20年半ばの納入、「ぎりぎりいけると思っている」
国産小型ジェット旅客機「MRJ」の開発が佳境に入る。三菱航空機(愛知県豊山町)は2018年後半には設計見直しを反映した機体を製造し、型式証明取得に向けた飛行試験に追加する。水谷久和社長に聞いた。
―17年秋としていた設計見直しは完了したのですか。
「装備品の配置、電線の配線と大きく二つの見直し作業があり、装備品については終えた。電線はめどは立ったが、詳細な作業をしている。18年の大きな課題は、設計見直しを完全に仕上げ、それを反映した機体を作り上げることだ。年内ぎりぎりになるかもしれない。追加する機数は今後詰める」
―飛行試験の今後の見通しは。
「試験時間は1500時間まで到達。ただ、型式証明の審査を受けられる状態にはなっていない。設計見直しがあるので、どれほどの試験時間で完了すると言える状態ではない」
―量産初号機を目標の20年半ばに納入できそうですか。
「ぎりぎりいけると思っている。ほぼ計画に沿って動いている」
―新規受注がしばらくないですが、航空会社との商談状況は。
「型式証明取得に向け飛行試験を進めることが、将来の注文につながるはずだ。開発を仕上げることが優先で、積極的に受注を取ろうとはしていない」
―最大40機発注した米イースタン航空が米スウィフト航空に買収され、キャンセルの可能性が出ています。
「イースタンはスウィフトに事業譲渡したが、イースタンからの受注はいまも存在している。注文をどうするのか、イースタンと協議を重ねている。キャンセルになるかもしれないが、MRJの開発状況や性能ではなく、イースタン側に起因する結果と受け止めるべきだ」
―神戸製鋼所のアルミニウムを試験機に採用していましたが、影響は。
「飛行試験には影響なく、安全性は確保できる。量産での採用については状況を見極める。顧客側が材料を全て疑って確認することはあり得ないが、完全に信頼して全く検査しないわけではない」
<記者の目>
試験機を計画通り追加投入できるかが、今後のヤマ場の一つになる。納期を守るためにも、これ以上のトラブルは避けたい。キャンセルが発生すれば、受注活動に悪影響が出る可能性はある。ただ、今回は顧客側の事情によるものが大きい。納期を守って新規受注につなげるよう、開発にまい進するしかない。
いずれにしてもMRJは飛行試験を遅滞なく終わらせて型式証明を取り、20年中期の納期に間に合わせることが最大のテーマだろう。もしもこれ以上遅れることになると大量キャンセルが発生しかねないし、その後の受注にも影響するだろう。客船もそうだが、旅客機などは単に技術があれば作れるというものではない。防衛省(庁)一辺倒で来た三菱重工には売れる商品を作ってお客をつかむという知識が足りなかったんだろう。客船は撤退したが、旅客機は次に備えて経験を蓄積しておくべきだろう。
Posted at 2018/01/06 15:21:15 | |
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経済 | 日記