うーむ、買ってしまった⑤　― 幕間狂言 ―　後篇

　「こちらでも御取扱い出来ますので、どうぞご用件を！」

態度は慇懃ではあったが、無礼でもあった(苦笑)

　「じゃあ、コレお願いします」

と、ゲーム機器コーナーの棚から持ってきた3DS LLの見本

空箱を店員に渡すと、サッと奪い取るように空箱を奥の棚に

持って行った。そしてしばらくして…

　「商品はこちらになります」

と言って、3DSを持ってきた。

　「へ？　コレLL？」

　「いいえ！　これは普通の3DSです！」

何故か店員は自信満々の笑みを浮かべていた。一発顔面にチョーパンをブチ込んでやろうと

思ったが、レジ台がそれを阻んだ。私は無言で、先程渡した見本箱を指差した。店員の視線が

私の指先に落ちると同時に、顔に3つの〇を作って仰け反った。

　「し、しししし、失礼すました！」

店員は床に山積みになっていた、明日発売のドラクエⅦのハードケースを蹴とばしながら、また

奥の棚へと走って行った。

　その時、バトンタッチするが如く、最初のチビ店員がようやく精算が終わった事を告げて来た。

なので今、別の店員にコレを探してもらっている事を伝えると、身内の応援には素早く対応した。

その間、手持無沙汰になった私は、特設されていたドラクエコーナーに向かい、ソコの棚に展示

してある、見本のドラクエ空箱を見ていた。

　「コノ空箱は、いったいなんだろう？」

疑問が頭の中をよぎった。周りにそれを説明するモノは一切無く、ただ値札が貼っていた。しかし

発売日は明日の筈。訝しく思ったので、その箱を持ってレジに戻った。

　「コレ何？」

空箱を手に取った店員は、しばらくその箱を凝視していたが、おもむろに言い出した。

　「多分…。あ！　予約用のケースです…ね」

私は畳み掛けた。

　「コレ、予約しないと、直ぐに手に入らないの？」

　「いえ、一応、当日販売分も有りますので、予約しなければならないという事は有りませんが…」

店員の語尾が濁った。

　「凄い人気で、客が殺到でもするの？」

　「そこまでは無いと思いますが、確かに大勢のお客様のご来店が予想されていますので…」

　「要するに、予約した方が良いって事ね？」

　「はい、その方が良いかと思われます…」

最後まで歯にモノが詰まったような口調で、イラッとしたが、大きな屁をかます事で、その場は

乗り切った(苦爆)

　「じゃあ、予約する」

　「ありがとうございます。ではこちらに氏名と連絡先を御記入下さい」

といって、注文書を差し出して来た。そして所定の箇所に書き込んで店員に渡す。と、店員は

慣れた手つきで、その複写式になっている注文書をペラペラとはがし、その中の1枚を私に渡

してきた。渡された伝票を見て、私は努めて冷静に言った。

　「俺、いつからココの店員になったの？」

何故か“業者(控)”の伝票を渡されていた(苦爆)

店員は、今度は目から光線でも発射しそうな顔になっていた。そしてまた慌ててリカバリー作業

に入った…。

　…数分後、チビ店員から商品を受け取り、もう一人の “エセ”ベテラン風店員の震える手から

ソレを受け取ると、私は黙って店を後にした…。


　…そして翌日。いつもの様に寝坊した私は、昼過ぎに量販店に向かった。既に行列が出来て

いるかなと思いながら店内に入った。

　……客は、私一人だけだった(大核爆)　やはりとは思ったが、予約した手間だけが、今頃に

なって疲労となり、カヨワイ私の肩に重く圧し掛かった。

　「さて！　早く帰ってAKBやろう！」

気持ちを切り替え、帰路に着いた。

　罪の無いAKBが、私の心を癒してくれるに違いが無かった…。


　　おわり