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2014年08月17日

大型車のはなし -バスの扉篇-

大型車のはなし -バスの扉篇- 右や左のだんなさま、あわれな乞…もといシラ切り雀でございます。

ネタ作りをずるずると先延ばししていたこの扉篇、やっと完成しました。ちょうどいい写真がなかなか手に入らない、という事情もあったのですが(汗)


では、始めましょう。今度はバスの扉について紹介します。タイトル画像は、JRバス関東が短距離高速バスとして使用している日野の観光系車両(KL-RU4FSEA)の出入口に設置された折り戸です。↓のふそう車と比較して、わりと上手く収まっているようですが。



まずは、現在の観光系ボデーの扉で最も多い「スイングドア」について。


これはドア本体を内側からアームで支え、開けるときはドアがボデーに沿って動きます。


開いた状態を、前から撮影したものです。アームで支えているのがわかりますか?

この扉は、閉めるときはドアを押さえつける仕組みなので、機密性を高くできます。それに、他の扉と違って折りたたんだりボデー内に格納しないから、ボデーと一体化したデザインの扉にできますね。


スイングドアを閉じた状態。見事にボデーと一体化しています

そして…ミニバンや1BOX車でよくあるスライドドアと違って内側からアームで支えて開閉するため、無粋なドアレールをボデーに設置する必要がありません。それなら乗用車にも是非この扉を!と言いたいところですが、ドアを閉めるとアームが車内に大きく張り出すから、残念ながら乗用車では不可能な扉です。


このように、閉めるとアームが車内に張り出します。階段部分に張り出すからこそ可能な、バスならではの扉ですね。

この扉で困るのは、外に張り出す以上は縁石等に接触する可能性があることです。最近の観光車は前輪のエアサスの空気を抜いて車高を下げ、乗り降りをしやすくする「ニーリング機能」があるから尚更です。そしてハンドルを切った状態では扉とタイヤが接触してしまうので、ハンドルをまっすぐにしないと開閉できません。あと、開閉にどうしても時間がかかります。だから観光系車両でも、バス停の多い中・短距離高速バス(福岡~小倉札幌~小樽など)では↓の折り戸を採用することが多いですね。


次は、路線系ボデーによく採用される扉について。

路線系ボデーの扉といえば↓の扉です。まずは折り戸から。





この扉の特徴は、開くと2つに折りたたんで開くことです。この扉の長所は開いたときにドアを格納するスペースが小さくて済む事、そして何よりも迅速に開閉できることです。だから路線バス、特に前側の扉はこれでなければ成り立ちません。この扉は、助手席側にあるアームのような「ドアエンジン」という部品で開閉を行っています。


これがドアエンジンです

大都市で使うバスで後ろの出入り口を広くしたい場合、左右に折り戸を設けた「4枚折り戸」という仕様もありました。車体メーカーを好みで選択できた時代にはこんな扉も作ってくれたものですが。主に西鉄バス新京成バスなどが好んで選んでいた仕様です。


これが4枚折り戸で、左右に開きます

もちろん欠点もあります。開閉時に折り畳むため、気密性がどうしても低くなってしまいます。古い車両では、この扉から隙間風が、冬季には雪がヒューヒューと吹き込むことが多いですね。
そして観光系ボデーとの相性が悪いです。折り畳むからにはどうしても平面的な形状になるから、ボデーと一体感のあるデザインが不可能ですね。そして一番困るのは、流線形のデザインを採用する観光系ボデーに折り戸を強引に設置すると、本来のスイングドアを設置した時と比べて出入り口が狭くなってしまう…特にふそうのMS8系シャシ+富山ボデーの組み合わせ(写真↓)で顕著です。


観光系ボデーに折り戸を設置した例1です。↑のスイングドアを閉じた状態と比較して、明らかに収まりが悪いです。ドア下に不自然な突起ができてしまいました


観光系ボデーに折り戸を設置した例2です。扉を開くと、流線形のボデーだから内側にぴたりと収まらず、おまけにターンシグナルが扉下にあるから完全に折りたためません。その影響で出入口が大幅に狭くなってしまいました。尚、両方の車両共に短距離の高速バス専用車両です


ほぼ同じボデーの、スイングドア仕様です。明らかにこちらの方が広いですね

それでもこの扉は路線バスだけでなく、上記の中・短距離高速バス向け車両の扉としてもよく使われます。見た目等で多少損をしても、迅速に開閉できて外側に張り出さない(=縁石等に接触しない)扉の方がいいからです。余談ですが、現在のふそうの観光系車両では折り戸を選ぶことが不可能だそうです。

次は、路線系ボデーの後ろに設置されている「引き戸」です。



こちらも折り戸同様に迅速な開閉が可能なので、路線バスに標準装備される扉ですね。そして他の扉と比較して、積雪や凍結に強いのも特徴です。鉄道車両の話で恐縮ですが、寝台特急<北斗星>の車両を製作する際、酷寒地対策として出入り口の扉を折り戸から引き戸に改造する作業が行われたほどです。また最近はバリアフリー対策として、ここに車椅子用のスロープを設置することが多いです。
欠点としては、開いたときにはボデー内側に扉を収めるスペース「戸袋(とぶくろ)」が必要なので、室内にその部分が出っ張ってしまうことです。だからその分、居住性が悪くなってしまいますね。


これが戸袋です。比較的最近の車両ですが、これでも昔の車両と比べると薄くなったものです


そして、最近の路線系ボデーにはこんな扉が設置されています。



一見折り戸のようですが、折り戸と違って2枚の扉が左右に開くタイプです。名称等はわかりませんが、前側の出入り口を広くしたくてこんな扉になったのではないでしょうか。ドアエンジンが扉の上に移設され、ダッシュボード?を薄くできていますね。それに通常の折り戸ほど手前に張り出さないから、大混雑時には有利です。ただ、開閉には若干時間がかかる印象ではありますが。


最後に、バスに設置される扉の数について。観光系は通常の出入り口が非常口を除けば1ヶ所が標準で、特別仕様として車椅子用にリフト付きの扉を設置した車両も存在します。もちろんそれなりに高価なうえ、乗車定員が大幅に減るので極めて少数派ではありますが。路線系は様々で、各種送迎用やスクールバス等では前に1ヶ所が多いですね。


典型的な路線系の送迎車で、扉が一番前の1ヶ所のみ。通称「トップドア車」と言います

もちろん標準的な車両は前と後ろ2ヶ所ですが、一部の事業者(関東バスなど)では後輪の後ろにもう1ヶ所扉を設置する「3扉車」も存在しました。こちらも特別仕様が比較的容易に作れた時代の産物で、事実上メーカー標準ボデーのみとなった現在では、設置は不可能になったそうです。


3扉車の一例で、東京空港交通の特大ランプバスです。真ん中の扉は左右に開く引き戸ですが、これまた極めて珍しい構造の扉です。車幅が約3mに拡大されたからこそ可能な扉ですね


今回で、扉篇は終了です。今まで随分と色々なネタを作ってきましたが、何せ奥が深い大型車の世界、まだまだネタはあります。写真が確保でき次第作ります。乞うご期待!?
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Posted at 2014/08/17 03:52:06

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