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2022年01月23日

なんだかなぁ・・・ “私とハンズのエトセトラ” 中篇中

なんだかなぁ・・・ “私とハンズのエトセトラ” 中篇中
 「僕は其処で途方に暮れた・・・」

 まるで昔の某JPOPのタイトルの様な情景を本当に経験した。

其処は渋谷の公園通りに面した或る専門店の店内だった・・・。


 何とかバレエダンスには少し目途が付いた所で、しかしもう

一つの重要な案件が私を悩ませていた。そう、プリマドンナの

衣装 “チュチュ” である・・・。


 周りの社員達は次々と衣装のデザインや生地の注文や縫製や着付け等に突入していたが、私は

難易度が高いダンスに苦戦していた事も有り、衣装については後回しにせざるを得ない状況だった。

しかし忘年会の日まで2週間を切った今、恐らく特注せねばならぬ衣装のタイムリミットは、もう

すぐそこまで迫っていたので、いつまでも後回しにする事は出来なかった。私は重い腰を上げざる

を得なかった・・・。


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 その週の週末、私の巨体は渋谷のお洒落な公園通りに在った。バレエの師匠たる女子社員や、

その他バレエ経験者の知人等に、バレエの衣装は何処で手に入れる事が出来るのかと聞くと皆が

皆同じ店の名前を口にした。と言うよりそもそもバレエの衣装と言うとても一般人には縁の無い

ジャンルの店がそうそう有る訳でも無く、当然と言うか限定されるのは当然の事であった。其の

店は正に希少な“バレエ専門店”であり其れは渋谷に在った。私は意を決して“Chacott”(チャコット)

のドアを開けた・・・。
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 店内は眩いばかりの華やかさに満ち溢れていた。何処を見ても白を基調とした美しい衣装や

装飾品のオンパレードであり、またそこに佇むハウスマヌカン・・・い、いや店員・・・と言うか専門

スタッフの上品な佇まいと柔らかな微笑みが私に向けられていた。流石バレエ専門店のスタッフ

らしく服装も上品でありスタイルも良く、また姿勢が良いのがスグに判った。そんな御出迎えで

はあったが、逆に一目で自分が場違いな場所に居る事を否応なく突きつけられた残酷な情景でも

あった。実際この優しい微笑みを向けられる前に、実は私が店内に入った瞬間、此の上品な女性

スタッフ達はワタクシを一瞬ではあるが、お花畑を荒しに来た猪か熊を見る様な思いが、ほんの

ちょっとではあるが眉間に皺を寄せるという表情に現れたいたのだ。まあ仕方のない事であろう・・・。

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 私が≪ひやかし≫ではなく、バレエの衣装と、コレは必需品と必ず手に入れねばならない “トゥ

