
正に一触即発とも言える、瘴気に満ちた宴会場と
なったが、流石 “一流の大人達” の集まりである!
その時、或る人物が機転を利かしたのだ!
「ま、ま、ココは一旦ビンゴゲームを中断して、カラオケ大会と行きましょうや!」
皆の視線が、私の隣の席の、“〇ッコロ♪”氏に集中した! “〇ッコロ♪”氏は皆の熱い視線を受
け止めながら、しかし淡々とカラオケ機器に向かうと、まるで第〇興商の営業マンの様な手慣れた
手付で、黙々とカラオケのセッティングを進めた…。
突然宴会場に大音量の、しかし華やかな音楽が鳴り響いた!
「皆様、日々のお仕事お疲れ様です!ココは拙者の
歌声なんぞで、いっとき心をお休ませ下され…」
そして、彼の独演会が始まった…。
それは、酸いも甘いも噛み分け、マイクを握る小指をピンと立て、情感たっぷりに歌い上げるその
美声とビブラートは、皆の心を震わせるに十分な“演歌”ならぬ“艶歌”と言える感動のエンターテイ
メントと化した。私はポカンと口を開けていた。そしてその瞳がみるみる見開かれて行った。
「今、俺の前に、“大〇栄策” が居る…。」
自然と私の腕が辺りを弄り、サインを貰う為の色紙が無いか辺りを探していた!
ついさっきまで、マメにお酌をしてくれる、影は薄いが優しいオッサンだとしか思っていなかった
“〇ッコロ♪”氏が、みるみる私の中で憧憬の対象へと昇華して行った…。
皆が涙ぐむ中、歌い終えた氏はそっとマイクを床に置いた。
今ココに居る世代の男共なら、一度は味わった悲しく酸っぱい想い出。そう、山口百恵やキャン
ディーズの最後のシーンと同じパフォーマンスで締めくくると言う、憎い演出も加味され、場はあっと
いう間に健全で華やかな宴席へと舞い戻った。
そしてコレがきっかけとなり、あっと言う間に場はカラオケ大会へと、その様相を大きく変えた…。
その後、ビンゴゲームも再開され、今度はオジキ殿をキレさせる事も無く、無事最後まで行う事が
出来た。
全員に賞品が往き渡るのを見たオジキ殿は、しかしまたバカ話を再開させるべく、全身にパワー
を漲らせていた。スグに爆笑の渦が巻き起こる…。
と、その時、私の携帯が鳴った。着信音は“六本木〜GIROPPON〜”だった!この着信音に設定
している人物は3名しかおらず、ウチ1名は現在海外に赴任中であり、もう1名は現在塀の中に生息
している。 という事は、残る一人しか該当者は居なかった!
「え? も、もしかして…」
慌てて携帯を開き通話ボタンを押した!
「うふふ……ウフフフ……うふふふふ……ア…タ…シ! 誰か判るかなぁ~」
何とも言えない妖艶な声が携帯から漏れ聞こえて来た。スグにこれでもかと携帯を耳に擦り付ける
様にしてその声を確認しようと試みた。途端に甘い囁きが私の耳朶を震わせる。
例えるならその声は、“高島礼子”と、“太地喜和子”と、“梓みちよ”を足して3で割った様な、まるで
愛の権化たる、アガペーの再来とも思われた!
そう今や、みんカラで3本の指に入ると言われる超人気女性ブロガーとなった “セイラ女史” からの
着信音であった!
「今、何してるの?」
「今は…オッサン達と、疑似行為見ながら酒飲んで
刺身喰ってビンゴゲームして大川栄作聴いてる!」
「・・・・・・。」
チョット言葉が足らない事に思い至った私は、逆に質問した。
「というか、姐さん、どうしたの?」
「ウフフ……と・ど・い・た・わ・よ!」
「あ、そうか! この前札幌に行ったから…、少ないけど、お裾分けだよ」
新年会に来る前、札幌出張で行った空港で大量に購入したお土産の一部を御裾分けとして送って
いたのだ。
「ウフフ…とっても嬉しかったわ! ウフフ…ダーリンと口移しで
“マッタリ”、“ねっとり” と、頂いたわよよよんんん~!」
と、ノロケ声が向こうから聞えて来た。恐らく両名はそれぞれ≪エプロン≫と≪褌≫しか身に纏って
いないと推察された。それに対しコチラでは、再度オッサン同士による疑似行為が再開されていた。
このギャップは純真なワタクシを、何とも言えない空虚な気持ちに陥れる。と言う訳でそのノロケを
少しでも邪魔してやろうと、小さな意地悪を思いついた。
「ふっふっふっふ・・・コチラのオジサン臭も御裾分けしてあげよう!」
と考えたのだ。
と言う訳で、今また、“パクッ!”と、“カポッ!”の詳細を、自ら実演している最中のオジキ殿の元
に向かい、携帯を渡した!
「オジキ殿、セイラ女史を知ってますよね?」
「え? 嗚呼…、知っとる…けど…」
“カポッ!”っとされた瞬間の態勢で、オジキ殿が言った。
「今そのセイラ姐さんから電話が来てるのよ! オジキ殿と話したいって!」
その言葉を聞いたオジキ殿は、まるで“現場”に踏み込まれた間男の様にシドロモドロとなり、慌てて
チャックを上げると姿勢を正し、私の携帯を受け取った。
「あ、も、もしもし、Gと申しますが…ああぁ! セイラさん!!…」
先程まで酔っ払いのリーダーに君臨していたオジキ殿が、いきなりシラフに戻った様に滑舌良く話し
出した。心なしか声のトーンも低目となり、少しでも良い声を出そうとモガイテいる様だった…。
話はかなり弾んでいる様で、廊下の奥から笑い声が聞えて来た。その間、宴会メンバーも落ち着き
を取戻し、バカ話の数は激減しつつあった。
「はいはい! じゃあ、しんげんさんに代わるね!」
と言って携帯を渡されると、いつか姐さん&ダーリンとのオフ会を設けるとの約束し、お互い御機嫌
なまま通話を終えた。その切ボタンを押した傍から、オジキ殿が駆け寄り、
「セイラさんの声って、エロッペー! エロッペー・・・ エロッペ~~ですな~!」
と、鼻の穴をこれでもかと広げ、鼻の下をこれでもかと伸ばし、“エロッペー”を3回言った。
当初の思惑とはかけ離れてしまったが、みん友氏同士が友好を深める光景は、コチラとしても嬉し
い光景だった…。
それから暫く後、オジキ殿が姿勢を正し、この楽しい宴会の終焉を告げると、皆が円陣を組む様に
立ち上がり、オジキ殿の1本締めにより、永遠に続いて欲しいと感じていた夢の時間の幕を引いた。
皆の顔は“満足”という文字で埋め尽くされていた。
しかしこれは、あくまで宴会場での新年会の終了を告げただけで、この日の終わりを告げたモノ
では勿論無かった…。
つづく!
※ 尚、この日の模様は、愛車紹介フィット フォトギャラリーの
→
“ココ”にアップしておりますので、どうぞ御覧下さい!(笑)
でわでわ!