
久しぶりに、大型車ネタを作りました。今回は、新車の回送について。
予め申し上げておきますが、ここで言う「新車の回送」とは、メーカーの工場からナンバー登録されるまでの間の輸送の事です。
タイトル画像は、道の駅「越後市振の関」で目撃した日野・プロフィアの回送車両です。
メーカーの工場で生産されたばかりの新車(現場では、本来は「商品車」と言います。顧客に納車される前の、メーカー側に所有権がある車両をそう言います)は、顧客の待つ現地までは公道を走れるナンバープレートが付いていないので、当然ながら公道を自走で回送できません。乗用車であれば車載車に積載して、また遠隔地や海外であれば船で航送して現地まで回送されますが、トラックやバスなどの大型車はそのサイズと重量ゆえ、車載車に載せるのは殆ど不可能。だからほぼ100%の車両が自走で回送されます。尚、「エルフ」「キャンター」などの小型トラックは専用の車載車に数台載せて輸送されます。少しでも多くの台数を載せるため、通常ではあり得ないほど前後に傾け輸送されますが。
まずは、トラックから。トラックは三菱ふそうや日野といった商用車メーカーで生産されますが、そこで作られるのはシャシのみで、荷台や特定の作業をする装置を作るのは架装メーカーであることは随分前に
紹介した通りですが、そのため商用車メーカー→架装メーカー間の回送が発生します。その回送の過程が、タイトル画像の姿ですね。皆さんも、こんな姿で走っている大型トラックを見たことがありませんか? 仮ナンバーを取得してシャシ・フレーム上にスペアタイヤやリアバンパーをまとめ、キャブは基本塗装のみの姿で、架装メーカーまで回送されます。
この回送ですが…私達運送屋から見れば、こんなに恐ろしくて辛い運転はありません。特に日野車の回送…!
大型車の架装メーカーは全国に点在する事は以前紹介した通りですが、ここでは、商用車メーカーとその商用車メーカー指定の標準ボデーを架装する、系列の架装メーカー間の回送に限ってお話しましょう。いすゞや三菱ふそう、UDトラックスから出荷された新車は、同じ関東エリアにある系列架装メーカーまで回送されますが(UDは系列メーカーを持っていないので、事実上の標準ボデーを日本フルハーフに作ってもらっているようです)、日野自動車は他社とは事情が異なります。日野の工場は社名通り日野市に工場がありますが、メーカーの標準ボデーを作る架装メーカーは
トランテックス、この架装メーカーの所在地は石川県白山市! すなわち、他社とは比較にならない程の長距離を回送します。私はつい最近まで小諸市在住でしたが、すぐ近くの国道18号を回送される日野の大型車を頻繁に目撃しました。国道…!? そう、約600kmに及ぶこの距離を、基本的に一般道で回送されるのです! 登録前の新車ゆえ、ETCの設置ができない→割引ゼロの高速料金がかかるのが理由と思われますが。
しかもそれだけではなく、荷物どころかボデーさえないので重量が後輪に殆どかからず、後輪のグリップがまるで効きません。だから悪天候や冬の凍結路を、こんな状態で走らなければならないのです。しかもこのルートには、碓氷バイパスや北陸の親不知などの難所が多数あるうえ、冬季は豪雪地帯や-20℃に達する酷寒地(軽井沢)の通過を強いられます。それも、新車装着のノーマルタイヤで!! 私はこんな恐ろしい仕事、できません。これを運転する某社の皆さん、心から尊敬します。
私の会社に出入りする協力会社のドライバーさんから聞いた話ですが、積雪路を走っていた時に上記の新車が走っていて、目の前に突然現れた工事個所を発見したもののスリップして全然止まれず、偶然あった脇道に無理矢理突っ込んでやっと停まった場面を目撃したと言っていました。
バスの回送について。
暗い写真で申し訳ありません。これは北陸自動車道・名立谷浜SAで目撃した、ふそうの新車です。わかりにくいですが、仮ナンバーを付けて回送中の姿ですね。深夜に仕事で上信越自動車道を走っていると、仮ナンバーを付けた神奈川中央交通や小湊鉄道、初めて聞くバス会社…主に関東方面に向けて出荷される完成車が回送されるのを、頻繁に目撃しました。どの回送車も制限速度は絶対厳守、傷はもちろんの事、できるだけ虫が付かないようソロソロと走っています。
バスの場合は、二次架装を受ける場合や特装ベース車の場合を除けば、工場出荷時点で完成車なので、トラックほどの怖さは無いかもしれません。でも…回送先によっては過酷なようです。北陸の工場から回送先の九州まで、一般道で回送されたという話も聞きましたから!
輸出用のバスについて。輸出されるバスは大部分がシャシのみで輸出先でボデーを架装するので、仕向け地によってはシャシを組み立てた状態で輸出されることが要求されます。その場合、港までシャシのみの姿で回送しなければなりませんが、その場合は平屋建て?のトレーラタイプの車載車に載せて回送されます。以前北関東自動車道を走っていた時、日野のバス用シャシを積載したトレーラ車載車を目撃しました。古河の工場に送り込まれる輸出用のシャシでしょう…左側に、バルブ用みたいなチャチなハンドルを付けた姿が印象的でした。
昔のバスの新車回送について。現在はバス車体の架装メーカーまでは、エンジンやアクスル、運転席周りの部品がバラバラで商用車メーカーから(あるいは部品メーカーから)送り込まれ、架装メーカーでボデーを含めて組み立てられて完成車になりますが、かつては商用車メーカーで↓の状態まで組み立てられ、伊勢崎や北陸に岐阜、または北九州などにある架装メーカーに送り込まれていたそうです。自走で!

