しんげん神奈川のブログ一覧

　曇り空にも拘らず、目に眩しい純白の4Cが、店舗の

片隅にひっそりと佇んでいた。正式名は“マドレペルラ

ホワイト” と言うらしい綺麗な白色だった…。


　と言う訳で、まずは外観をじっくりと舐めまわすように見始めると。

　因みに4Cであるが、エクステリアに変化は無いが、マイナーチェンジを敢行した2016年モデル

からは、蛆虫の様な複数のLEDポジションライトが廃止され、其々2灯のスッキリとしたデザイン

になっている…。

　このクルマには後席が無いので、早速とばかりに運転席のドアを開けた。相変わらず “広大”

なサイドシルである。乗り降りにはかなり体力を使うであろうが、プチが付くとは言えスーパーカー

にはコレ位の非日常は常識である。と言うより真面目なスーパーカーなど、本当のスーパーカー

では無い！　故に私は、アウディR8や、ポルシェターボは、スーパーカーでは無いと思っている。

　と、話が逸れたが早速身体を“くの字”にする事によって排出される“唸り声”を上げながら運転

席に腰を降ろした…。


　今だから言うが、実は今迄に4台程、この4Cに試乗して来た。その内訳は、左右ハンドル2台ず

つと言うバランスのとれた試乗となったのだが、やはり右ハンドルに関しては、昔ほどでは無いが、

コックピットのシャシーが先に行くつれに絞り込まれた形状の為、どうしてもペダル類は左側にオフ

セットされてしまう。ガンガン攻めている時には気にならないが、渋滞にハマッた時や市街地等での

信号によるストップ・アンド・ゴーの走行になると、途端に右足首の少し不自然な姿勢に、ストレスに

似た煩わしさが気になって来るのだ。　まあその点は滅多に乗らない非日常車なので、許容範囲で

はあったのだが…。



　しかし、その試乗した全ての4Cに共通して、どうしても我慢出来無い事が有ったのも言及せねば

なかろう。それは・・・“エアコン”である！

　真夏に試乗した事もあるだろうが、その4台中3台のクルマのエアコンが、全く効いていない状態と

なっていた。それは走り出しても殆ど変わる事無く、僅か5分程度の試乗にも拘らず、私は脱水症状

に恐怖する事になったのだ！

　当たり前だが、この日本の夏場に於いて、エアコンはマストである！

　エアコンが無い状態で都心の渋滞にハマれば、冗談抜きで死んでしまう事もあるからだ！

　故に、泣く泣く4Cを諦めたという経緯があったのだが、せめての救いは、それらのクルマはいずれ

も、“初期型”だったので、よくある初期トラブルの一つかもしれないという事だった。

　と言う訳で、同じ年式ではあるが、後期モデルとなるこのクルマを見に来た訳である…。


　「当たり前だが、エアコンは、“エンジン” を、かけねば判らない」

勿論、試乗をするのに越した事は無いが、このクルマの試乗はもう何度もしているので、ココはエア

コンの状態だけを見たかったので、エンジンさえかければ済む事だった。

　勿論全くの新車であれば、それは出来ない注文であろうが、このクルマにはシッカリとナンバーが

付いており、それはつまり車検が残っているユーズドカーであるという事だ。私は“赤耳のヒョロ夫”

に、エンジンを掛けたい旨を告げた。

　「それは出来ません！」

にべも無く断られた。まあ、店にも色々事情があるのだと思い、特に不満は無かったのだが、何の

気なしにその理由を聞いてみたら、驚愕の返答が“赤耳のヒョロ夫”の口から吐いて出た。

　「コレは直噴エンジンなので、アイドリングはエンジンを痛めます！」

であった！

　その摩訶不思議な言葉で私の心は、ふと四半世紀前に遡った…。


　当時、愛知県の山奥に住んでいた私は、これまた当時の愛車である、スターレットGTのサイドブ

レーキの引き代の大きさが気になっていた。しっかりクルマを固定するまでサイドを引くと、レバー

が真上を向いてしまう程、ケーブルが弛んでいたのだ。故に、オイル交換をするついでにサイドの

引き代も調整して貰おうと、近くのトヨタディーラーへと向かったのだが…。


　オイル交換が済み、続けてサイドブレーキの調整を頼もうと、丁度近くをフラフラ歩いていた営業

スタッフに声をかけた。

　「あの～、サイドの引き代がかなり余っているので、調整して貰えますでしょうか？」

するとこのデブな営業マンは胡散臭げな顔を私に向け、

　「コレは4輪ディスクブレーキだから、そんな事する必要は無いです！」

と言って、無愛想な表情のままスタスタと歩いて行ってしまった。

　「・・・は？」

　この時の、相手が何を言っているのか判らなかった状態を思い出したのだ…。


　当たり前だが、サイドブレーキのケーブルの “引き代” と、四輪ディスクブレーキかどうか等、全く

関係が無い！！

　故に単なる面倒臭くてやりたくない理由付けとして、この “支離滅裂” な暴言を吐いたのだと断言

せざるを得なかった。

　因みにこのデブは、この付近一帯の販売店の社長のバカ息子だという事が後に判明した。

　それから数年後、ふとこの店の前を通る事が有ったのだが、ト〇タ系には珍しく、販売店は跡形も

無くなっていた。コレも後から聞いた話だが、社長が急死し、当然の様に、あのバカデブがその座に

座ってから5年以内に販売店グループは縮小したとの事だった…。


　その光景が頭の中を一回りすると、私の思考は現実に戻り、そして、スパークした！

　私は、“赤耳のヒョロ夫” の眼を見据え、静かに問い質した…。


　　　つづく！