベノミクスがもたらしたのは、円安による為替差益
と株価の上昇だけであり、ごく一部の国民しか恩恵
を受けていません。
なお、株価の上昇は、金融緩和、年金資金の投入、
日銀のETF購入によって吊り上げられたものであり、
経済の実態を反映していません。
特に最近は日銀による株価の下支えがひどくなって
います。
雇用改善についても、生産年齢人口の減少、
高齢化による医療・福祉分野の需要増大、
雇用構造の変化(非正規雇用の増大)が重なって
もたらされたものであり、アベノミクスとは無関係です
(詳細は拙著『アベノミクスによろしく』をお読みください)。
■GDPが“かさ上げ”されていた?
以上のようにアベノミクスは、史上空前の大失敗
に終わりました。
ところが、2016年12月8日のGDP改訂により、
その失敗は覆い隠されてしまいました。
このGDP改訂は、表向きは「2008SNA」というGDP算出
の国際基準への対応のため、という点が強調されました。
この新基準では研究開発費等が上乗せされるため、
GDPがだいたい20兆円以上はかさ上げされます。
しかし、その「2008SNA対応」を隠れ蓑にして、
それとは全く関係ない「その他」という項目で大幅な
調整がされているのです。
まずは改訂前の名目GDPの推移を見てみましょう
(下のグラフ)。単位は兆円です。
名目GDPの推移(平成17年基準)(『アベノミクスによろしく』
図4-1と同じデータを使用)
ご覧のとおり、名目GDP史上最高額だった1997年度と
比較すると、2015年は20兆円以上差が開いています。
ところが、改定後の名目GDPの推移を見てください。
名目GDPの推移(平成23年基準)(『アベノミクスによろしく』
図4-1と同じデータを使用)
ご覧のとおり、20兆円以上あった差がほとんどなくなり、
2015年度が1997年度にほぼ並んでいます。
なぜこんなことが起きるのか、改訂によるかさ上げ額を
見てみましょう(下のグラフ)。
名目かさ上げ幅(『アベノミクスによろしく』図4-2と同じ
データを使用)
アベノミクスが開始された2013年度以降のかさ上げ額が
突出しているのがよく分かります。
このかさ上げ額の内訳ですが、
(1)2008SNA対応によるものと、
(2)その他の2つに大きく分けることができます。
問題なのは先ほども書いたとおり「その他」です。
「その他」のかさ上げ額(「アベノミクスによろしく」図4-7と
同じデータを使用)
明らかにおかしいですね。
アベノミクス以降“だけ”が大きくプラスになっています。
平均すると5.6兆円もプラスです。
他方、他の年度はプラスどころかマイナスばかりで、
特に90年代は全部マイナスになっています。
マイナスの金額も大きい。
では、先ほどの改定後の名目GDPから、
この「その他」を差し引くとどうなるのか見てみま
しょう(下のグラフ)。
「その他」を引いた改定値(『アベノミクスによろしく』図4-1
および7と同じデータを使用)
全然違いますね。
1997年度と2015年度の差は13.4兆円もあります。
つまり「その他」によって、1997年度を含む90年代の
数値を大きく引き下げ、他方でアベノミクス以降を
大きく引き上げるという調整がされたことが分かり
ます(この問題についてのより詳しい分析は私の
ブログに書いてありますので、あわせてお読み
ください)。
こうやって名目GDPを大きく調整したことにより、
「2年度連続実質民間最終消費支出下落」
「実質GDPが2年度前を下回る」といったアベノミクス
失敗を象徴する現象は消滅し、実質成長率も2倍
近く上昇しました。
そして、2016年度はめでたく史上最高の名目GDP
を記録し、以降それを更新し続けている、という状況
になっているのです。
■政府が国民に見せ続けている「幻想」
日本の政府総債務残高(国と地方の債務合計)の
対GDP比は約240%であり、2位のギリシャ(約180%)
を引き離し、先進国の中でぶっちぎりのワースト1位
になっています(IMF。2016年)。
