
先日開催された「東京モーターショー2017」の見学記の続きです。
例年、乗用車の見学の大部分をさぼって入り浸っているのは商用車エリア。今回はそのうち、屋外展示の架装メーカーさんの展示について。
タイトル画像は、
KYBのコンクリートミキサー車です。従来のボデーと比較して、架装物側のフレーム構造等を見直し、大幅な軽量化(=積載量の増加)を実現した車両だそうです。
屋外に展示されるトラックに架装されるボデーの展示を見学する事は、私にとって欠かせないミッション。トラックとボデーの関係については
こちらを参照して頂くとして、屋外ではトラックの運転台の後ろに架装される「ボデー」各種が多数展示されているのです。多くの方は、荷物を運んだり様々な作業を行う「はたらくくるま」としては認知されていても、詳細はわかりにくいと思います。乗用車の華やかな展示と比べると穴場的な雰囲気ですが、私なりにレポートします。

ホンダの部品メーカーであり、S660などの委託生産を担当する
八千代工業が出展した「災害初期支援車」です。アクティ・ダンプをベースに、ウィンチやクレーンなど必要な機材をコンパクトに積載した頼もしい車両ですね。軽自動車ゆえ小回りが効いていいと思いますが、個人的にはダンプではなく、通常の平ボデーでもいいかな、と思います

かつては「東急車輛」と名乗っていた、
東邦車輛のトレーラ・ボデーです。フルトレーラとしてだけでなく、ドリー(=前輪)を外して
トラクタを連結し、セミトレーラとしても使える画期的なボデーですね。例えば、A地点からB地点までは2両連結のフルトレーラで運行→B地点で切り離し→それぞれをC地点とD地点に分けて運行、という事も可能。鉄道に例えるなら、東京発時点では併結された新幹線「はやぶさ」「こまち」が盛岡で分割され、それぞれが函館と秋田に向かうようなものですね。また要望に応じて、色々な長さのボデーも作れるとのこと。尚、トレーラについての解説は
こちらをご覧下さい。

「ヤマダボデー」でお馴染みの、
山田車体工業が出展した「オーバーターンウィング」です。どんな特徴があるかと言うと、通常の横が開く
ウイングボデーと違い、ウイング扉の付け根にあるフレームを横にずらし、通常のウイングボデーでは困難な天井クレーンによる積み下ろしを可能にしたボデーなのです。天井クレーンの荷役で苦労した経験がある私にとっては、少々羨ましい構造ですね。また、温度変化を嫌う精密機械の輸送にも対応したボデーで、庫内を一定の温度に保てる特別な構造とのこと。納入先の企業は、まさにそんな輸送を行っている運送会社でした。

大型
冷凍車としては最大のシェアを誇るメーカー、
矢野特殊自動車の冷凍車です。サブエンジン仕様の冷凍車は、通常は-30℃程度まで下げられますが、これは「余裕で」-35℃まで下がるスグレモノ。さすがは日本で初めて冷凍車を作ったメーカーですね。またこの車両は福岡運輸向けのUD車ですが、日本初の冷凍車と同じシャシメーカーと納入先なのもポイントです。

これは、愛知県の架装メーカー・
日本トレクスの製作した冷凍?ウイングボデーで、先端部分にはノーズマウント式の冷却装置(三菱重工製)が設置されていました。従来の同一ボデーと比較して軽量化され、300kgも積載量が増えたとのこと。これだけの積載量を捻出するのはさぞかし大変だったでしょうに…! タイヤはスーパーシングル仕様で、車軸はドイツの
BPW社製でした。日本のトレーラの半分以上がこのメーカーの車軸を使っているそうです。

セミトレーラ式車載車のトップメーカーとして有名な、
浜名ワークスの製作した全長23mのフルトレーラです。牽引側だけで全長12mあり、これだけでも通常の大型車と同じ全長ですね。更にセンターアクスル式のトレーラを連結し、23mにも及ぶフルトレーラ、ですが、こんなに長い車両が公道を走る時代が来たかと思うと、複雑な思いです。実際にヤマトさんやフクツーさんがこれより若干短い車両で実証実験を始めていますよ。

牽引されるトレーラ側は、リヤカーみたいなセンターアクスルです。この場合、最後尾を段差で路面に接触させやすいのですが、この全長だけでも運行ルートが限られるので、これ自体は大した問題ではないでしょう。

ダンプボデーやパワーゲート(昇降リフトの登録商標名)で名高い、
極東開発工業のごみ収集車です。4t車をベースにした比較的積載量の多いタイプですが、丸みを帯びた洗練されたデザインですね。テールランプが、どこかスバル・レガシィ風ですが、従来のボデーよりも格段に美しくなっていると思います。同社は他にも、1台積みの小型車載車を展示していました。

これら特装車だけでなく、ボーイングやエアバスにも航空機部品を供給する
新明和工業のダンプボデーです。軽量化されて積載量が10tになっただけでなく、ボデーが全体的に丸みを帯びてデザインが洗練された印象ですね。

これまた特徴的なのは、従来はボデー後ろ側にあったシリンダー(通称;天突き)を先端部に移動させた事。これも補強の面で軽量化に貢献しているそうです。まるで伸縮できるアンテナみたいなシリンダーですね。
そして、今回私が最も感心したのがこのメーカーのボデーです。

いすゞとUD向けの標準ボデーを架装する、
日本フルハーフのウイングボデーです。荷物を更に積み重ねられるよう、棚を設置して更に積載できるようにしてあります。雑貨輸送の現場では、上に積み重ね不可能な荷物が意外に多く(金型など)、こんな棚があれば便利ですね。そしてウイング開閉には従来の電動油圧ではなく電動式で開閉するのでオイル漏れ→荷物汚損の心配もありません。私がそれ以上に感心したのは作動音が静かな事で、住宅街にある物流センターでは有難いです。

中型車の定温ボデーに設置されていたリフトにも感心しました。ボデーとリフトの間にセンサーがあって、足を挟みそうになるとストップする機能付き。私は以前、足を挟みそうになった怖い経験があるので、こんな機能は大歓迎。こんなゲート欲しい!
他にも、花見台自動車の1台積み車載車が展示されていました…が、撮影を忘れていました。申し訳ありません(謝)
メーカー各社の皆さんとは色々とお話させて頂きましたが、各社とも輸送業界や世の中の課題(ドライバー不足など)を的確に捉え、彼らなりにその課題に応えるべく様々な提案をしていて、業界人として心強く感じました。乗用車の方と違って「当社はあっちこっち手を出し過ぎてあんまり儲からないんですよね~」「○×車は外から買う部品が多すぎてはっきり言って赤字商品なんですよォ」とか、生々しい話まで聞けてしまうのもこれまた魅力的ですが(笑) 最後に…私ごときの相手をして下さったメーカーの皆さんに感謝します。ありがとうございました!
「東京モーターショー2017」についての記事
この記事は
東京モーターショー2017 について書いています。
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大型車の話 | 日記
Posted at
2017/11/12 05:15:38