行ってきました！　札幌ドーム！　後編中

　ボソボソッと呟いたその言葉に対して、俺はここぞとば

かり、黙って鞄からホークスのユニホームを取り出し、こ

れ見よがしにソレを身に着けた。当然アチコチからヤジ

が飛んできたが、こんな時球場は便利なもんで、如何せ

ん遮るものが無いから、野次った奴を全て真正面から認識出来た。なので、各個撃破して行く…。

　「おーい！　ソコのお前！　チョット来い！」

とぼけさせないように一人一人指を指して特定し、臨戦態勢に入った(苦笑)

　「お前だよお前！　いま白い服の女の後ろに隠れたお前だよ！」

しかし、集団心理の中で野次を飛ばす奴は、結局珍走団(暴走族)の連中と一緒で、一人じゃビビリ

の何も出来ないモヤシ野郎だった。誰一人として私に向かって来る奴はいなかった。いや、たった

一人向かって来た奴がいた。

　「テメェ！　うるせーぞ！」

前の席にいるオッサンだ。が、これは実は予想していた事で、私も実際はこのオッサンに向かって

挑発をしていたようなものでもあった。

　「何だと！“へなちょこクソジジィ”の分際で、偉そうに“日本語”話すんじゃねえ！」

私の大好きな、“相手を物凄く怒らせる本格的な挑発” を開始した(爆)

　「ナニィー！この野郎！！」

いかにも「腕っぷしには自信がある！」という風情のオッサンが振り向きざまに立ちあがり、その

自慢の体躯を私に誇示しながら戦闘態勢に入った。私もオッサンの眼を睨みながら立ち上がった。

当たり前だが、後ろの席に居る私の方が、一つ上の段に居るので背が高くなるのは必然だが、し

かし悲しいかな、さらにこのオッサンは、其の筋肉質な体型の割には、かなりのチビだった(苦笑)

何せ椅子に乗って立ち上がったにもかかわらず、私のヘソのチョット上辺りにオッサンの顔が辛う

じて届いていた位だったからだ。完全に私の影に隠れたオッサンの禿げ頭を、私は真上から悠々

と見下ろしていた(爆)　前腕筋や僧帽筋を揉みながら臨戦態勢だったオッサンは、目の前に立ち

塞がる“壁”を恐る恐る見上げて来た。その先にある天頂付近には、満面の笑みを浮かべ、しかし

目は鬼の様になっていたであろう私の顔があった。オッサンは威嚇じみたその動きをピタッと止め

た。それを見た私は反撃に出る事にした。ユニフォームを脱ぎ、上半身をＴシャツ一枚にすると、Ｂ

カップはある大胸筋をピックン ピックンさせるという、地味な攻撃ではあったが(大爆)　しかしそれ

だけで効果覿面だった！　オッサンは私からそーっと視線を外し、更にスローモーションで自分の

席に戻って行った(爆)

　それは傍から見れば野生動物の戦いにも似ていたであろう！　自分より高いポジションに居て、

更に自分より体の大きい動物の方が確実に強い！　という事をお互い知っている様なソレは動き

だったからだ(苦笑)

　その後しばらくは、弁当の中に入っていた醤油の残りを、そのオッサンの頭から垂らしたり、エビ

フライを手づかみで食べて油で汚れた指を、オッサンの服の肩口で拭き取ってやったり等の軽い

イヤガラセを堪能した後、やはり窮屈なこの席が耐えられなくなり、席を移動する事にした…。私が

ガバッと立ち上がると、前後左右の客達も、皆ビクッと反応していたが、それに対しては気づかない

フリをして自分の席を後にした。目指すは外野席に近い内野自由席エリアだった。そこだけは何故

かポッカリと席が空いており、伸び伸び観戦が出来そうだったからである。私が立ち去る事を察知

した連中は、ホッと安堵の溜息を洩らしていた(苦笑)　但し、ホークスを応援していた母娘は、私が

移動する時に優しく目礼をしてくれた。私も優しい笑顔となって目礼を返した…。


　自由席に座る前に、一度フードコートに寄って再度弁当を購入した。そして自由席エリアに来て、

取り敢えず空いている席群の真ん中に腰を下ろし、じっくりと観戦体制に入った。少し離れた所に

もファイターズファンのカップルがいたが、今度は距離も有った為か、お互いが干渉する事は無

かった…。


　グラウンドでは両軍共決め手に欠け、一進一退の攻防が続いていた。そんなホークスにも、とう

とう決定的なチャンスが訪れ、それをしっかりモノにした！　すると、一気に緩む頬と腹のせいで、

下腹部の具合が悪くなってきた。というか急激にアノやばい感覚が脊髄を駆け上がって来る！

　「イカンイカン！ホークスも2点リードした事だし、ここは俺もチョット捻り出して来よう！」

と、急いでトイレに向かった。


　　つづく

※尚この模様は、フィットフォトギャラリー内、“札幌ドーム②と③”　を参照してください！(笑)