スーパーセブンに乗りたいと云う思いが、時々頭を過ぎる。
スーパーセブンは走るために必要な最低限の装備だけで構成されたプリミティブな乗り物だ。いや、常識的に言えば「必要最低限」さえ充たしていないかもしれない。
子供のころ、近所に中学生と高校生の兄弟が居た。
その兄弟は学校がひけた夕方、みかん箱の様な木箱に車輪とハンドルを付けた自作のおもちゃで坂道を転がり落ちる遊びをしていた。
まだ自動車がそれほど多くなかったのか、細い田舎道だから交通量が少なかったのか、とにかく比較的自由に道路を転がり降りる遊びを続ける事が出来た様だ。
まだ小さかったワタシも時々その遊びに交ぜて貰った。ジェットコースターに乗っている様で楽しくて大はしゃぎした。
中高生の兄弟が凄く大人に見えて、眩しかったのを覚えている。
兄の方は、確か近くの工業高校に通っていた様な気がする。
兄弟が作る車は徐々に進化していき、いつの間にかちゃんとしたゴーカートの様な形になっていた。
ブレーキも付いていたし、動力も備わっていた…、かどうか定かではない。

スーパーセブンは、きっとこのみかん箱進化形にドンガラを乗っけた様な物ではないかと思う。クルマ好きが一から手作りで作り上げたおもちゃなのだ。
車で遊び尽くした爺さん達までも引き付けて離さない理由はその辺りにあるのだろう。
数年前のある日、数少ないディーラーに行ってセブンに試乗した。
シートに座って戸惑った。
どうしても片方の足で2つのペダルを踏んでしまう。
仕方がないので、靴は脱いで素足でドライブすることにした。
それでも足元は狭い。
それだけではない。操作系はあっちもこっちもノンサーボなので、操作が一々重いのだ。
しかし、走り出すと異様に楽しい。
ステアリングもブレーキも重いので、慣れないうちはスムーズな操作は出来ず、スピードもノロノロの迷惑車両だったと思うが、地面に近いところに上半身剥きだしで座り、風を受けながらドライブするのがことのほか楽しいのだ。
屋根がないという意味ではロードスターも大差ないと思うのだが、なぜこんなに新鮮なのか分からなかった。
不便なクルマだからなのか、剥きだしの度合いがハンパないからなのか、とにかく興奮した。

ディーラーに戻って、コーヒーを頂きながら仕様やオプションの話をした。
契約しても、納車まで1年もかかるから、車庫の心配は後でいいとか何とか談笑していると、突然腰が痛み始めた。
痛みはどんどん強くなり座っているのが耐えられなくなった。
え? 一体どうした?
あぁ、そうか。ディーラー前の通りに停めた時、交通量が多いので、運転席からそのまま助手席を跨いで歩道へ降りようとして、不用意に大股開きをしたのが原因なのだろう。
痛みが酷くそれ以上座っていられないので、泣く泣く話を中断してディーラーを後にした。
こうしてスーパーセブンの記憶は激しい腰痛と固く結び付いて脳裏に定着してしまったのだった。トホホ~。
しかし、腰の痛みは既に癒え悪夢の記憶も薄れつつある。
折しも季節は冬。
空調はナチュラルヒーターしかないセブンを駆るには最高の季節である。
箱根まで乗りに行くか 寒いうちに。
Posted at 2016/12/02 21:43:46 | |
トラックバック(0) |
クルマ | 日記