房総半島ツーリング　epilogue

　ようやく陽が傾き始めた頃、また５人のオッサン達は

額に汗を流しつつ、長い階段を登っていました。流石

に皆、そろそろ腿が震え出し始めている事でしょう。恐

らく２～３日後には、凄まじい筋肉痛に襲われるであろ

う事は、想像に難くない。しかしこの場所は、今回私イチオシの場所であり、皆を無理やり連れ

て来た場所でもある。一人でも多くの人達に、この感動を与えたい！共有したい！　のだ。


　鬱蒼とした木々に囲まれた細長い階段が、ようやく開けてくると、そこには目にも眩しい純白の

塔がそびえ立っていた。“洲崎灯台”である。

　思えばここに来たのは今年の春先。前田敦子引退発表の翌々日だった。それからというもの、

何度となくここに訪れる事になろうとは、あの時は思ってもみなかった。３ヵ月の間に４回目。正に

堰を切ったように来るようになってしまった、そんな場所である。


　今日は休日という事も有り、観光客の足は絶える事無く、平日とは違う賑やかさに包まれてい

ました。AKBに興味の無いメンバーも、流石にココは見覚えがあるようで、少しではあるが、テン

ションが上がっていた。そんな彼らのテンションが下がる前にしなければならない事が有った。

そう、ココでのダンス撮影だ！(大爆)

　「鉄は熱いうちに打て！」

ではないが、皆が興味を持っている時にしかやり遂げられない事でもあった。と言う訳で、皆を

一列に並べて、振付のポーズをとってもらう。んが、どうしても某氏だけは、かたくなに撮影を拒

否し、“断固拒絶”と言う意思を顔に書いたまま、私達の撮影風景を見守っていた(爆)

　「ま、某氏は次回に！という事で」って、全然懲りてない(自爆)

撮影を終えたメンバー達は、一様に頬を赤らめ、何かをやり遂げた少女の様な表情となっていた。

　「そうそう、それ！　その気持ちを味わって欲しかったのだ！」

と言う訳で、同志誕生！(核爆)


　数分後、私達は灯台を後にし、次の場所へと向かった。そこは海に面した広い駐車場と、見晴

らしの良い、簡易ワインディングロードが隣接している場所だった。実はこの場所も、私が強引に

連れて来た場所だった。何故ならここで皆にCB1100と言うバイクを知ってもらいたく、ミニ試乗会

を準備していたのである。未だに皆、バリバリのスーパーマシンを乗っているが、それとは全く方

向性の違うバイクも、日本は最近造っているんだよ！　という事を、知って貰いたかったのである。

人は必ず歳を取る。そうなれば少しは考えも変わってくるのは仕方の無い事だ。私は今でも一番

好きで最強だと思うバイクは何だ？　と聞かれれば、即答でZZ-R1100(C2)！と言うのに変わりは

ないが、じゃあ今でもソレに乗るか？　と聞かれれば、

　「いや、今はCBが楽しい！」

と言ってしまう。これはトンカツに当てはめれば、今でもロースを喰うか？と聞かれれば、

　「いや、今はヒレが美味い！」

と言うのと、同じ事なのだ！決してヒレがロースに対して劣っている訳では無い。寧ろ部位で見れ

ばヒレの方が高級部位なのだ。つまり歳をとるという事は、老いるという面だけでは無く、“渋さを

帯びた進化”とも言える事象なのだ。

　と言う訳で、こんな方向性のバイクも有るんだよ！　と言わずにはいられない衝動からの試乗会

だった(苦笑)　結果はお世辞も含めてではあるが、軒並み好評だった。

　暫くはバイク談義をしていたが、私にとってこれが本日最後のバイク談義となった。何故なら、私

は一人ここで別れる事にしたからだ。怪訝そうに私を見るメンバー達だったが、私の心情に何かを

感じたらしく、了承してくれた。

　「TakAさん、beatnikさん、オータニさん、VANさん、ありがとうございました。また誘ってください！」

手を振る私に、美しいエキゾーストノートを残し、皆は去って行った。西日が美しい夕焼けに変わろ

うとする時、一気に一人ぼっちになった駐車場で、私は溜息をひとつつくと、同じく夕日を浴びて私

を待つ愛車に歩いて行った…。


　数分後、私の姿は或る工事現場の前にいた。目の前には重機によって粉砕された瓦礫がその

一面を敷き詰めていた。かつてここには青春の１ページがあった。それは淡いセピア色に変りつ

つあるが、紛れもない青春の１ページだった。“Half-moon”　そう、“会いたかった”のワンシーン

に使われた喫茶店である。

　風の便りで、Half-moonが無くなるという事を知った私は、最後に、もう一度あの景色を目に焼き

付けたかった。しかし仕事に追われ、中々訪れる事が出来ないでいた。そんな時にツーリングの

誘いが舞い込んだ。何かの縁を感じた私は、何とか仕事を片付け、そしてこの場所に来る事が

出来た。しかし、もうそこには何もなかった。思い出だけが私の胸の中で輝いている。ついにココ

に入る事無く、少女達の青春の１ページを間近に見る事が出来ないまま終わってしまった。

　あの頃とは違い、今や彼女達は国民的スターとなり、頂点で光り輝いている。しかしその原点と

なった場所の一つは、もうない。何か、AKB48の歴史にも、ようやくひと段落着いた事を象徴してい

るそれは情景だった。思わず瓦礫に向かって叫んだ！

　「さらばハーフムーン！　ありがとう！　そしてさようなら…」

ふと見上げれば、穏やかな風のざわめきと、優しい木漏れ日が私を包んでいました。そして視線

を前に戻すと、そこには、たった一輪の“ヤマユリ”が優しげに、かつてそこにあった青春の思い

出を、そっと見守っているように咲いていました…。


　大渋滞のクルマを横目に、アクアラインを通過すると、下道に降りる事無く、横浜方面から遠回

りして帰る事にした。前回は下道渋滞にハマったこともあり、今回は遠回りでも高速を使う事にし

たからだ。

　ベイブリッジを過ぎ、第三京浜に入って最寄りのICを目指していると、前方の真ん中の車線に白

いクラウンが走行していた。しばらくは左の車線を走るシルフィと並走を続けていた。最寄りのICが

すぐ近くまで来ていた事も有り、敢えて抜かずに左車線が空くのを待った。ようやくジリジリとシル

フィが遅れ、左車線にスペースが生まれた。迷う事無くウインカーを出し、左へ車線変更すると、前

方には指を鳴らし、舌打ちをしているであろう青制服を着た二人組の男の姿がその車内にあった。

　「バレバレだっつーの！」(苦笑)

私がICの出口車線に入るのを確認した官憲の覆面は、急激にスピードを上げ走り去って行った。

それを見た私は、思わず呟かずにはいられませんでした。

　「お前サン達は、習志野ナンバーのオデッセイでも捕まえてりゃいいんだよ！」（爆）

　そして数十分後、無事帰宅。

　心身共に疲れ切った私の帰還を、ワンコが嬉しげに迎えてくれました。


　　おわり



　※尚この日の模様は、愛車CB1100のフォトギャラリーにアップしてますので、どうぞご覧下さい！