※前回の ≪まゆ編≫ は↓からご覧下さい。
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「アンタ、支那人か? なら尚更だ、奴らには勝てねえ・・・」
私がアボリジニーの過酷な歴史に文句を言う気は更々無いが、
しかしどうしても言い返したい事もあった。それは民族の誇りと魂の在り方についてだ。勿論ただ
闇雲に反撃しても、それは単なる玉砕の域を超えないであろう。実際世界中に居たであろう“誇り
高き民族”が、恐らくこの思いを胸に秘め戦いを挑み、そして近代兵器を要する欧米人に敗れ侵略
されていたであろうから。
しかし、本気で侵略者に勝とうとするならば絶対に支配されないという気迫を持ち続けるだけで
なく、まずは相手の実力を知り、自分の実力を知り、其の上で相手のウィークポイントを見つけて、
ソコを畳み掛けるハードウェアとソフトウェアを研究開発し、そして実戦になったら最低でも一人は
道連れにしてやる!くらいの気概があれば、少なくとも一方的な非占領民の地位に貶められる事
等無かった筈である。ま、それが出来た民族は歴史上数える程しか居ないのも事実なのだが・・・。
負け犬根性丸出しの彼の言葉を愛憎半ばの想いで聞いていたのだが、どうしても一言だけ言って
おきたかった。それは、我々はその白豪主義の≪島流しの刑となったアングロサクソンの末裔≫に
勝ったという事を!
いろんな意見はあるとは思うが、歴史上日本に勝った国は世界でアメリカ1ヶ国しかないのだ!
連合国とはいってもそれは名ばかりであり、支那とロシアは言うに及ばず、英国とその連邦国で
ある豪州を含め、オランダ・フランスといった欧州列強の全てが日本に負けているのだ!しかも
ボコボコに・・・。
実際豪州本土にも第二次世界大戦時の大日本帝国海軍が、実に97回もの空襲を行っておりその
全てを成功させているのだ! その間失われた日本側の損害は戦闘機4機だけであり、更に連合
国側が豪州に支援を行おうにも、宗主国であるイギリスは、その旗艦たるプリンスオブウェールズを
撃沈されたばかりか、インド洋と南太平洋の制海権を有していた大日本帝国軍により物資すら送る
事が出来ず、また東南アジアを支配していた他の欧州列強も米国を含め全て日本軍により排除され
ていたのだからその強さ言うまでも無かろう。勿論その後、フィリピンを追い出されたマッカーサー
率いる連合国(米太平洋軍)の大反撃が始まるのだが、それらも連合国軍とは名ばかりの“米国の
海兵隊”だったのは皆が知る処である。しかし私にそれらの事を説明する英語力は無く、ただだん
まりと痛みに耐える事に集中した・・・
数時間後、未だ床に横たわったまま体中の鈍痛に耐えていた私だったが、それでも食欲が消える
事は無く、そんな私の気持ちを代弁する様に「ググゥゥ~~!」っと盛大に腹が鳴った。“アボ爺”が
呆れた様な表情で言った。
Even if you are so full of bruises, does mind decrease?
(私訳: お前さん、そんなに痣だらけでも腹が減るのか?)
That's normal!! Besides, a man is disgraced that it is bullied by a white pig!!
(私訳: 当り前だろうが!しかも毛唐なんざに痛めつけられるたあぁ、男がすたる!)
What did you say? Is a blade still to go even if bullied so much by guys?!!
(私訳: なんだと!? 奴らにこんなに痛めつけられてもまだ刃向うのか?)
I can certainly defeat stick of such a wooden doll, one to one!!!
(私訳: あんな木偶の棒、一対一なら絶対ェにブチのめす!!!)
・・・。 (私訳: ・・・。)
But, even a samurai (mononofu) cannot do the war on an empty stomach!!
(私訳: しかし例え“もののふ(武士)”でも、腹が減っては戦は出来ねぇんだ!!)
You, it is killed first… (私訳: お前、殺されるぞ・・・)
So what? I kill the one even at least!
(私訳: それがなんだ! 最低でも一人は道連れにしてやる!!)
Oh my… (私訳: なんてことを・・・)
Anyway… (私訳: 兎に角だ・・・)
Anyway? (私訳: 兎に角?)
I’m hungry… (私訳: 腹が、減った・・・)
どれくらい時間がたったのだろう、小さな窓枠から淡い光が差し込んで来た。それは間違いなく
夜が終わり朝が来たという事だ。私はアチコチの鈍痛に耐えながら、むっくりと身体を起こし、ホッと
一息ついた。“アボ爺”は片目を開けてそんな私を見ていた。
It is like the waking? Sumo wres…Muscle man
(私訳: お目覚めの様だな、力…士…マッチョマン)
Does the meal have not yet come? (私訳: 飯はまだか?)
Do not be upset and come soon (私訳: 慌てるな、もうじき来る)
と言葉を交わしていると、扉の向こうから台車がの様なモノが来る音がした。その音が留置室の前で
停まると、扉の下部の蓋が空き、トレーに乗った朝食二つ、ぶっきら棒に入れられた。
Time for meal!! (私訳: 飯の時間だ!)
そう言うと台車の音は次の部屋へと移って行った・・・。
目の前には給食の様なステンレスのトレーの上に、これまた小さなアルマイトの様な御椀が二つと
牛乳パックが乗っていた。御椀には薄い肉の切れ端が浮かび、色んな野菜が粉々になったスープ
と、もう一つの御椀にはフランスパンの様な、しかし小さいコッペパンが入っていた。決して良い匂い
はしなかったが取り敢えずスープを一口啜った。味は文字通りクズ野菜とクズ肉の切れ端が入った
味だった。つまり殆ど味付けもしていない感じであり、まあ死なない程度の栄養分だけは確保してい
ると言った官憲側の“意志”を感じた。所謂“臭い飯”だが、日本の誇張されたソレとは違い、文字通
り本当に臭い飯だった。次にコッペパンに手を伸ばし、その余りの硬さにびっくりしたが、負けるもん
かとまずは真っ二つに≪折った≫。すると只のパンだと思っていたが、よく見るとこれでもかというく
らい内側に、薄――く、ストロベリージャムが塗ってあった。非常ーにケチ臭いが、この時の私は、寧
ろ職人芸ともいえるこの薄くジャムを塗る技術に感心していた。この技術の方が高く付くのではない
かと思った位だった。まあ兎に角、今はエネルギー補給が最優先であり、黙々と胃の腑へ臭い飯を
叩き込んだ。しかし“アボ爺”を見ると、パック牛乳にしか口を付けていない。何で他のモノは食べな
いんだと聞くと、ジロリと私を見据え、
Do you know what is in this? (私訳: お前さん、これに何が入っているか知らんだろう?)
と言って来たが、寧ろその言葉だけで大体予想が付いた。要するに碌なモノが入っていないという
事なのだろうがそれは承知の上なので、その解答は聞かない事にし、今は毒さえ入っていなけれ
ば、それらは基本私にとって血となり肉となるモノなので、無理にでも口に黙々と詰め込む事に
集中した。何度も言うが、腹が減っては戦さが出来ないのだ・・・。
食後のマッタリ感が室内を飽和していた。床には空になった二つのトレーが並んでいた。
ジワジワと身体の奥底からパワーが漲って来た。そんな私の表情を、“アボ爺”は目を細めて
見ていた。
すると案外早く、“その時”がやって来た・・・。
つづく!