浅い眠りの筈だった。しかし目が覚めた時、既に2時間
が過ぎていた(自爆) 慌てて飛び起き会場へと向かった。
案の定、長い行列が出来ていた。折角2番目を確保して
いたのに、せめてヘルメットかグラブを場所取りとして置
いておけばよかったと反省するも、“時、既に遅し” である。
「くそー! しかし取り敢えず並んでいないとマズイな」
と、列の最後尾に廻った…。
殆どの参加者が、カップルかグループで来ていた。私の前には、更に年季の入ったオッサン
ライダー3人組がおり、私のすぐ後ろに並んだ若者グループは4人組であった。それそれバイク
談義に華を咲かせていた。その前後二組はバイクで来ていたようで、完全防備だった。その中
に佇む私はと言えば、もう私の正装とも言える、袢纏と上下ジャージに裸足サンダルである(苦笑)
海からは容赦なく寒風が吹いて来ていたが、今更車に戻る事も出来ず、兎に角開場時間が来
るのを辛抱強く待っていた。
すると、後ろの若者グループの一人が、武勇伝を語り始めた。
「そいでよ、俺はよ、バーッとブチ抜いた訳よ! ぎゃーはっはっはっは!!」
傍から来ても、恥ずかしくなるような眉唾モノの話である。しかしどうやら取り巻は皆イエスマン
の様で、お山の大将の口と態度は更に大きくなった。まあそれに関しては特に腹も立たなかっ
たが、そのお山の大将が寄っかかっている整列用のプラスティック・チェーンがブラブラ揺れ、
それが私の腰にビタビタ当たり始めた事にはイライラが募った。暫くは我慢していたが、一向に
大人しくなる気配は無く、やはり注意をしようと、お山の対象に向き直った。
「チョット、余りチェーンを揺らさないでくれる?あと、もう少し小さい声で話せる?」
と優しく言ったつもりだったが、彼らの耳には、
「大人しくしてろゴルァァ! ハッタリかましてんじゃねえぞ、このクソ餓鬼共が!」
と聞こえたらしい。
途端に顔を真っ赤にした、お山の大将が私に突っかかって来た。とはいっても,何故か口調は
烈しくはなかった。
「そ、そういう言い方は無いんじゃないかな!?」
といって、周りの人達に同意を求めた。……ガン無視されていた(爆) というより皆、下を向い
て黙り込んでいたので、結局私と一対一で対峙せざるを得なかった(苦笑)
「まだ何か言う事ある?」
私は、お山の大将の顔を見据え言った。
「い、いえ…ス、スイマセン…」
「じゃあ、そこどけ!」
立ちっぱなしだったので、お山の大将が寄っかかっていた場所に、代わりに私が入る事にした
のだ(笑) お山の大将は、ソソクサと場所をあけると、気まずそうな態度に変わり、取り巻の後
側へと移動した。
「よしよし」
私は満足げに占領地に入った。そしてゆっくりとチェーンに、もたれ掛った。
ペキッ! ップウーン! ズズーーンンン!
まるで紙細工の様にチェーンがブチ切れ、私の身体は地面にダイブした(自爆)
サンダルを吹っ飛ばし大地に仰向けに倒れた私の姿に、皆の肩が揺れた。私は毛恥ずかしさで
顔を赤らめながら埃を振り払い、飛んで行ったサンダルを取りに行ったが、しかし敢えて開き直っ
て辺りを睥睨した。すると周りはサッと視線を外した。そして皆、何も無かったかのようにバイク談
義を始めた。そんな状況に、実は内心ホッとしていた。誰も騒がないので、弁償せずに済みそう
だったから…(苦爆)
試乗車を選択し、チケットを貰うと、一目散にフィットに戻り、ライダーに変身した(笑)久しぶりの
ライダースタイルである。ひょっとしたら、1年以上経っていたかもしれない…。
試乗会は楽しかった。順番はかなり後ろに下がったとはいえ、全体から見れば、まだ最初のグ
ループに入っていたので、希望の車種に早い時間で乗る事が出来たのである…。
“MT-09”は、3気筒エンジンという事で興味が有った。私が今までに乗っていた3気筒マシンは、
“マッハⅢとMV250F” の2台だけである。共に2サイクルエンジンだった為、じゃじゃ馬そのもので
あった。下はスカスカ、しかしスロットルを一捻りするだけで、別世界に突入する。オイルと煙を巻
き散らし、2次曲線的な加速は脳内麻薬に等しい快感を与えてくれた。が、基本的に扱い難い車
種であり、その振動も長時間耐えられるものでは無かった。その3気筒エンジンを最新の技術に
よって、どう変化しているのか、とても興味が有ったのだ。結論から言えば、エンジンに関しては、
やはり3気筒特有の振動を抑える事は出来ていなかった。が、その強さはマイルドになっており、
我慢出来る範囲に収まっている。それよりも良かったのがハンドリングだ! 兎に角軽いのだが、
しかし、シッカリとした剛性感が有り、文字通りヒラヒラとしかも安心して車体を倒す事が出来る。
街乗りとしてなら、最上級のバイクであろう! シートも良いし!
“FJR1300AS”は、次期愛車候補の1台であるが、欲を言えば“完全MT車”である、“FJR1300A”
の方に乗りたかった。が、ヤマハのデュアル・クラッチ・システムにも興味があったので、結構楽し
く乗る事が出来た。このデュアル・クラッチであるが、実はメーカーによって操作方法が異なるので、
結構混乱する個所でもある。ヤマハ方式は、クラッチレバーは無いが、シフトペダルは有るので、
基本MT車のような操作となる。が、ニュートラル(N)の位置が、1速と2速の間では無く、一番下が
(N)となっている。一度覚えれば、結構使いやすいシステムと感じた。パワー&トルクは、国内仕
様にも拘らず、あまりデチューンされておらず、充分な力強さを感じたのは高得点だろう…。
順調に試乗を重ねていた私ではあったが、気になっている事もあった。それは、私の行く先々に
居るベテランカップルの存在であった。サンダーバードの“スコット・トレーシー”に似た旦那と、トム
ソーヤの冒険の“ハックルベリー・フィン”に似た奥方の姿である(笑)
兎に角、尽く同じバイクをチョイスするので、いつも一緒の行動となっていたのだ(苦笑)
「ま、同じセンスの持ち主だと思えば、親近感も湧いて来るかな?」
と思いながら、楽しい試乗会は終わった…。
フィットに戻り、また元の“正装”を身に着けると、一服する事にした。既に気温も上がって来て
おり、海風は寧ろ心地良さへと変わって来ていた。
ふと前の景色を見た。ソコは隣の会場で行われている、リターン・ライダーの講習会であった。
既に老境に達しようとする方も散見されたが、嬉しかったのは、その参加者の3分の1以上が女
性ライダーだったという事だ。
「いいねぇ~! いつの世も、バイクに乗るオナゴって美しいと思うけどな…」
最後の一吸いをした煙草を灰皿に押し付けると、アクセルを踏み込み、フィットを東へと走らせた…。
“小田厚”を走行中、ふと、ルパンのエンディングシーンが頭に浮かんだ。
「やっぱ、峰不二子は…、イイ女だなぁ~」
それが、今日の1日の結論となった(笑)
おわり!
※尚、この日の模様は、愛車紹介ヤマハFZR250 のフォトギャラリー内の
→ “
ココ” にアップしておりますので、どうぞご覧下さい!