以前紹介したボルボのバス用シャシです。商用車メーカーが作るのはここまでです
昔、北陸方面へトラックの定期便を走らせていた長老の話です。富山や金沢を走っていると、↑の姿で公道を自走するバス用シャシをよく目撃したと言っていました。トラックと違い、ボデーどころか運転席剥き出しの姿でですよ!

某所から入手した、陸送中の写真です。信じられん…!
だから夏場はともかく、冬は地獄だったらしい。運転手は運転席周りに菰(こも)やムシロを巻き分厚い防寒着にタオル等で目以外を完全に覆い、吹雪の中を回送していたと聞いた時には、絶句しました。その過酷さは、想像を絶しますね。防寒対策もさることながら、万一何かと衝突した時には…!?
最後に、私が目撃した大型車の回送です。大型車というより特大車ですが。仕事で東北自動車道の栃木IC付近を走っていると、向こうの方から東京空港交通のバスが走って来るではありませんか。ははァ宇都宮系統だな、と思っていたら何やら車体の幅が広い…何と羽田や成田の空港内専用の特大ランプバスではありませんか!

羽田空港のバス乗り場にずらりと並ぶ、日野のランプバス。右端には、車椅子対応のランプバス(トラックベース)の姿もあります。手前の給油サービサーも含め、写真の車両は全て構内専用車です
本来は公道を走れない、全長13m×車幅3mのオーバーサイズ車ですが、仮ナンバーを付けて先導車付で走っていました。宇都宮の架装メーカーとユーザーの間を回送されていたものと思われます。滅多に見られない場面を目撃出来て大興奮、お蔭で溜まっていた眠気が全て吹っ飛びました(笑)
以上です。このように、新車の回送だけでもいろいろとあるのです!
以下、余談です。先日、川崎市内でこんな車両を目撃しました。

川崎駅近くで目撃した三菱ふそうの小型車です。車両の特徴からして日本国内向けのキャンターではなく、北米向けの輸出車両「FE」のようですね。同じ川崎市内にある三菱ふそうの工場から港(大黒埠頭?)まで陸送中のようですが、川崎市や横浜市では、こんな輸出用車両を自走・車載車積載に関わらず頻繁に目撃できますヨ
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大型車の話 | 日記
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2017/01/15 06:13:46