第１回 AKB48 巡礼の旅 中編⑥

　地図にて予め場所は把握していたが、念の為ナビで

検索してみると、なんとその場所の店名が表示された！

　たかがイチ喫茶店であるにもかかわらず！である。　

うーん、AKBの影響力恐るべし。恐らくこのマップのプロ

グラミングしたメンバーの中にファンが居たのであろう(笑)

　そんな南房総突端唯一にあると言ってよいであろう喫茶店“Half Moon”は、しかし、何処にも

見当たらなかった…。地図に示された近辺を何度も通るが、PVに映るあの店は見当たらない。

　「何故だ！　もうなくなってしまったのか！」

海辺にバイクを止め、携帯を取り出して検索をかけてみる。すると数件アップされていたので、

その一つに行ってみると、或る語句が示されていた。“夏季のみ営業”と…(爆)　絶望感が湧き

起って来たが、同時に“廃業”の文字も無かった事に、ひとつの光明が見えた気がした。

　「店は、まだ有る筈だ！」

店内での撮影は断念するしかないが、外観の撮影は出来るかも知れないと、ここは気持ちを切

り替えて、もう一度虱潰しに、周辺を捜索します。すると、有る場所に辿り着きました。廃屋の前に

木材がうず高く積まれたその場所は、しかし、目を凝らしてよく見ると、寂れたバナーが見えて来た。

バイクを止め、ゆっくりとその建物に向かうと、そこには間違いなく“Half Moon”の文字が有った。

急にこみ上げる寂寥感。かつてはこの店内でノンティーこと“野呂佳代”と、“小林香菜”と、“篠田

麻里子”が、ダベッテいたのだ！それが今、廃材の様な木材が店先に積み上げられ、その面影は

殆ど残っていなかった。店内もかなりの寂れ様。これでは店先での撮影もままならない。唖然とし

たまま、少しでもその痕跡を探すべく周辺をうろついていると、何処から来たのか、突然私を呼び

止める声がした。

　「なんだ、オメェーは！」

振り向くと、貧相なオッチャンが立っていた。

　「いえ、只の通りすがりの者ですが…」

と返答すると、かさにかかって詰め寄って来た。

　「ここはあぶねーっから、向こうさ行け！」

最初、ココのオーナーかと思ったが、身なりが余りにも貧相でだらしなく、しかもかなりの色黒だ。

なので、こちらも訝しげにオッチャンを見ていると、その私の態度にムッとしたか、掴みかからん

ばかりに迫ってきた！

　「おめぇーなんだぁ！　何してるぅ！　怪しい奴だぁー、　盗っ人か！」

私も、今まで色々な悪口を言われてきたが、“盗っ人”呼ばわりされたのは初めてだった。

　「俺が盗人に見えるってんのか！　ゴルァァァ！！」と、思わず叫ばずにはいられなかった。

突然の反撃に、オッチャンは転がんばかりに、思いっきり後ろにタジろいだ。

　「い、いやぁ、そ、そうゆう訳じゃねぇーが…」

　「じゃあ、何に見えたぁ！」

オッチャンはいつの間にか、チラチラと上目遣いになっていた。攻守交代である(苦笑)

　「…ギ…ギャン…グ…」

　「今どきギャングだとー！　その語句久しぶりに聞いたわ！！　せめて“首領様”とでも言え！」

　「あわわ、わがったから、もういいっぺ」

と、貧相なオッチャンは来た時と同じく、何処かへと消え去った。

　「クソ！　折角のセンチな情景が台無しになっちまったぜ！」

と言う訳で、ココでの撮影は外観だけにして、最後の撮影場所へと向かうべくCBに戻って行った。

　「それにしても…」

有る疑問が湧き起る。

「もし、もう一度あのオッチャンと、会ったら、俺の事“首領様”というのだろうか？」

　海面に光る煌めきをメットのバイザーに浴びて、黄昏始めたシーサイドをひた走るCBと私だった。


　つづく