次々に明るみに出ている様々なVW検査不正問題。
昔から言われている事だが、
「一つの大事故が発生した場合、その過程で
300位のミスが存在する!」
との文言。どんな事象であれ、大きな事故は、小さなミスが積み重なって発生するモノであり、僅か
な要因で、単発で、ポッと!では起こらないという戒めの言葉だ。
コレを逆から見れば、一つの大きな不正を行う為には、300以上の小さな不正を積み重ねなけれ
ば出来ないとも言い換えられる。 故に、このような大不祥事が露見した後には、雨後の竹の子の
様にあらゆる角度から事後情報なり、評論なり、結果論なりが噴出する事になるのは世の常だ。
そこで今回は、情報が錯綜しているコノ問題に関して、大雑把ではあるが時系列に整理して、
“おさらい”してみようと思う。
その基準だが、なるべく“出所”のハッキリしている当事者達の、言動や記事や評論だけを抽出し
て、私なりに考証を添えて箇条書きにしてみると…。
2005年~2007年頃
●VW社が、エンジン制御プログラムを、独BOSCH社に依頼
(これはあくまで、どの形式のエンジンにも拘らず、走行環境の違いを感知し効率化を図る様に
調整するプログラムであり、VWだけでなく、欧州車の殆どに取り入れられているシステム)
●BOSCHが、その中に含まれていた“ディーゼルエンジン制御”の基本プログラムをVWへ納入
(このソフトは容易に不正システムへ転用出来る為、BOSCHはVWに対し、使い方によっては不正
使用の恐れが発生する事を警告。しかしその後、BOSCHから再度の警告等は確認されていない)
●VWが制御プログラムを書き換え、主にEA189型エンジンに投入
2008年~2013年頃
●欧州を中心にEA189型エンジン搭載車デリバリー開始
●VW社内で、技術者から不正ソフト搭載の問題が提起される
●同時期に、トヨタ自動車がVWディーゼル車の排ガス性能に疑問を持ち、欧州の規制当局に
取り締まりを要請
(背景にはディーゼル車の開発において、VWと同じ様な燃費や走行性能を求めると、排ガス性能
が発揮出来無い事が判り、更に競合他社のデータと比べてもVWが何らかの不正行使をしな
ければ説明出来ないデータだったというのが、その主な理由)
●同じく他の欧州自動車メーカーも、欧州連合(EU)の規制機関に対し、VWへの捜査を要求
(しかし同時期、ドイツ人の外交官を中心に、最新の車両試験でもいくつかの抜け穴を残し、実際の二酸化炭素(CO2)排出量が公式結果として発表される排出量より多くなるよう要請する規制機関へのロビー活動が活発化。これは表向きVWの捜査依頼をしているが、同時に規制も和らげようとする行為なので、つまり“ダブルスタンダード”であり、欧州各社が実はVWの“合法的な不正”を同時に
容認していた証拠とも言える)
●北米にもEA189型エンジン搭載車デリバリー開始
●排ガス規制が強化された筈の欧州で、大気汚染が改善しない事が問題になる
●上記の理由により、国際非営利団体である、国際クリーン交通委員会(ICCT)が、米ウェスト
バージニア大学に調査を委託
●2013年の欧州委員会共同研究センターの調査で、 不正ソフトを見つけていたと欧米メディア
が報じる
(しかし世論も含め追及する事無く、結果、欧州全体では黙認)
2014年~現在
●ウェストバージニア大学がおこなった数か月に及ぶVWディーゼル車の実走行実験により、
NOxが規制値を大幅に超えている事が判明
●このデーターを基に大学側が、米環境保護局(EPA)に告発。それを受けEPAが、VWへ
“リコール勧告”
●VWは直ぐに非を認め、リコール勧告を受諾。しかし数か月経ってもデーターが改善されない
事により、EPAが本格的に詳細な調査へと着手
●車両の検査モードを検知し、エンジン制御を検査用に変更する不正ソフトの存在が確認され
組織ぐるみの検査逃れが発覚
●2015年9月18日。EPAは、VWが、アメリカの自動車排出ガス規制をクリアする為、ディーゼル
エンジンに不正なソフトウェアを搭載していたと発表に踏み切る
●即日VWは不正を認め、リコールに関わるコスト計上を発表し、CEOも引責辞任
●欧州に排ガス検査をする機関及び施設が無い事が露呈
●不正対象車がVWだけで、全世界に1,100万台有る事を発表
●世界中の自動車メーカー及び部品メーカーの株価が急落
●この不正を暴く排ガス物質を検査した計測装置が、日本の“堀場製作所”製だった事が判明
●VW不正発覚後、東京証券取引所の堀場製作所の株価は大幅に上昇。2日の終値は4545円
で、米環境保護局(EPA)が不正を発表した9月18日の終値に比べ450円値上がりした
●VWは10月7日までに排ガス不正問題を受け、米国で2016年型の一部ディーゼル車の認可
申請を取り下げた
以上が今現在迄に解っている大筋である。
まあ、何度でも言うが、この一連の不正事件で判った事は、VWが高度なクリーンディーゼルエン
ジンの技術を持っていなかったという事と、やはり欧州全体に蔓延る、日本以上の高い民族意識と、
極端な“本音と建て前”が存在していたという事だろう。正に“欧州の偽善”を絵に描いた様な一連の
流れではないか!
しかし根本的な問題は、VWは何故、“不正”をしたか? という事である。
これは察するに、VWが中心となって推していたクリーンディーゼルエンジンは、実は製造コストが
高く、販売後の不具合時のコストもかさむ、余り高い利益を生むエンジンでは無いという事。にも拘
らず元々VWは利益率の低い大衆車に強みがあり、コストを高く出来ない事も背景の一つだろう。
それでも何故、VWともあろう大企業が、こんなリスクに手を出したのか?
そこで浮かび上がってくるのが、“プリウス”の存在だと、私は推察する!
欧州メーカーは平静を装っていた様だが、このクルマが登場した時のインパクトは、やはり途轍も
なく大きかったのだと想像出来るから!
ハイブリッドを擁する環境技術では、既に周回遅れとなった欧州メーカーが日本メーカーに追い
付くには、全く別の方法でアプローチせざるを得なかった事は、バカでも分かる事であり、その時
白羽の矢が立ったのが、日本に比べ、辛うじて強みが残っていたディーゼルという“イカロスの翼”
であったのだ…。
しかし、欧州車を擁護する訳では無いが、今でも≪環境技術≫以外の分野では、確かに欧州車
のディーゼルエンジンは“高品質”なのだ。 故にその技術力の“身の丈に合った”生産販売戦略を
採っていれば、こんな大問題等は起き無かった筈である! 勿論ソレは引き換えに、環境技術に
於いて、日本メーカーの後塵を拝するという屈辱的な “現実” を受け入れる事でもあるのだが・・・。
この辺りが、この一連の出来事の根幹を成しているのではないか? それは過去の栄光にすがる
欧州メーカーの“悲しいプライド”が、そうさせたと思わざるを得ないのが、今の私の結論である…。
そしてこの事件によってもう一つ判った事が有る。
それは…。
改めて言うのも何だが、私にとって日本車の凄さ(世界への影響力)が分かった “出来事” と、
なった事である…。
と、今回は、真面目に論評してみました!
取り急ぎ御連絡まで!
でわでわ!