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2012年09月22日

大型車のはなし ―冷却って大変なんスからもォ! トラック篇―

大型車のはなし ―冷却って大変なんスからもォ! トラック篇― 今度はトラック篇です。タイトル画像は、デンソー製の冷却装置です。

まず、トラックに載せる荷物について。荷物とはある意味人間以上にデリケートで、取扱い…特に温度に注意を要する荷物が少なくありません。夏場は「箱」が直射日光に晒され、薄いアルミ板とベニヤ板しか使わないドライバン(通常の箱のことです)の庫内温度は急上昇…そんな時に野菜などの生鮮食料品を輸送すると、あっという間に品質が低下→場合によっては全損扱いになって、莫大な損害が発生します。そんな時に活躍するのが、保冷車または冷蔵・冷凍機能を備えたトラック群です。このトラックこそ私たちの豊かな食生活を支えているのであって、この車両が無いと、スーパーやコンビニには生鮮食料品や冷凍食品を並べられず、ファーストフードやファミリーレストランは営業不可。それ位重要な車両なのです!

まず、保冷車について。これは基本的に、冷却装置を装備しない断熱効果を高めた箱を装備した車両で、主に野菜などの生鮮食料品や温度変化に弱い食品(チョコレートなど)を輸送するために用います。いちおう冷却装置を装備しないのが基本です。

次に冷凍車。非常に強力な冷却装置を装備し、保冷車よりも更に高い断熱効果を得るため、アルミ板や断熱パネルをたっぷり使った箱で、冷蔵~冷凍食品などを輸送します。

そして、冷却装置。乗用車とは比較にならない広さの庫内、ましてその中で荷物を冷蔵または冷凍状態に保つわけですから、当然ながら膨大な電力が必要です。電力の供給には主に2種類の方法があって、メインエンジン直結式と、冷却装置専用のエンジンを内蔵したサブエンジン式があります。

まず、直結式から。これはメインエンジンから電力を供給されて冷却装置を動かします。主に小型車や中型車に用いられる方式ですが、最近は大型車でもよく採用されます。サブエンジン式に比べ、静かなのと燃料消費が抑えられるのが長所ですが、どうしてもエンジンのパワーを食われてしまうのと、エンジン停止中の冷却ができない…そして冷却能力が若干劣るのが短所です。

次に、サブエンジン式。これは箱の床下に発電専用の小型ディーゼルエンジンを設置して電力を供給し、冷却装置を動かします。


三菱重工製の発電装置です。これを設置すると、床下は鉄道車両ばりにギュウギュウ!


こちらは、冷却装置とエンジンを一体化して運転席上に設置したサブエンジン式で、床下スペースに余裕がない車両(低床4軸車など)向けの装置です

専用エンジンを用いるだけに高い冷却能力があるうえ、メインエンジン停止中にも安定した電力を供給できるのが長所です。その半面、エンジンが2つになるためどうしても燃料消費が増えるのと、ホイールベース間にしか設置場所がないため、激しい水しぶきや融雪剤を浴びることから、こまめなメンテナンスが不可欠なこと、そして…とにかくやかましい! 何せ小型のディーゼルエンジンを2000rpm程度で回すから、メインエンジンよりも遥かに甲高い騒音を発します。大した回転数じゃないじゃん、と思われるかもしれませんが、ディーゼルエンジンにとってこの回転数はレッドゾーン級の、まさにフル回転。ドライバーにとっては、走行用のパワーを食われないのはいいのですが、サービスエリアや道の駅でサブエンジンを回したまま休憩すると、周囲のドライバーには顰蹙を買う羽目に…! 場合によっては「あっちに行ってよ」と他のドライバーから追い出され、仕方なく高速道路の合流地点などに移動して休憩する羽目に…冷凍車乗りの悲哀です。元冷凍車乗りのドライバーさんが、切実な思いを語ってくれました…(涙)

トレーラーに設置される冷却装置は、基本的に全てサブエンジン式です。通常の大型車(「単車」と呼びます)よりも更に庫内が広いので、直結式では電力が到底足りません。通常はトレーラーの先端にエンジン・冷却装置を一体化させた冷凍ユニットをぺたりと貼り付けています。余談ですが、お値段は1台約700万円ナリ…


