そこらじゅうを走っている大型車ですが、今回はシャシ(シャーシの業界用語)の種類について、トラックを中心に語ってみましょう。細かく分類すればかなりの種類が存在しますが、ここでは代表的な車型に絞って紹介します。尚、文中に登場する「○×○」という数字は、前が車輪(ダブルタイヤは1本と計算)の数・後が駆動輪の数を表しています。タイトル画像には特に意味はありません(笑)
まずは高床タイプから…
一つ目は前部2軸+後部1軸の6×2、いわゆる「前2軸」といわれる車型です。
ユーザーがバレバレですね(笑)
同じ前2軸でも、前側の車軸の間隔が開いた車型もあります。それに伴い、車両総重量も変化します
ホイールベースが長めで、他の車型に比べて小回りが効きません。またタイヤの本数が少ないためか、積載重量も少なめです。ただ後部に1軸なのでトラクションがかかりやすく、雪道など滑りやすい状況には比較的強い車型です。そのため、積雪の多い地域の運送会社(
トナミ運輸など)に多く見られる車型でもあります。現在は
西濃運輸や
ヤマト運輸(の幹線便)が主なユーザーですね。
かつては重量負担の小さいタイプ(特積輸送やタンクローリーなど)を中心に広く使われた車型でしたが、現在は後述する車型に主役を奪われつつあるのが現状です。
二つ目は前部1軸+後部2軸の6×2または6×4、通称「引きずり」という車型です。
もはや12mフルサイズの単車といえば、これが代表的な車型と言っても過言ではないでしょう。タイヤの数は前輪2本・後輪8本と前後で極端に本数が違いますが、写真のように後輪2軸をできるだけ内側に…特に必ず駆動輪となる後輪の前軸(ややこしいね!)は、荷台のほぼ中央に位置させてあります。こうすることによって、荷台(=荷物)の重量の大部分を後輪で受け止めるようにしてあります。これは航空機の車輪の配置とそっくりで、例えば大型旅客機のB777の場合は、機体中央の主脚のタイヤは12本・前脚は2本と、割と似通っています。
分かりにくくて恐縮ですが、機体中央に12本、機首部分に2本のタイヤがあります
この車型の場合、駆動輪は2つある後輪のうちの前側のみ、あるいは前後両方の2種類があります。それぞれをデファレンシャル装置の数から「ワンデフ」「ツーデフ」と呼ばれ、使用状況や経済性などを考慮しながらどちらかを選択します。
ツーデフ車(いすゞ・ギガ低床8×4)を後部から見たものです。ちとわかりにくいですが、デフが見えます
こちらはワンデフ車(日野・プロフィア高床6×2)です。これも後部から撮影したものですが、写真の通り後輪の後ろ側の車軸にはデフがありません
ホイールベースが短いゆえに比較的小回りが効くのが特徴ですが、後輪より後ろが相当外側に振られる、いわゆる「ケツ振り」が激しいことから、狭い構内を走るときには特に注意が必要な車型でもあります。プラットホームに接岸・離岸する時、ハンドル操作をミスして隣のトラックのバックミラー、最悪の場合はキャブに接触してガリガリガリ…本社出頭!! 特積屋では定番の構内事故です(涙)
後輪は全てダブルタイヤを装着することになっていますが、ケチな会社は後ろ側のダブルタイヤの外側2本を装着せずに運行していたケースがありました。もちろんこれは「×」です。
かつて販売されていたメルセデスベンツ「アクトロス」の単車もこの車型でしたが、後輪の後ろ側が何故かシングルになっていました。おそらくその分積載重量も少なめだったと思われます。
三つ目は4×2です。
中型・小型トラック、そしてバスと同じ車軸の配置の車型ですね。車軸が一つ少ないということはその分車両総重量も少なくて、上記の車型の総重量が20~25トンに対し、この車型は16トン程度。それに伴い積載量もだいたい8トン程度なので、通称「8トン車」と呼ばれます。比較的小回りが効くものの積載量が少ないから、少数派の車型ですね。写真のように貨物を輸送するよりも、各種検診車(レントゲン車など)の特装車ベースとしての印象が強い車型でもあります。
4×2をベースに製作した検診車です(架装メーカー不明)。ボデーを載せるだけでなく、ボデーとキャブを一体化するためにキャブのチルト機能を撤去(キャブ固定)して背面カット、エンジン点検口設置など、シャシ側は大幅に改造されています
次は低床車です。
代表的な、前部2軸+後部2軸で8×4の、「低床4軸」という車型です。
これは小径タイヤを装着して4軸として、荷台から庫内の高さ(あるいは制限高までの高さ)を確保して、積載容量の確保を図った車型です。高床と比較してせいぜい15センチ程度の差しかありませんが、この差が大きい…。高床車と比較すると、明らかに積載できる量が違います。また制限高までの高さと低床ゆえの積載のしやすさを活かし、頑丈なデッキを備えたセルフローダー(重機を運搬するトラック)にもよく使われます。
でもねぇ…欠点もしっかりあります。他の車型よりも車軸が多いから、その分床下の架装スペースが限られます。そして低床なので、段差に弱い! 特に定量積載(積載重量の制限いっぱいに積んだ状態)で道路から歩道を横切って取引先へ出入りするとき、リヤバンパーやフロントのリップスポイラーを「ザザザ~!」とこすっているのをよく聞きました。でもそれならまだいい方で、ホイールベース間に設置した冷凍機を「ガリッ!」とやらかした日にゃアンタ…!!
低床4軸の床下に冷凍機を設置した例です。段差がコワい!!
そして我ら特積屋(
佐川急便を除く)にとっては、プラットホームの高さと合わないのに苦労します。エアサス車ならある程度車高も上げられますが、それにも限界があります。そんな時はタイヤ下に木の台を敷いて(業界用語で「下駄をかます」といいます)高さを合わせますが、位置合わせと台に乗せるのは意外とコツが必要だったりして!
この他、低床クラスでは3軸車もありますが、前輪には高床タイプのタイヤ(扁平)を履かせる必要があって、スペアタイヤを2種類積載しなくてはならない(=積載重量&架装スペースの減少)ので、少数派です。
この他、ダンプやミキサー車向けの車型などがありますが、ここでは割愛します…あまり詳しくないから(苦笑)
次回はバス篇です。
Posted at 2013/03/23 10:56:50 | |
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