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2013年11月02日 イイね!

人生徒然草  隔世の感に包まれて・・・ 小中学生編⑨

人生徒然草  隔世の感に包まれて・・・ 小中学生編⑨※前回のあらすじ→https://minkara.carview.co.jp/userid/336753/blog/31444871/

 日曜の朝。小学生にとっては、まだ貴重な睡眠時間の範疇で

あったが、私の眠気は一気に醒めた。

 「な、なんだよ」

当たり前であるが、一対一で女の子を前にするという事について、

当時の私には、まだ余裕は無かった。ついつい、ぶっきら棒な口調

で話しかける。

 「…立派なお家ね」

佳子は繁々と家屋を見回し、決して私と目を合わそうとはしなかった。私は動揺を隠そうと、また

イライラが募り始めたが、ココは黙って佳子の次の言葉を待った。しばらくは、お互い意識をしな

がらも、決して声を発しようとはしなかった。小鳥の囀りや、遠くの方で、車の音が聞こえた。それ

以外はまるで空気が固まっている様に動きは無かった。このまま永遠にこの状態が続くのかと

危惧し始めた時、この静寂は、しかし長続きしなかった。

 「ナーニいつまでそこに突っ立っているの! 家に入るか外に行くかどっちなの?!」

家の中から怒号に近い(と感じた)声が玄関に轟いた。母だった(苦笑) しかしその声質とは裏腹

に、顔は相変わらずニヤついている。私にとっては逆にその表情がきっかけとなった。

 「チョット、公園に行こう!」

 「?!」

私は返事を待つまでも無く、ムンズ! と佳子の手を引き、近くの公園へと連れて行った。

 「ヒューヒュー!」

と後方から囃し立てる下衆の嘲笑を振り切るように、速足でこの場から立ち去った…。

 数分後、公園に着くやいなや、私は佳子の手を振り解いて対峙した。今度はしっかりと彼女の

眼を見据えていた。佳子はモジモジしながら、ゆっくりと顔を上げた。そして私と目が合った瞬間、

また慌てて俯いてしまった。

 「なんだよ!」

佳子の煮え切らない態度に、私のイライラは頂点に達しようとしていた。

 「何にもないなら、俺、帰るぞ!」

そう言って踵を返そうとした時、

 「待って!」

と佳子が叫んだ。サラサラと木々の小枝がたなびいていた。公園にはまだ人影はまばらだった。

二人は滑り台の下で向き合った。

 「だから、なんだよ!」

口を尖がらかせながら、少し強めの口調で言った。

 「あの…、あのね…」

 「なに!」

 「ウチの…、ウチのお兄ちゃん…」

 「……」

 「何か…、物凄く、怒っているみたい…なの」

私はその言葉に激しく反応した。

 「そりゃそうだろう! 自分の妹が皆の前で、“フルマン” にされたんだからな!」

思わず怒鳴ったが、本心は一刻も早く家に帰りたかった。私は再度踵を返した。

 「ち、違うの! 待って!!」

佳子は信じられない力で私の手を掴み、強引に引き戻した。

 「わ、私は、お兄ちゃんに何も言ってないわ!」

 「何を白々しい!」

 「ほ、本当よ! 私は何も言ってないの!」

胸の前で握りしめられている両の拳がブルブル震えている。

 「じゃあ、なんで俺んち来たんだよ!」

 「……」

 「ほら! 結局俺に宣戦布告しに来たんだろ!」

すると佳子はこれでもかと頭を振った!

 「違う!ちがうの!」

 「何が違うんだよ!」

 「ちゃ、ちゃんと、私の話を聞いて!」

必死に懇願する佳子の表情に圧倒された私は、しばし彼女の話を聞く事にした…。

 犬を散歩させる人の数が増えて来た頃、二人は並んでベンチに腰を下ろしていた。佳子は

正面を見据えながら、私は“考える人”の様に両肘を膝に立てかけ地面を見ていた。私は頭の

中で考えを整理していた。彼女の話を要約するとこうだった。


 ・お兄ちゃん(ガキ大将)は、本当は群れるのが嫌いという事

 ・お兄ちゃん(ガキ大将)は、学校内はおろか、この地区全体でも一番足が速いという事

 ・お兄ちゃん(ガキ大将)は、喧嘩も学校で一番強いという事

 ・お兄ちゃん(ガキ大将)は、勉強は余り出来ないという事

 ・手下達は、お兄ちゃん(ガキ大将)の命令が無ければ何もしないという事

 ・お兄ちゃん(ガキ大将)は、私の言う事は聞かない事


等だが、どれも私の想定内の事ばかりで、やはりイライラが増していた。

そう、次の項目を聞くまでは…。


 数分後、私は苦悶していた。文字通り苦悶していたのである! 初めての苦悶と言っても

過言では無いだろう。何故なら佳子が発した言葉、

 ・お兄ちゃん(ガキ大将)は、コン君のお姉さんが好きだという事

を耳にした瞬間から…。


 佳子は淡々と話していたが、全てを語った後、突然私に振り返り、またあの圧倒的な懇願

顔で言った。

 「今度は、お兄ちゃんは間違いなく、本気でコン君と闘うわ! 本気で怒ったお兄ちゃんは

             本当に恐ろしい! だから…、だから、明日は学校を休んで! お願い!」

女子に懇願されるのは決して嫌な気分では無かったが、私は逆に最初の項目に勝機を見出

していた。

 「一対一なら勝てる」 と…。

 ようやく考えがまとまり、じっくり作戦を立てようと居てもたってもいられず、スックと立ち上がり、

急いで帰宅しようとした。しかしその直後、私は、まだ最後の項目が残っていたのを思い知る事

になる…。

 「ま、待って!!」

佳子は、また信じられない力で私の手を掴み、強引に振り返らせた。

 「もういいだろ!」

 「まだよっ!!」

強引に振り払おうとした私は、しかし次の瞬間頭の中が真っ白になっていた。初めて経験する

違和感。しかしどう対処していいのか分からない行動。それは……。

 佳子が勢いよく私に抱き付いて来たのである。

 そして硬直する私の耳元で佳子は、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で、

 「コン君が…好き…」

と言った・・・。


  つづく
Posted at 2013/11/02 07:17:56 | コメント(2) | トラックバック(0) | 私小説 | その他

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