そうだ、箱根に行こう!
そう思うや否や、着の身着のまま、“坊(仮名)”とカメラ
をフィットに放り込むと、私は西へと走り出した…。
それは突然だった。
前夜。
いつもの様に、各みん友氏のサイトにペタペタと足跡を付けていたら、或る語句に蹴躓いた。
「し、しるこ…」
甘いものは嫌いでは無いが、それほど好きでも……無くは無い(自爆)
故に、舐める様にそれらのブログを見ていたら、何と知っている場所ではないか! しかも、以前
から気になっていた所でもある。
更に読み込んでいると、今週末で惜しまれながら閉店との情報も!
※詳しくは、
HÅL女史と、
よっし~氏のブログを御覧下さい!
「もうコレは行くきゃない!」
という事で、いつもの様に徹夜明けのまま、箱根へと向かったのだった…。
勝手知ったる箱根への道。しかし、これまで数えきれないほど箱根には行ったのだが、フィットで
行くのはコレが初めてだと気が付いた。
「そういやバイクか、スポーツカーだけだったな。あとロマンスカーも少しあったか…」
等と考えているうち、あっと言う間に峠を駆け抜け、現地に到着した。
ココに停車する事は今まで無かったが、それこそ数えきれない位この店の前は通った。
「よく見りゃ、絶景ポイントではないか!」
立ち止まって初めて気が付く、そんな場所でもあった。坊は物珍しさも手伝ってか、ソコらじゅうを
駆け回っていた…。
一通り景色を画像に収めると、坊をフィットに入れ、私は店の戸を開いた。
一瞬固まる店の人達を尻目に、ドカドカと大きなテーブルの真ん中の席に腰を下ろした。恐る恐る
といった態で、店の人が注文を取りに来た。
「ん~んと…、冷えた体には…やっぱ、柚子茶だよな…。あと疲れた体には…
やっぱり甘いものだよな…ココは某みん友女史のマネをして、抹茶しるこかな…。
それに甘いもの食べたら、やっぱ辛いモノも必要だよな…まあカレーだろうな…」
と、自分に言い訳カマシ捲りながら、注文を終えると、一息つき店内を見回した。
「整理整頓された山小屋みたいだな…」
それがこの店内の第一印象だった。そして他にも色々置いてある展示物を眺めていると、注文し
た品々が次々と運ばれて来た。
「う~ん、イイ香り!」
柚子の匂い、抹茶の匂い、そして、カレーの匂い…。それらが混然一体となって鼻腔の奥を擽る…。
「いっただっきマース!」
柚子茶を一口啜りながら、カレーを頬張り、それが喉に痞えた所で、抹茶しるこを喉に流し込む!
「んんん~!! 複雑なテイスト!!」
正に、変態食いではあったが、昨日から何も食べていないので、空気すら美味しいと感じていた
から、これはしょうがない事であろう!
そうしてこの最後の晩餐を堪能していると、店の奥から御主人が申し訳なさそうに話しかけて来
た。そして、私の度肝を抜く言葉を言い放った。
「あのう…失礼ですが…、ひょっとして……、芸術関係の方でしょうか?」
「ブフォッ!!」
思わず、抹茶しるこを噴いた!
「ゲエッホゲホ!!……何で、ゲエッホ…ですか?」
聞かずにはいられなかった。
「いや、あの、その、個性的な…、半被と言うか袢纏と言うか、着てらっしゃるものですから…」
確かに今日は、いつも着ている“愛”の一文字が書いてある袢纏では無く、昇り竜と虎の刺繍が
縫ってある袢纏ではあったが、それがまさか芸術家に間違えられるとは…。人生まだまだ勉強
である…。
その後、見た目とは裏腹にフレンドリーなワタクシの性格が認知されたか、他に客が居ない事も
あり、一気に御主人達と親密さを増していった。
閉店の理由や、イニD掲載の裏話など、あっと言う間に楽しいひと時が過ぎて行った。
「どうも御馳走様でした!」
「いえいえ!ありがとうございました! また来てく…あ、違いましたね」
一瞬の静寂の後、はっはっはと、皆が笑った。
「では!」
と言ってお釣りをもらい、店を後にすると、フィットで待っていた坊の親指の様な尻尾がピョコピョコ
と振られていた。
「じゃあ、帰るか!」
と運転席のドアを開け、フィットに乗り込んだその時、店内からお店の人が手を振りながら慌てて
走って来た!
「お客さん!すいませ~ん!」
私は一つ溜息をついて窓を開けた。
「ごめんなさい! 私、お釣り間違えちゃったみたいで…」
「……。」
実はお釣りが千円足りなかった事には気が付いていた。しかし、閉店の残念料として納めてくれれ
ばイイかなと思い、何も言わずにそのまま店を後にしたのだったが、どうやら一足早く気が付かれ
たようだった。
「はいこれ! スイマセンでした!」
と言って、お店の人が千円札を差し出してきた。
「あら、そうでしたか…。でも気づかなったから、別によかったのに」
「あはは、そうはいきませんよ! もう二度と会えないかもしれないのだから…」
「確かに…そうでしたね…」
何故かその言葉にチョットしょんぼりした。と、その空気を打ち破るかの如く、突然坊が開けた窓から
車外へ飛び出した!
「あららららららら!!!」
野に放たれた矢の様に、一目散に駆け回る坊を店の人が必死に追いかけた!
「どうしたどうした?」
それに御主人も加わり、あっという間に、しんみりした空気が霧散した。そしてようやく坊を捕まえる
事に成功すると、ついでとばかりに、御主人がカメラを持ち出し、臨時記念撮影会が開かれる事に
なった…。
それからしばらく外でマッタリした後、今度は本当に店にお別れをした。
「では、またいつかどこかで!」
「はい!そのときはまた宜しくお願いします!」
そう言ってお互いに手を振る中、フィットのアクセルを、今度はゆっくりと踏んでいった…。
そろそろ空に赤みが増す頃、無事自宅に到着した。門のたもとには、置き去りにされた“お嬢
(仮名)”がキツイ目をコチラに向け、佇んでいた。
「ごめんごめん! でもお嬢がどっか行っていたから、しょうがなかったんだぞ!」
と言ったが、「ふんっ!」とばかりに、玄関へ走って行った。
「あー! お嬢と坊だー!!」
その声に振り向くと、お隣のオチビさんがフェンスによじ登り、お嬢と坊の姿を追っていた。途端に
その声に反応した坊が、オチビさんの元へと駆け寄った。
「あははは! 坊はおっきくなったねぇ!」
そういってフェンスの隙間に捻じ込んでいる坊の顔を撫で回した。
坊は、嬉しそうに、親指の様な尻尾をこれでもかとピョコピョコ振っていた…。
黄昏時、仔犬と子供が戯れる声と姿を見て、
「なんか、イイナ…」
と、全身が陽だまりの様な心地良さに包まれた。
私は、オチビさんに礼を言うと、玄関のドアを開けた…。
でわでわ!
※尚、この日の模様は、愛車紹介フィット フォトギャラリー内の
→ “
ココ” と、“
ココ”と、“
ココ” にありますので、どうぞご覧下さい!
また、コチラの手違いで、既にアップしてたフォトギャラの、≪箱根 峠の しるこ屋 中巻~下巻≫
を消してしまったので、折角付けて頂いた、イイネとコメも消えてしまいました! 大変申し訳あり
ませんでした!お手数とは思いますが、宜しければ再度見に来て下さい・・・・m(_)m