自動車業界は猛スピードでEV(電気自動車)に向かっている。リードする欧州勢、米国や中国の状況、日本勢の戦略の最前線を探る。【週刊エコノミスト編集部】
◇中国でVWと日産が激突
派手なデザインのコンセプトカー(試作車)が並んだ東京モーターショー。地味なデザインながら専門家の目を引いたのが、独フォルクスワーゲン(VW)が12月に市場投入するEV「e-ゴルフ」だ。ゴルフは同社の人気モデル。日本にもユーザーが多い。e-ゴルフを最前面に展示したVWの姿勢からは、同社のEVにかける「本気度」がうかがえた。
そんなVWが攻勢をかけているのが世界一の自動車大国、中国だ。年間400万台のVW車が売れる“ドル箱”市場である。中国の自動車販売台数は2800万台。しかも、中国ではマイカー購入意欲が高い中間所得層が急増中だ。購入補助金など国策の後押しも加わることで、最初の1台は低価格EVになる可能性が高い。
中国政府が9月末に打ち出した規制では、NEV(新エネルギー車)が各メーカーの年間生産・輸入台数に占める割合を、2019年から10%にするよう罰則付きで義務付けた。NEVはEVやプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)である。
VWは、EVに今後5年で60億ユーロ(約8000億円)を投資する計画だ。25年のEVの世界販売目標を300万台と定め、その半分の150万台を中国で売るとしている。30年までにVWグループの全車種をEV化する方針だ。VWはこの夏、中国自動車大手の安徽江淮汽車(JAC)とEV合弁会社設立を発表した。
VWと、中国で直接、激突するのが日産自動車・ルノー連合だ。中国自動車大手「東風汽車集団」とEV開発の合弁会社設立を発表。19年から東風の工場で生産を始める計画だ。特に累計生産が50万台を突破したEV「リーフ」を持つ日産の開発能力に期待がかかる。
◇米国は先行するテスラへ包囲網
中国と並ぶ巨大市場は16年の自動車販売台数が1700万台の米国だ。米国向けEVは中国と違い、高級モデルが主戦場となる。狙うのはダイムラーとBMWのドイツ勢。この領域には、すでにテスラという先行開拓者がいる。テスラは、今年上半期だけで米国を中心に4万7000台を販売、高級EVでブランドを築いている。7月には最新の「モデル3」を投入し、欧州勢を引き離しにかかる。BMWは得意の高級スポーツ車の新型EVモデル「i8」で“打倒テスラ”を目指す。
米国の自動車大手も、EVで反撃ののろしを上げた。フォードは19年後半に小型EV「フォーカス」を投入予定で、20年までにEV関連で45億ドル(約5000億円)の巨額投資を行うと発表した。
「週刊エコノミスト」編集部が各種調査機関へのヒアリングを基に推計したところ、16年に約42万台だったEVの世界販売は、30年までに約637万台にまで拡大する可能性がある。デロイトトーマツコンサルティングによると、二酸化炭素(CO2)を排出しないZEV(ゼロエミッション車、EVまたはFCV)の販売台数は、50年には車全体の85%を超えると予測する。EVがクルマの主流になる時代がやってくる。
◇しびれを切らせた豊田章男トヨタ社長
急速に進むEVシフトに取り残された巨人が、日本のトヨタ自動車だ。EVの実用車が1台もなく、欧米勢や日産に大きく後れを取っている。エレクトロニクス(電子工学)に強い部品メーカーのデンソー、マツダの3社で共同設立したEV新会社「EV C・A・スピリット」で巻き返しを図るが、取り組みは緒に就いたばかりだ。
トヨタが遅れた背景には、大成功したハイブリッド車(HV)への固執があるとの見方が強い。優れた燃費性能を発揮するプリウスは、今年2月に世界累計販売台数が1000万台を突破した。「まだまだHVで戦いたいのがトヨタ技術陣の本音だ」(自動車業界誌記者)。マツダ、デンソーとの新会社も「一向にEVへの熱が上がらない開発陣に対し、豊田章男社長がしびれを切らして力業で話を進めたと聞く」(業界関係者)。
「トヨタがHVで培った技術力があれば、まだ十分追いつける」(業界アナリスト)との見方もある。EVの性能を決める重要技術の一つにバッテリーマネジメント(電池制御技術)がある。バッテリーの出力を細かくコントロールすることで走行性や燃費性を上げる。「欧州メーカーがHVよりもディーゼル車に力を入れたのは、トヨタの高度な技術をまねするのは不可能との判断があった」(同)。トヨタの電池制御技術はEVにも応用できる。
もう一つ、EVの航続距離を飛躍的に伸ばすと期待される「全固体リチウム電池」の開発を東京工業大学と進める。トヨタは20年代前半の市場投入を目指しているとの報道もあり、実現すれば強力な武器になる。
世界は予想以上の速さでEVへと動いているが、全固体という新型電池投入までに、欧米勢との差を埋めることができれば、デンソーを加えたトヨタ連合に勝機が見えてくるかもしれない。
もうずいぶん昔の話になるが、電気自動車が普及すると電機メーカーがメインの自動車メーカーになってしまい、トヨタは単なる下請け組み立てメーカーに転落する恐れがあるとか言ってその対策として電気関係をデンソーだけに任せずに他メーカーとも連携した体制を取るという話だった。パナソニックと手を組んだのもそのためだろう。当時はそんなことがあるのかと思ったが、その後、トヨタはHVの開発に力を注いだ。EVは構造が簡単で自動車メーカーではなくてもどこでも作れるが、トヨタは極めて高度な技術を必要とするHVへと進んでいった。これは簡単にはできない技術を確立して他社をリードするためだったんだろう。事実、それはうまく行って一時はエコカーと言えばトヨタのハイブリッドと言う状況になったし、他社にも技術を公開するなどトヨタのエコ技術全盛期を作り出した。中国などは大学や産業界などあちこちでトヨタのプリウスを分解して例によってコピーを作ろうとしたらしいが、1ミリも動かなかったという。そのころEVは航続距離や充電ポストの問題があってまだまだ特殊な車と言う位置づけだったのだが、環境問題や技術の向上によってエコカーへの頂点へと躍り出た。そこでトヨタはまた高度な技術を必要とするFCVへと振るが、時流はモーターとバッテリーにこれらを制御するソフトがあれば簡単に作れるEVへと向かった。そして車の主流はEVになりつつある。日産系はEVへのシフトは完了している。トヨタはまだHV、PHVで勝負できるという意識があるのかもしれないし、それはそれで間違ってはいないだろうが、時代の動きと変化は極めて早い。次の次くらいまでを考えておく必要があるだろう。トヨタとホンダはFCVに拘るとともにEV開発を急ピッチで進めている。電気か水素かと言うのは自動車だけでなく産業界全体の命題でもある。出遅れているとは言ってもトヨタはHV、PHV、FCV、そしてWECなどで培ったモーター、バッテリー、そして高度な制御技術を有している。そんなわけでその気になればそれほど心配することもないんじゃないかと思うがどうだろう、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2017/11/09 12:30:59 | |
トラックバック(0) |
自動車 | 日記