“SHIBUYA-AX”なる建物が、アノ代々木体育館の横に
有るとは、全く知らなかった。しかも出来たのは、2000年と
言うから、既に14年前の建造物という事だ。確かに渋谷に
はチョクチョク来てはいたが、この場所に来るのは10年ぶり
位かもしれないと思いながら会場の正門ゲートを入った…。
初見は好印象である。大き過ぎず小さ過ぎず、大勢の人の流れを想定して、効率良く歩けるレイ
アウトとなっており、外にある施設も、必要最低限の、しかし有ると便利な設備がさりげなく配置さ
れていた。流石、新しい箱モノは良く考えられていると感心した。
既に開場時間は過ぎていた為、入り口付近にはスタッフの姿以外は余り見られなかった。しかし
当然建物の入り口にはバリケードの様な柵が張られ、入場客をチェックするゾーンが設置されて
いた。とは言え、AKBのチェックゾーンに見慣れた私からすれば、トイレのドアに等しい簡素なゾー
ンだった(苦笑) 一応ココもカメラ類の持ち込みは禁止されていたが、それらの持ち込みをチェック
するスタッフは居なかった。なので、殆どの人がカメラを持ち込んでいたと推察する。因みに私は、
今回は特に撮影するつもりは無かったので、携帯のみを携行していた…。
建物に入った瞬間から、ライブ会場独特の雰囲気と熱気が伝わって来た。当たり前だが、客層
はかなり上がっている。当然未成年は入れないのだが、その未成年はおろか、20代も殆どいない
と思われた。そう、今日のココは、“大人の男達”が集う場なのである…。
“DMM ADULTAWARD 2014” コレが今日の催物の正式名称である。
ネット通販サイトDMMの、そのアダルト部門が主催する、授賞式イベントだ。そして今回、“真の
No.1セクシー女優は誰なのか?” を決める記念すべき第1回でもあるのだ! 故にこの授賞式
に参加出来る一般の客は、抽選により選ばれた者だけとなる。招待&抽選を加えた、計1,000名
の参加者に対し、応募は17万を超えるという、正に超狭き門であった。これは通常のAKB48劇場
チーム公演のチケット競争倍率よりも高いのだ! まあ、私は然るルートから入手したので、影
響は無かったが…。
この会場内にも、ノミネートされた各AV女優宛に届けられた、花輪や花束が展示されていた。
ただしソコは各界の著名人から送られたAKBの花束とは違い、その送り主欄には、“〇〇連合
△△支部より!”だの、“□□親衛隊一同”等と言った、昭和の香り漂う語句が乱舞していた(爆)
このエリアだけは、“アイドルヲタ”では無く、“昭和のアイドル追っかけ”が未だ支配している場
所でもある様だった(苦笑) また扱う商品が商品なだけに、確かに会場の外をうろつく人物の中
には、ソレらしい人もチラホラ散見されており、否応なくこの場所が“アンダーグラウンド”である
事を痛感させられた…。
しばらくロビーを探索した後、いよいよ授賞式の場となる、ライブ会場内への分厚い防音扉を
開けた。途端に耳を劈く大音量の音が鼓膜を振るわせた。ステージ上では、既に前座のパフォー
マンスが始まっていたのだ。建物を揺るがす程の重低音が、大音量のユーロビートである事を
誇示していた。そのリズムに合わせ、またはアクティブに激しく光を放つライトに合わせ、秘部の
みを覆っただけの、小さな布切れを身に着けた女達が、怪しげに腰を振り、会場を埋め尽くす男
達を挑発していた…。
と、表現すれば、結構イイ感じの雰囲気に見えるが、実際は、
「うッ」
であった。私は加齢臭に眩暈がした(爆) ココにいる殆どの男は、恐らく40代以上と思われ、散見
した若い女子は、皆顔をしかめていた(苦笑) そう、この場に入って意外だったのが、結構女性の