サーモキングの冷凍ユニットが設置されたトレーラーです。先端に設置するので「ノーズマウント型」といいます。

この位置だと、水しぶき…特に融雪剤の影響が遥かに少なくて済みます。国際輸送に用いられる冷凍輸送用の海上コンテナ「リーファー・コンテナ」は規格化されたサイズ内に、冷却装置がきれいに収められています。電源は、トラクタの後ろに設置もしくはノーズマウント型?の発電装置から供給されます。




冷蔵倉庫でよく見かけるリーファー・コンテナと、ボルボのトラクタの後ろに設置された発電装置、そしてコンテナの先端に設置された発電装置です。コンテナにはダイキン製の冷却装置が装備されています。蛇足ですが、私はここで輸入野菜の実態を目の当たりにしました…!

またこれらの車両は、フェリーやRO-RO船(貨物車だけを運ぶフェリー)に乗船中は冷凍装置の発電のためにエンジンを回しっぱなしにするわけにはいかないので、別料金で船側から電力の供給を受けて冷却装置を駆動させます。そのための電源コードを接続するコネクターが、オプションで設定されています。


少々わかりにくい写真ですが、フェリー船内で電源コードを接続して電力を供給されています。サブエンジン式ながら、エンジンを止めているので静かです。名門大洋フェリーの船内にて撮影

これらを製造するメーカーは、冷却装置自体はデンソーに東プレなどで、サブエンジン式は三菱重工インガソール・ランド社(THERMO KING)が製造しています。


あと、こんな冷凍車もあります。

上記の冷却方式ではせいぜい-30℃までの冷却ですが、これでは不十分なのが冷凍マグロの輸送です。皆さんもニュース番組等でご覧になったことがあると思いますが、あの真っ白に凍結した状態の冷凍マグロですね。あの状態を維持するのには-60℃レベルの低温が必要で、それを実現した超低温冷凍車が↓の車両で、存在する台数が非常に少ないのでなかなか見られません。


社名を消すのが大変なので、もう実名(すみませ~ん!)。超低温輸送を事業とするティー・アール・エスさんの大型車です。架装メーカー確認を失念したのが悔やまれます


床下に設置された液化窒素のタンクです

これはエンジン駆動式ではなく、床下に液化窒素のタンクを設置して、そこから液化窒素を供給して冷却します。液体状では-196℃を誇る液化窒素使うからこそ可能な「-60℃」ですね。一瞥(いちべつ)した限りでは構造が単純そうに見えるボデーですが、外気温が30℃にもかかわらず庫内はきちんと-60℃に保たなければならないのですから、金属の伸縮を考慮した設計が必要な点など、製作には極めて高度な技術が必要なものと思われます。
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Posted at 2012/09/22 17:02:47

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この記事へのコメント

2012年9月22日 21:53
こんばんは、マル運です。

サブエンジンで冷却する装置を装着しているトラックってうるさいですよね(^^ゞ
鉄道のコンテナーでもサブエンジン付きのがありますよね~

電源を使わずにドライアイスなどで長く冷やすタイプなどが開発されれば、ヒットしそうな予感・・・って、それが開発できないから、現在のタイプが主流になったんでしょうね(^.^)
コメントへの返答
2012年9月23日 6:07
どうここん○×は~

冷凍車は-30℃まで下げることが可能ですが、そのためには専用エンジンのパワーが必要。でもスペースの都合上小さなエンジンを高速回転させるしかないため、あんな騒音になってしまいます。因みに直結式はだいたい‐25℃までです。

ドライアイスで冷却するのは、保安上発電機を装備できない航空コンテナでは使われています。まああの小さなサイズだから可能でしょうが、トラックの巨大な箱を冷却するには凄まじい量のドライアイスをその都度補給しなければならないでしょうから、現実的ではないですね~。残念!
2012年9月23日 8:19
相変わらず博識っすねぇ~♪
コメントへの返答
2012年9月23日 15:22
まあ…業務知識や趣味で「いつの間にか知っていた」知識、あとネットで調べたことも少々…いろいろです

プロフィール

「この構造、やっぱり凄い。アパートの下に電車がいます」
何シテル?   06/11 09:21
宝塚過激団と申します。何とぞよろしくお願いします。 プロフィール画像は、宇部興産専用道路で運行されているアメリカのケンワース(ただしオーストラリア製)のボ...
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