これだけ債務が膨らんだ原因は、社会保障費の
増大が最も大きく影響しています。
社会保障費は、今後さらに膨らんでいきます。
社会保障費の大半を占めるのは年金・医療・介護費
であり、高齢者が増えると社会保障費も増えます。
高齢者(65歳以上)の数は2042年に3935万2000人で
ピークを迎えるとみられます(国立社会保障・人口問題
研究所の推計。出生・死亡中位)。
2018年と比べると、だいたい370万人ぐらいの増加です。
しかし、社会保障費がより多くかかる後期高齢者
(75歳以上)に限定すると、ピークはもっと先で2054年。
人数は2449万人で、2018年と比べるとだいたい
650万人増える計算になります。
ではその後期高齢者を支えるべき生産年齢人口
(15歳~64歳)がどうなるのかというと、2054年には
5072万6000人。
なお、2018年の生産年齢人口は7515万8000人です。
後期高齢者数がピークを迎える年に、今より2443万
2000人も生産年齢人口が少ないということです。
つまり、私たちは、「世界最悪レベルの債務を
背負った状態で生産年齢人口が急減し、高齢者は
増大していく」という、人類が経験したことの無い
未曽有の事態に突入しているのです。当然、現役
世代の一人当たりの税・保険料負担は増えていき、
その分、可処分所得が減ります。さらに、消費する
人間の数も急激に減っていきますから、国全体の
消費は落ちていくでしょう。GDPの6割は国内消費
ですから、消費が落ちればGDPも落ちます。
日本が経済成長し続けることは不可能です。
こういった未来が待っていることを前提に、
アベノミクスを見てみると、「究極の現実逃避」である
と思います。
これほど財政が悪化すれば、普通は国債の金利が
上がって借金返済額が増大し、増税せざるを得なく
なります。
しかし、日銀が国債を爆買いしているおかげで、
金利が無理やり低く抑えられており、増税先送りが
可能になっています。
円の信用を保つため、日銀が国債を直接引き受ける
ことは財政法5条で禁止されていますが、今の日銀は、
いったん民間金融機関に国債を買わせて、すぐさま
それを買い上げる、という手法を取っています。
最終的に日銀がお金を出すという点では、直接引受
と同じです。
もう「異次元の金融緩和」ではなく「脱法借金」と呼ぶ
べきでしょう。
今この脱法借金を止めると国債が暴落して金利が
跳ね上がり、円も暴落するでしょうから、もう止められ
ません。
だから続けるしかないのですが、これで円の信用を
維持できるとは思えません。
2018年6月15日に、「経済財政運営と改革の基本
方針 2018」(骨太の方針)が閣議決定されましたが、
経済成長による財政再建が強調される内容となって
います。
「経済成長すれば何とかなる」という発想でずっと
失敗し続け、負担を先送りにして借金を膨らませて
きた日本ですが、いまだにその路線を維持している
のです。
なお、消費税増税については、耐久消費財における
増税後の反動を和らげるため、「税制・予算による十分
な対策を具体的に検討する」と書かれています。
要するにお金を使うということですが、財政を立て直す
ために増税するのに、さらに支出を増やすのは矛盾
しています。
政府は円の信用が失われるまで脱法借金を継続し、
「経済成長できます」という幻想を国民に見せ続ける
のでしょう。
国民が騙されていたことに気づくのは円が暴落した後
のことになります。
(*)文中で引用している人口推計のデータは下記URL
を参照しています(国立社会保障・人口問題研究所)。
【転載終了】
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GDPについては、1年ほど前でしょうか、
計算方法を変えて誤魔化していると記事に
しました。
怖いのは、安倍政権が誤魔化してきた数字
などが、後遺症として影響を及ぼすことです。
安倍政権が続けば続くほど、後遺症が重症化
すると言うことでしょうね。