姿が多く見られた事だ。時世と言うか、今やAV女優は、男だけでなく女性にも影響を及ぼす存在
になっているという事だ。実際、東アジアは優に及ばず、世界的にも日本のAV女優の知名度はか
なり高い。日本では余り知られていないが、日本のトップAV女優ともなれば、日本のどんなアイド
ルや、スポーツ選手や、政治家よりも知名度が高いのだ! なので彼女達がそれら諸外国に行く
時は、完全にVIP待遇であり、いずれもスーパースターとして迎え入れられている。しかし日本の
マスゴミが、それらを報道する事は、まず無い…。
偶然だが、今回着ていたジャージも、ココのスタッフユニフォームと酷似していた事もあり、あら
ゆる場所で観客やスタッフに挨拶されまくったが、今更否定する面倒はせず、その場は鷹揚に頷
く事に専念した(苦笑) 最初は椅子の有る2階席に行こうとしたが、年齢層が高い為か、既に満席
だったので、仕方なく1階のアリーナエリアの端っこに落ち着く事にした。ステージ上は、会場の空
気を温める為か、更に激しさを増していた…。
数十分後、場内の照明が全て落とされ、授賞式が始まりました。MCの軽妙なアナウンスにより、
次々とノミネート女優が壇上に現れます。場内は贔屓の女優への大歓声で騒然となります。兎に
角、雑で野蛮な歓声ですが、しかし応援の仕方や掛け声、その濁声など、寧ろ懐かしささえ湧い
てきます(苦笑)
所々、間にアーティストのライブを挟み、各部門賞の授賞式が粛々と進行しました…。
そうしていよいよメインの授賞式である、“最優秀女優賞”の発表を待つのみとなりました。ここ
からプレゼンターとして、“表”の世界でも、かなり著名な芸能人である女性芸人と男性芸人が続
けて登場し、緊迫感漲る会場を、一旦笑いでリラックスさせ、会場を沸かせました。しかし壇上に
佇むノミネート女優達に笑顔はありません。彼女達にとって、現場以外に初めて出現した真剣勝
負の場でもあったからでしょう。故に受賞者が発表され、その緊張が一気に解けた時、彼女達の
表情は慈愛に満ち溢れ、そして美しい涙を流し、女神へと昇華したのです。ギラついたオッサンの
集団をも、一瞬で純粋な少年の心へと還元させ、場内は何とも言えない幸せな空気で満たされま
した…。
これも余り信じられておりませんが、彼女達の大部分が、実はとても純粋であるという事も声を
大にして言いたい。ユーザーの眼は節穴では無いのです。彼女達がいかに真剣にそして、文字
通り身を削って我々男子達に夢と希望と営みを与えているのかを、コチラも身を持って理解して
いるのですから!
しかし彼女達は、どんなに人気があっても、どんなに光り輝いていても、その光が地上に溢れ
出る事は、私の様なスケベなオッサンが政権を奪る様な事でも無い限り、恐らくこの先もない事
でしょう。彼女達の知名度や影響力に比して、余りにも暗く狭いこの会場で執り行われた授賞式
を、私は、しかし複雑な気持ちで見つめていました。
「本当は、もっと大きな箱で 彼女達を称えたいな…」
私は自分の力の無さに怒りすら覚えました…。
授賞式も終わり、混雑を避ける為に早めに会場を後にしました。未だ熱気が冷めやらない建
物から外に出ると、冷たい風が吹いていました。私は暫く歩くと振り返り、“SHIBUYA-AX”とい
う建物を改めて見ました。私にとって、この、いつの間にか立っていた建物は、来月、その歴史
を閉じるという事です。それは私にとって、いつの間にかあったモノが、いつの間にか無くなって
しまうという事です。
正に、私が生まれ育ったこの街の様に…。
おわり
※尚、この日の模様は、愛車紹介ホンダ フィットのフォトギャラリー内の
→ “
ココ” にアップしておりますので、どうぞご覧下さい!