
皆さんご存知のドラマ化され大ヒットしたマンガ「仁」(現代の医者が江戸時代末期にタイムスリップするマンガ)の作者、
村上もとかのデビュー2作目が紹介するF1マンガ、
赤いペガサスです。(右の画像をクリックするとAmazonの購入サイトへ飛びます)
1977年シーズンのF1をリアルに描いたF1マンガの最高峰なのですが、なぜかクルマ好きのお友達に話しても知らない人が多い。ボクだってガキンチョの頃ですが、当時F1が富士で開催が始まり、多分「いまだ!」ってことで始まった企画だったんでしょうが、村上もとかさんのモータスポーツの知識は素晴らしく、編集者に無理矢理入れられたであろうありえないドラマも多々ありますが、最高峰のF1マンガに仕上がっています。しかも当時のドライバーやチームが実名で出てくるところがスゴイ。ぜひ皆さんにも読んで欲しくてこのブログを書きました(^^)
物語の始まりはおそらく、1976年の世界メーカー選手権(World Championship for Makes)シルエットフォーミュラと言われたGroup5のカテゴリ。Porsche935 と BMW 3.5CSLがガチで戦ったシーズンです。主人公のケン・アカバが駆るマシンが当時ストレートシックスにツインターボで800psを絞り出したM49エンジンを搭載したモンスターマシンBMW 3.5CSLです。当時のF1の主力エンジンフォードDFVが520psだった時代ですからどれくらいスゴイかわかるでしょう。
Mモデルは無かったけど、当時からMカラーはありました。BMW 3.5CSL
話はズレますが、ボクのBMWの印象はこの3.5CSLです。軽量ボディにターボでとてつもないパフォーマンスを出すクルマがBMWだと思ってました。BMWって言うとNAのエンジンって皆さん思っているでしょうけど、実はNAは結構最近の話なんですよ。今後また先祖帰りでターボに戻っていきそうですが当時の凄さを感じさせるエンジンは出てくるのかな?
1970年半ば米国のIMSAなどではBMW 3.0CSLがダントツで強かった時代が続いていました。ポルシェはPorsche934を投入しても敵わず、この1976年はヨーロッパで世界メーカー選手権のテコ入れがあり、モンスターマシンGroup5のカテゴリでモノホンのモンスターPorsche935を投入します。935は1976年のルマンでGroup6カーを抑えて予選3番手、決勝4位でゴールします(優勝はGroupe6のPorsche936)。これほど気合の入ったポルシェ相手に1976年の世界メーカー選手権で一歩も引かなかったのがBMW 3.5CSLなんです。ポルシェはドライバーにJ.MassとJ.Ickx(ヨッヘン・マス、ジャッキーイクス)のF1ドライバーを配する盤石の体制で1,2戦を制します。ところが3戦目シルバーストン以降4,5戦をBMWが制する(ツインターボマシンはパワーありすぎでポールポジションは取ったりするんだけどギアボックスやドライブシャフトが壊れて完走出来ないので、たった320psのNA3.5CSLでモンスター935から勝利を掴み取る)というたまらない展開でしたが、それ以降はポルシェに敵わなくなってしまいました。
1976年のディジョン6時間でポールポジションを獲得したBMWアートカー カラーリングの3.5CSL ドライバーはF1ドライバーのロニーピーターソン。背後に迫る F1ドライバージャッキーイクス駆るPorshe935。(このあと3.5CSLはドライブシャフトのトラブルでリタイヤ。優勝はPorshe935です。この時の3.5CSLのポールタイムは1.05.23で1984年のF1でアランプロスト(マクラーレンMP4/2)が記録したレコードタイム1.05.257よりも速いタイムだった(^_^;)
ちょっと横道に話が逸れすぎましたが、主人公ケン・アカバが1976年シーズンの世界メーカー選手権を戦って、数年のブランクがあってF1にデビューする設定で、F1のシーズンは1977年ですから設定上ここには矛盾がありますね。
さて1970年台後半のF1は毎レース様々なマシンとドライバーが優勝するエキサイティングなものでした。ティレルの6輪車あり、ロータスが名車78と79のグランドエフェクトカーでかつてないほどのダウンフォースを生み出し、それに対抗してブラバムのゴードン・マーレイが表面冷却マシンBT46や、エンジン後部に空力ファンを設置してマシン下部に真空状態を生み出しダウンフォースを得るファンカーBT46Bを出したり、1977年ミシュランがF1のタイヤをラジアルタイヤ化したとか、もう毎月何かが起こる何でもありの面白い時代でした。
デザイナーのゴードン・マーレイがなにかやらかしてくれる
大好きだったブラバムBT46 これはBT46Bファンカー
ドライバーもニキ・ラウダ、ジェームス・ハント、マリオ・アンドレッティ他、ジョン・ワトソン、ロニーピータソン、カルロス・ロイテマン、ジル・ビルニューブ、ジョディ・シェクター、ジャック・ラフィーと名ドライバー揃いです。特に1976シーズンでは9戦5勝していたニキ・ラウダがニュルブルクリンクノルドシュライフェでクラッシュ炎上、大やけどを負ったにも関わらず、一ヶ月後のモンツァで復帰、最終戦(日本)までマクラーレンのジェームス・ハントとタイトル争い(実際には雨中のレースを危険と判断し自分でリタイヤ)をした稀有のシーズンでもあります。当時F1は死亡事故も珍しくないまさに命をかけたレースだったと思います。
ニキ・ラウダ駆る、F1 フェラーリ312T2 1977
この最高に面白いF1の時代、架空のサンダーボルトエンジニアリングがF1に参戦し、ドライバーには日系英国人のケン・アカバ。どんな物語が語られるのでしょうか?
物語のエピソードは実話がベースになってるものも多く、例えばクラッシュ炎上した同僚をマシンから助けようとするエピソードは
1973年のWアメリカGPでマーチのウィリアムソンが焼死した実話から書かれています。
このマンガ、1シーズンにマシンが4回フルモデルチェンジするとかちょっとおかしなとこもありますけどそれは目をつぶるとして...そしてちょっと今からすると古すぎる話かもしれませんけど、これほど物語性のあるF1マンガは他に無く、お金が全てを決める今のF1ではなく、メカニックのアイディアと熱かったドライバーのF1時代を知るためにもぜひ読んでいただきたいマンガです。
コミックスは文庫版も絶版になっており古本で購入するしかありませんが、AmazonではKindle版など電子版が出ておりこれで読むのもオススメです。
なんかF1マンガの話なのに、導入部のBMWの話が多すぎますね(^-^;
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クルマ | 日記
Posted at
2013/08/18 15:28:40