国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発の遅れにより、三菱重工業が「格下げ」になった。スペースジェットは三菱重工の「体力」が試される事業になってきた。【毎日新聞経済プレミア・平野純一】
◇S&Pが格下げして「BBB+」に
S&Pグローバル・レーティングは2月19日、三菱重工の長期発行体格付けを「A-(シングルAマイナス)」から「BBB+(トリプルBプラス)」に1段階引き下げた。S&Pは格下げの主な理由を「スペースジェットの開発がさらに長期化することで、多額の費用負担が続く可能性が高くなったため」としている。三菱重工は2月6日、6度目の納入延期を発表し、「2021年度以降」としていた。S&Pの吉村真木子主席アナリストは「スペースジェットの開発費は年間1000億円程度が必要と見ている。以前は20年半ばが納入予定だったため、開発費も20年度は減ると見込んでいたが、納入が21年度以降となったことで、20~21年度の2年程度は引き続き1000億円程度の開発費を必要とし、三菱重工の収益性を一段と押し下げると判断した」と述べた。
◇同業他社に見劣り
一般的に格付けは、当該企業の債務返済に問題はないかという点を重視して決める。S&Pもこれを重要視するため、有利子負債に対する利益の比率や、売上高に対してどれだけ利益を確保しているか--が大きな判断基準になる。利益はEBITDA(利払い前・償却前の利益)を指標としている。今回はスペースジェットの開発遅れによる、売上高に対する利益率「EBITDAマージン」の悪化を重視。同値は、スペースジェット事業を除いたベースで見て、三菱重工は今後1~2年、S&Pの従来予想から1ポイント強下回り、8~9%程度になると見ている。さらにスペースジェットの要因が加わると、EBITDAマージンは20年3月期に6%未満に落ち込み、21年3月期以降も7%台後半にとどまると予測する。
同業他社の直近の会計年度の同数字をみると、日立製作所は12.0%、米GEは11.8%、独シーメンスは13.4%。吉村氏は「やはり10%以上は維持したい」と話す。三菱重工が他社に比べて見劣りすることは明らかだ。
◇フォークリフト事業なども利益減少
三菱重工の事業は大きく分けて、(1)パワー部門(原子力事業、ガスタービン製造など)、(2)インダストリー&社会基盤部門(フォークリフト、エンジンのターボチャージャー、空調など)、(3)航空・防衛・宇宙部門(ボーイング向けの主翼や胴体製造、防衛艦艇、ロケットなど)の3部門に分かれる。このうち、インダストリー部門は比較的景気動向の影響を受けやすい。吉村氏は「景気感応度が高いフォークリフトやターボチャージャーなどが、最近の世界経済の下押し傾向の影響を受けて利益が減少しそうで、スペースジェットの要因に加えて三菱重工の利益を厳しくみる要因になった」と述べた。また三菱重工によると、ボーイング787向けの主翼の生産に関しても、19年度は月産14機ベースで製造しているが、20年度はボーイングの減産により、月産12機程度になりそうで、これも利益の下押し要因になりうる。ただ「BBB+」の格付けは投資適格水準。格付けが投機的水準になるのは、さらに3段階下の「BB+」まで格下げになった時になる。
◇開発費を補塡し続けるしか
スペースジェットの現在の1号機納入予定は「21年度以降」。順調に開発が進んだとしても、あと1~2年は1円の収入もない。しかも、スペースジェットを大量に売ることができる市場は日本ではなく米国だ。しかし米国には、航空会社とパイロット組合間で、機体の大きさなどを制限する「スコープクローズ」と呼ばれる労使協定があり、現在開発中の「M90」(90席級)が売れる見通しはない。スコープクローズに合致するのは、M90に続いて開発する一回り小さな「M100」(70席級)だが、今回のM90の開発遅れにより、M100が完成し納入できる時期はいつになるのか、全く見通しが立たないのが現状だ。スペースジェットにはこれまで6000億円以上の開発費をつぎ込んできた。M100の開発費も含めると、1兆円規模に達すると見込まれる。スペースジェットが安定的な利益を生み出すまで、三菱重工は他の事業による利益で開発費を補塡(ほてん)し続けるしかない。だが、今回のS&Pのリポートでは「21年3月期にはフリーキャッシュフローは赤字になる可能性が高い」とまで指摘する。スペースジェットは、まさに三菱重工の「体力勝負」の事業になってきた。
旅客機開発の空白50年は大きいなあ。しかし、こうなったからにはもうやるしかないだろう。すそ野の広い商業航空機産業は明日の日本にはぜひ必要な産業だからこの経験を生かして頑張れ。今回の失敗は先の大きな財産になる。止めたらすべて無になってしまう。がんばれ、三菱重工、株買ってやるから、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2020/03/11 15:48:09 | |
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