今度はバスの輸出について。まず、ここで扱う「バス」とは、日本で言うマイクロバスより大きなバスのことで、「ハイエース」「キャラバン」など1BOX車の派生モデルのバスは除外させていただきます。あまり知らないから(笑) タイトル画像は、私が香港の太子(プリンスエドワード)で撮影した、日本では見られない全長10m級のふそう「エアロバス」です。実際に乗りましたが、座席が
天龍工業製だったから日本製とみて間違いないでしょう。
予め白状しておきますが…本文中の写真は、大部分が公式サイトから拝借した写真です(謝)
日本からバスが輸出され始めたのは、トラックが初めて輸出された翌年で、こちらもまた乗用車よりも早く輸出が始まっています。ただ全てが日本製ではなく、
カミンズなど海外メーカー製のエンジンを搭載していることも多かったようですが。
現在日本から輸出されるバスは、国内で販売される台数の数倍に及ぶ規模で、輸出されるバスの大部分は小型バス…日本で言う「マイクロバス」が圧倒的に多いですね。その中でもトヨタのマイクロバス「
コースター」の人気は絶大で、国によってはランドクルーザーなみの人気と信頼を獲得しているほどです。
意外な世界戦略車! トヨタ・コースターの輸出仕様です
北米と西ヨーロッパ以外(衝突安全性を考慮して、その面で有利なボンネットバスが主流だからだそうです)の世界各国に輸出されていますが、特に中東諸国と中国の販売台数が多いそうです。現地では油田や建設現場の作業員の送迎やスクールバス、路線バスに用いられることが中心で、車両故障による延着で作業の進捗や企業活動に悪影響が及んでは困るから、たとえ高価でも信頼性の高い日本車が売れるのだそうです。信頼性だけでなく、同じ小型バスでもボンネットバスと違い、車体の全体を客室として使えるスペース効率の良さも、人気の一因ですね。例えば香港では、マイクロバス(特にコースター)がミニバスとして重宝され、よく目にする日本車のうちの1台です。メーカーも香港のミニバス向けの専用の車型を設定していて、現地で行先表示器などを装着してから販売しているそうです。もちろん、これまたトラック同様に規格品のヘッドライトやシュノーケルを装備するなど、輸出向けならではの仕様もたくさんあります。
マイクロバスと比較して、大型バスの輸出は少な目です。しかもボデーまで含めた完成車として輸出されることは稀で、大部分がシャシのみの輸出に留まります。
ボルボのシャシの写真で恐縮ですが…日本から大型バスを輸出する時は、こんな姿です。これを「ベアシャシ」と言います
以前は完成車として輸出されることが多かったのですが、1990年代以降は完成車の輸出が無くなり、つい最近まで途絶えていたのが現状です。トラック同様、シャシのみであれば積載スペースや重量を軽減できますし、輸出先の実情に合ったボデーを架装できるからです。
何しろ海外(特に発展途上国)では、ルーフ上に荷物を満載したり、車内に人間だけでなく家禽類を「同乗」させるなど、日本では思いもつかない凄まじい使い方をしますから! シャシのみ輸出というだけでも、現地の技術レベルに合わせ、完全に組み立てて輸出する形態から、足回りやエンジンどころかフレームすらバラバラの状態で船積み→現地の工場で組み立てる(=ノックダウン生産)形態まで、さまざまです。
そしてトラック同様、輸出向けは多彩な仕様が存在します。現地の環境規制に合わせて昔のエンジンを搭載しているのはもちろん、日本の大型バス同様のリアエンジン仕様(乗用車で例えればRR)からトラックベースのフロントエンジン(同FR)を小型バス用シャシとしたやつまで、実に多彩です。特に後者はヘッドライトをもトラック用を流用することが多いので、日本ではけして見られないスタイルの車体でも、フロントマスクにベース車の面影が残っていることが多いですね。
いすゞのリアエンジンの輸出専用シャシ「LT434」に販売国の架装メーカーでボデーを架装したバスです。個人的にはなかなか優れたデザイン、特にバックミラーは日本のよりも進んでいるデザインだと思います
台湾で活躍する、フロントエンジンでトラックベースのいすゞ・NQRシャシを用いた路線バスです。ヘッドライトにベース車(日本名エルフ)の面影がありますね。Wikipediaより
また、国内の販売台数よりも圧倒的に輸出される台数が多いからか、国内向けとは商売方法が随分と異なります。いすゞと日野はバス事業を統合して、この2社で同じバスを生産・販売していますが、輸出向けについてはそれぞれが独自の設計のバス用シャシを生産・輸出しています。それどころか、バス事業から撤退した筈のUDトラックスですが、実は輸出用に限っては細々ながらも生産を継続しているのです。しかもインド(だったかな?)にバス用の工場を建設したというからびっくり!
完全な完成車としての輸出が久しく途絶えていた大型バスですが、最近その輸出が復活しました。それはふそうの大型路線バス「エアロスター」で、オーストラリアで現地名「MP300」として販売されています。
オーストラリアで販売されているMP300です。日本のエアロスターとの違いは殆どありませんね
日本国内のバス市場が年々縮小する一方で
工場の稼働率を維持する事、海外のライバルメーカー(特に中韓)のバスは完成車として輸出されることが多い事、ボデーにも日本の品質を提供する事などが理由のようです。オーストラリアが選ばれたのは、比較的ふそうブランドの強い市場で、そして何より日本と同じ左車線走行・右ハンドルなので最小限の現地対応で済むからだそうです。実際に投入してみたところなかなか好評で、日本車ならではの品質や信頼性だけでなく、(事実上)同一メーカーのシャシとボデーで一体生産されるから、シャシとボデーのメーカーが別々なのと比較して納期が短く、後者の3分の2程度で納車できるとか。またクレーム発生時の責任の所在がはっきりしているのも、意外なメリットとのこと。是非、この調子で大型車の完成車輸出を定着させていって欲しいですね。
以上で、輸出ネタは終了です。
参考文献;
バスラマ インターナショナル
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Posted at
2015/01/11 06:11:20