自民党は防衛費を倍化しろと主張している。5月25日づけブルームバーク「NATOの『GDP比2%』参考に防衛費確保を」では「安全保障調査会と国防部会はそう結論づけた」と報道している。その趣旨は「従来GDP比1%であった防衛費を2%まで増やせ」である。
だが、これは荒唐無稽な主張だ。対GDP比2%は無根拠である。また平時負担では不可能な金額である。選択肢としても非現実的である。
ではどうすればよいか?
本当に防衛費が2倍必要なら中国と仲良くしたほうがよい。日本は中国に下手に出て対立を緩和すべきだ。どうやっても勝てない敵なら味方にするしかない。実際には従属の必要もない。防衛費の無駄を省けば対中対応は充分可能だ。陸上戦力を減らし海空戦力を増強すればよい。
■ GDPが半分に減れば防衛は充実するか?
防衛費2倍論は空論の極みだ。まずGDP2%論は無根拠である。安全保障セクターは昔から「日本防衛にはNATOなみにGNP/GDPの2%が必要」と主張していた。だが、そこに具体的な根拠はない。
そもそも現実的な必要を反映していない。2%は冷戦期の1950年代に米国が持ち出した数字だ。「米政府は議会に説明しきれない。だから各国ともGNPの2%くらいは自己負担してくれ」といった名残でしかない。
その達成は防衛力整備とは本来は無関係である。これは次の疑問を考えれば明瞭となる。「もし仮に日本のGDPが半分になれば防衛は充実するのか?」だ。
2%は何の目安でもない。日本が大恐慌に陥りGDPが半分になれば、防衛費のGDP比率は倍になる。NATO並みに2%が達成される。それで「防衛力が強化された」といい出すのはどうかしている。
その点で無意味な主張だ。日本の防衛を確実とする、あるいは中国との対峙を続ける。それと2%、防衛費2倍は何の関係もない。
■ 防衛費2%で国は滅びる
そもそも今の日本にはその余裕はない。
防衛費は約5兆円である。18年度予算で5.2兆円であり国債費と社会保障費を抜いた一般会計予算のうち1/8、13%を占めている。2倍にすれば国民生活は破綻する。消費税を10%にしても足りない。消費税1%の税収効果は約2兆円でしかない。そして5%を8%に増やしただけでも空前の不景気となった。民力は疲弊の極にある。実質所得が下げ止まらない中、消費税10%以上に相当する負担増に国民は耐えられない。
到底、平時にできる選択ではない。今は戦時下ではない。強いて防衛費の負担増に耐えなければならない状態ではない。それよりもやるべきことはいくらでもある。現状では安全保障よりも社会保障である。あるいは、今後の成長力確保を考慮すれば教育の充実、無償化等に費やすべきだ。
■ 中国と敵対できないなら味方になるしかない
その上で述べれば、別のオプションを検討しない点も問題である。本当に平時防衛費が2倍必要であるとしよう。「現今の課題である中国との対峙を続けるためにはどうしても必要である」。誰もが疑いなくそう計算する状況となった。そう仮定しよう。その場合においてバカ正直に対中対峙を続けるべきだろうか?
普通は他の選択肢を模索する。
一番良い方法は中国との関係改善だ。敵対できないなら味方にするしかない。普通はそう考える。従属までは必要はない。中国に勝てないにせよ日本は軍事的には充分強力である。その点でフィリピン等とは異なる。中国も強力な日本に無茶は言えない。
つまり譲歩もほぼいらない。尖閣問題で形だけの譲歩をする程度でよい。その上で台湾を切り捨てる。南シナ海での優越的立場を認める。チベットほか中国国内問題に一切干渉しない。歴史問題に真摯に向き合う。それだけの話だ。
あるいは逆方向に核武装でもいいだろう。通常戦力を減らして少数の核を持つ。それで中国を直接抑止する。あるいは「中国との通常戦争に負けたら日本は核を使う」といった危機感を米国に与えて間接的抑止を作る。それで同時に国民生活を守るやりかただ。
■ 陸自を減らせば現状予算で対応可能
実際にはそこまでする必要もない。現状ある防衛費の無駄を省けば済む。具体的には陸自予算・人員を半分にすればよい。なにより現状で陸自は何の役にも立っていない。対中対峙に関しては全く機能していない。それでいて海空自よりも多い予算を費消している。
その人員予算を半減させれば海空戦力は3割増にできる。中国との対峙に必要な軍艦も戦闘機も3割も増やせる。それ以外の無駄も減らせる。海空自衛隊にも無駄がある。また平凡性能で高価格となるF-2戦闘機やC-2輸送機のような残念な国産武器開発をやめてもよい。他にも駐留軍経費の無駄や情報組織の無駄もある。
それらを省いても中国との対峙は充分である。中国も既に人口オーナスに入っている。今後は低成長に喘ぐことになる。日本の少子高齢化が山を超える2050年くらいまでなら陸自削減で凌げる。
将来的には日中関係も改善する。互いに少子高齢化といった社会・経済問題を抱えている。安全保障では相互に「敵対できないから味方にするしかない」と考える可能性は高い。
元海自の幹部がこんなことを言うのか。「戦争の危機が迫っているので戦争に備えろ。スウェーデンは絶対に屈しない。抵抗を止めるよう呼びかけるのはすべて敵の謀略だ」と国民にパンフレットを配ったスウェーデンとはえらい違いだな。自民党議員の言うGDP比2%は特に具体的な意味を持たない。単に数字を掲げただけだろう。でもGDPが半分になったらって比喩も相当なおバカではある。別に中国と戦争をするわけではない。友好関係を維持してやっていければそれに越したことはない。向こうもそう思っているだろう。でもこのおっさんが言うように「尖閣問題で形だけの譲歩をする程度でよい。その上で台湾を切り捨てる。南シナ海での優越的立場を認める。チベットほか中国国内問題に一切干渉しない。歴史問題に真摯に向き合う。それだけの話だ。」と言うのは国家としての矜持を捨ててひれ伏せと言うことで特に領土に関することで譲歩したらそれはもう隷属ともいうべき関係になる。外交と言うのは仲良くすることではなくて自国の利益を図ることだ。握手をしながら後ろで「余計なことをしたら痛い目を見るぞ」と無言の威圧を加えるのが軍事力でいわば相手の理不尽を思いとどまらせる力が必要だ。スイスもスウェーデンも平和国家と言うが決して平和国家ではない。どの陣営にも属さずに自国の主権を守るために国内を戦場にしても戦うという気概を持ち、必要な備えをしている。日本が経済規模も人口も何倍もある中国と正面切って戦争ができるようにするのは不可能だろう。それでも局地戦で痛撃を加えて撃退することは可能でそれが抑止力である。まあ何を最善として選択するかは国民の判断だろうが、この手の御仁が海自を去ってくれたのは日本にとって幸いだったかもしれない、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2018/06/02 15:55:35 | |
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