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2012年12月14日 イイね!

振り向く暗闇の中にソレは居た・・・ “青い女”編 幕間狂言 epilogue 上巻

振り向く暗闇の中にソレは居た・・・ “青い女”編 幕間狂言 epilogue 上巻 これでもかとクルマを飛ばしてはいたが、どうしても消せずにある

俺の身体の、ある部分に宿る悪魔の刻印を思うにつけ、尚も俺の

心はあの時へと遡る…。


 …翌朝、俺はようやく四日ぶりに出社する事が出来た。しかし、

4日前の自分ではもう無い。心配してくれる職場の同僚達に愛想

笑いを浮かべ対処する中、特に心配そうな視線を投げつけてくる

加奈に対しては、どうしてもその目を直視する事が出来ずに、そそくさとその場を去る事しか俺

には出来なかった。そう、もう俺の身体は、加奈を愛してはいけないドス黒く汚れた体になってし

まったのだ。俺の身体に刻み込まれた刻印。それは肉体だけでなく、心の中にも大きく刻まれた

傷となり、常に俺を震え上がらせる。しかしそんな事は、他人が知り様も無いのが当然の事で、

特に身近な同僚達は、俺の突然の変化に戸惑うのは、やむを得ない事だった。

 「おい〇〇! 具合が悪いんじゃないのか?」

 「治ってないなら、もう少し休んでいいぞ!」

 「あまり、無理すんなよ!」

同僚や先輩達から優しい言葉が次々と投げかけられる。俺はその言葉に感謝すると共に、バツ

の悪い罪悪感みたいな感情も同時に湧き上がって来ていた。故にその後ろ暗さを隠す意味でも、

 「まあ、なんとか…」

で、あったり、

 「ボチボチでんな…」

といった口調で対応するしかなかったが、どうしても表情は口調の様に明るくは出来なかった。

そんな中、やはりというべきか、強い口調で話しかけてくる者がいた。

 「チョット! どうしたの? お願い、何かあったなら私に相談して!」

加奈は真剣そのものの表情で俺に迫った。俺はやはり彼女の眼を直視出来なかった。

 「ねえ、お願い…。何か、何か私に言って…」

最後は涙声となって俺の膝に手を置いた。俺はビクッ!と震えた。と同時に加奈の手も電流に

触れたようにパッと離し、まじまじと俺の顔を覗き込む。俺の頸元から汗が滲み出す。

 「な、何でも無いです。そ、それより明日の件ですが…」

 「話を逸らさないで! ちゃんと私の質問に答えて!」

とうとう加奈の眼に涙が溢れ始めた。俺は何も言えず、その場を逃げ出した。

 「チョット! 〇〇君!!」

目で俺を追っているであろう加奈の想いを振り切り、俺は仕事の現場へと向かった。いずれハッ

キリ言わなければならないとは思っていたが、やはりいざとなるとそう簡単に言える事では無い。

無論今でも俺は加奈の事が好きなのだからしょうがない。今出来る事は、少しずつでもいいから、

加奈と距離を置き始める事だと思った。

しかしそんな俺の心の葛藤も杞憂に終わった。当然と言えば当然だが、俺が言うより先に“彼女”

が既に動いていたからだった。それは2,3日後、今度は加奈の方が、急に俺に対してよそよそしく

なった態度で、或る程度察しが付いた。私と視線が合わない様、同じ現場に行かない様、露骨と

言ってもいい態度に変化していた。俺に近づく近づかないとは別に、そうなると今度は俺の方が

気になって来る。

 或る時、加奈が一人で資料室に居る所を見計らって話しかけた。

 「どうしたの? 何かあったんですか?」

 「わ、わわ、私に近づかないで!」

その声にバッと振り返ると、恐れおののくと言った表情で、加奈が後ろに飛び去った。

 「ゴ、ゴメンナサイ! も、もう、貴方に近づく事は、し、しませんから…」

1つ深呼吸した後、そう加奈が言って逃げ出すように俺の前から去って行った・・・。



 「・・・何か最近、コワイ女に絡まれているらしいのよ」

ゴシップ好きのA美が、こちらから聞く事も無くベラベラと喋り始めた。

本人から聞けないのであれば、周りから聞くしかないと考え、特に加奈と親しいA美の所へ行った

時の第一声がそれだった。

 「怖い女って?」

俺は膝を突出し、興味津々の態度をとった。そんな俺の表情にA美は満足げに頷いた後、今度は

急に声を細めてヒソヒソ話を始めた。

 「いやね、最近、というより前からなんだけれども、ちょくちょく加奈の所に無言電話や、剃刀が

送り込まれてきてたのよ。最初は無視していたんだけど、段々エスカレートして来て・・・・ある日、

部屋に帰ると窓の外に白い影が佇んでいたり…」

A美はお茶を一気に呷り、一息つくと、また機関銃の様に喋り出した。

「剃刀片手に物陰に立っている白い服を着た女を見かけたらしいの。その女は青白い顔で

     加奈を睨み続けて、その目だけで心底震え上がった位、恐ろしい目をしていたらしいの!」

そう言うと、A美はまるで自分の事の様にブルブルと体を震わせた。

 「怖いわね~、でもそれだけじゃないのよ! まだその後…」

 「その後…?」

俺は不味くなった唾をゴクリと飲み込み、先を促した。

 「最初は虫から始まって…それからネズミ…猫…そして犬…」

そこまで行ってA美は、またブルブルと震え出した。

 「家に帰る度に、玄関のドアに、それらの首が釘で打ち付けられてあったのよ!」

それを聞いた俺は、やはり暗澹たる気持ちになった。“彼女”しかいない…と。

 「それから流石に怖くなって、引っ越ししたらしいのだけど、次の場所でも、あの青白い女が現

れたらしいのよ。それも部屋のカーテンを開けたら正に目の前に立っていたってんだから、もう

その驚き様って言ったら、引きつけを起こす位びっくりしたらしいわよ!」

俺は、ただ黙ってA美の話に耳を傾ける。

 「そしてその時も…」

 「その時も?」

俺が先を促そうとすると、今度はA美がニヤニヤとこちらを向いて言った。

 「〇〇君に近づくな、近づくな! ってね、そう加奈に怒鳴っていたらしいわよ~」

A美はいやらしい目つきで俺の姿を上から下まで舐めまわすように見た後、

 「あまり、罪作りな事は、おやめなさいよね~」

そう言うと、ワザとらしく辺りをキョロキョロしながらA美は去って行った。

デジャブーが俺を襲った。俺は、また会社で一人ぼっちになろうとしていた…。


 そうしてまた歴史が繰り返され始めた俺の人生だったが、今度は限りなく黒に近い灰色の

毎日が始まるように感じた。故に俺の視界も、一気に暗く沈んでいった…。

 しかし思いもよらない出来事が、荒波となって更に俺に襲いかかる事は、この時知る由も無い…。

 それは正に突然の事だった。

              ――“彼女”が忽然と姿を消したのだ!――


  つづく
Posted at 2012/12/14 17:32:13 | コメント(2) | トラックバック(0) | 私小説 | その他

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