シューズ”を本気で購入する為に来た事を把握したスタッフ達は、これまたホッと安堵する様に肩を

僅かに落とすと、今度は堰を切った様に好奇心丸出しの表情で私を取り囲んだ。

「お客様はどういった経緯で購入を御検討で?い、いえ失礼でなければその理由をお聞きしたく…」

彼女達の疑問は当然であろう。バレエとは真逆の存在たる羆が思いつめた表情で其の最も似つか

わしくない場所で最も似つかわしくない衣装を購入しようというのだから、それは理由を聞きたく

なるのは仕方の無い事である。私は思い切ってコレまでの経緯を話す事にした。しかしその反応は

あまり芳しいモノでは無かった。たかが忘年会の余興として、しかも男性がプリマドンナ等と言う、

まるでバレエを冒涜する行為と彼女達が感じたのはこれまた致し方の無い事であったから、私は大

きな体をこれでもかと小さくさせてただひたすら恐縮していた。が、どうしても“トゥシューズ”だけは

手に入れなければならないし、そしてそれは≪普通の靴屋≫では決して手に入れる事が出来ない

代物だった為である。

 トウシューズは当然だが男性用も豊富に有った。プリマドンナは兎も角、バレエダンサーには

男性も大勢居るからだ。と言う訳で渋々と言う感じで店の奥から私のサイズに合うトゥシューズ

を何足か持って来た。其れを一目見た私は一気に不安に感じた。それほど頑丈に作られている様

には見えなかったからである。当時の私の体重は当然の様に3桁であり、流石に長身を誇る西洋の

男性ダンサー達ですら体重に関しては私を上回る者は皆無であったろうから・・・。

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 「失礼ですがお客様はバレエの経験は御有りで?」

遠慮がちにではあるが、京都人が≪ぶぶ漬け≫を出す意味の様に、そろそろお引き取り願いたい

という意志をヒシヒシと感じたが、これだけは引く訳もいかず、

 「えーっと、・・・半月程・・・」

と、取り敢えず食い下がったが、やはり反応は良くなかった。

 「それではお客様、怪我をしてしまうかもしれませんのでもう少し練習されてからにしては

どうでしょう?」

私は、ココは正念場だと腹を括った。

 「取り敢えず、これ等のトウシューズは試履する事は出来ますでしょうか? それで決めたいと

思いますので・・・」

女性スタッフ達はお互い視線を交差させ、一番上品な年長のスタッフが一つ咳をすると、

 「では失礼ですが、4番からフェッテをやって頂けますでしょうか?」

とまるで試験官の様な口調で私を促した。恐らくそう来るであろう事は予測出来ていたので、

私は一つ頷くと、

 「では、お粗末ながら・・・」

私はトウシューズをさも履き慣れた様に装着し、そして店内の中心にある広いスペースに向かった。

実は私は空手をやっていた事も有り足の指先も鍛えていた。それは裸足でも≪トウ立ち≫が出来る

位のものだったので、トウシューズは寧ろ有り難い存在とも言えたくらい足にフィットした。

 店内の真ん中に立つと、目を瞑り大きく深呼吸をし、集中力を高めた。そして数秒の沈黙の後、

目をカッと見開き4番のポーズから思いっきり床を蹴りフェッテ(スピン)に入った! 最初の蹴り

出しが上手く行き、それが巨体の慣性力に文字通り拍車をかけ、自分でも惚れ惚れするほど強烈

なスピンとなりそしてそれは16連続回転まで続いた!突如店内の真ん中で、まるで≪シーリング

ファン≫が回っている様な風圧が沸き起こった!恐らくこの女性スタッフ達が経験した事が無い

そのダイナミックな≪ミニ台風の目≫に皆の視線が蔑みから憧憬に変っていく様は安堵と共に

自信へと繋がった貴重なひと時となった・・・。
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 それからは率先して私により合うシューズの選定に親身に対応してくれるスタッフ達の姿があった。

私は土壇場を乗り越えた事に安堵すると共に、しかしもう一つの肝心な事に思考を切り換えていた。

そう、衣装の方である!

 流石に専門店とは言え、いや、専門店だからこそ、男性用のプリマドンナの衣装など置いてある

筈も無かった。しょんぼりする私を流石に可哀相だと思ったか、今度は若い女性店員が私に近づき

こう言った。

 「“オーダーメイド”ならばチュチュをお作りする事も可能ですが・・・」

 「それだといつごろ仕上がるのでしょうか? あと・・・値段の方は・・・」

 「そうですね・・・ひと月程・・くらいでしょうか、あと大体ですが・・・○○万円位かと・・・」

 その回答が意味する事は、その納期では間に合わず、更に値段に至っては、当時の私の給与の

一月半分と言う背筋も凍る冷たい現実であった。

 私は思わず天を仰いだ。そんな私を女性店員達が慰める様に取り囲み何か話しかけていたが、

ただ時は虚しく過ぎて行くだけだった。

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   「そして僕は途方に暮れた・・・」


   つづく!
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Posted at 2022/01/26 04:53:55

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