
久しぶりの大ネタです。先日、
宮崎カーフェリーに就航した新造船「フェリーたかちほ」に乗船しました、その報告です。
宮崎~関西の航路と言えば、高速バスも敵わない競争力のある航路に思えますが意外とそうでもないのか、何度も法人が変わるなど意外と苦労?の多い航路のようです。その間にも使用する船体の老朽化は徐々に進み、気付けば船齢が四半世紀に及ぶ状態でした。近隣の長距離航路が次々と新造船を就航させる中でどうしても見劣りがして乗る気にならなかったのですが、最近待望の新造船が就航しました。以前から乗船を狙っていたのですが、最近になって乗る機会を得たものです。
三宮のバス停から、連絡バスに乗ってフェリーターミナルに向かいました。距離は2km程度なので、ものの数分で着いてしまいます。車内はラッシュを思わせる混雑でした。運行するのは神戸フェリーバスというバス会社で、若干の特定輸送(学校輸送)と貸切輸送以外はフェリー旅客送迎に特化した営業を行っている様子。それだけで路線と会社を維持できるのだから、神戸発のフェリーの需要の多さを感じます。
ターミナルに到着してバスを降り、乗船手続きをしました。

ターミナル本体と、中の受付です。予約番号があれば乗船名簿に記入する必要はなく、端末に番号他を打ち込めば、乗船券が発券されました。

発券された乗船券です(画像は大幅に加工してあります)。最近の国内線搭乗券みたいに、レシート状のペラペラなやつでした
船に乗り込む前に、今回乗船する船を眺めてみました。

これが今回の新造船「フェリーたかちほ」です。内海(ないかい)造船が建造した引き渡し間もない船で、全長約200mで約14.000tの船だそうです。あまり軽量でコンパクトだと、太平洋を航行する船としては揺れそうなので、これ位のサイズは必要かも? 船首部分にランプウェイは無く、全て側面にあるようです

船までのボーディングブリッジは独特のデザインで、橋本体をコルゲート状の丸い板で囲った、不思議なデザインでした。何だか飛行機の胴体の中を通っているようです

船内のエスカレーターを上がって行きます。船内にエスカレーターがあるのは、南九州の航路でよく見られますね
案内所で今回予約した部屋の鍵を受け取り、部屋に荷物を置いて、船内の探検に。まずは、航行中は入れない車両デッキを探検しました。

大型車向けのデッキです。通常の大型車だけでなく、建機までありました。こういう建機をそのまま載せると床を傷める事があるので、養生が必要なんですよね

乗用車向けのデッキです。ここに保管されるのは個人所有の車や中古車が大半ですが、珍しく新車がありました
出航時刻になると、ブリッジが離れて出航の準備が始まりました。

残照の神戸の街並みです。山が迫る港町は、独特の雰囲気ですね

船を固定していたロープが外されようとしています。
定刻を若干回った頃、船が動き始めました。その際には汽笛を何度か鳴らしていて、これは他社のフェリーでは聞いたことがなくて、驚きました。でもすぐ近くに住居が立ち並ぶ神戸でこんなことをして苦情が来ないの?と心配になる程の大音響なのです。

出航する時、社員の方が見送って下さいました。私の知る限り、フェリーで見送ってくれるのはここと志布志航路くらいのもの。わざわざお見送りありがとうございます
港を後退で離れて(船の専門用語はあまり知りません)から180度旋回し、前進し始めたのを見届けてからレストランに向かいました。

レストランの入り口から撮影しました
レストランはまだ混雑していて、15分程度待たされてからカウンター席を案内されました。ここはバイキング形式で、他社のレストランのバイキングよりは品数が少ない気はしたものの、質は良かったですよ。ありきたりの食材ばかりではなく、宮崎の野菜や郷土料理を数品取り入れるなど、好印象です。

宮崎県の食材がありました。いいですね

バイキング形式の夕食です。皿の区画?が6つしかなく、これでは不足気味。トレーはそこそこ広いので、できれば8つの皿にして欲しいです
満腹になってレストランを後にして、更に船内を探検しました。

船内の中央にある吹き抜け部分です。他社みたいな凝ったデザインではなく、低めの吹き抜けでした

案内所と、その隣にある売店です。消灯後に撮影したので、閉鎖されています

自動販売機のコーナーです。充実していて、レストランを利用しなくても何とか耐えられそうなものを売っています

でもビールはアサヒしか無くて、せめてキリンくらいは加えて欲しかったです。またこの自販機は、飲酒運転防止のため22時以降は販売が停止されます。理由が理由なので、充分納得できますが

気になったのは、この「微妙な」段差です。これでは気付きにくくて、躓いている方を何人も目撃しました

ドミトリーと呼ばれる、一般的には「二等寝台」と思われる区画です。かつての寝台列車のB寝台みたいですね。B寝台と比べてスペースにゆとりがあり、きちんとした階段があるのがいいですね
今回私が選んだのは「シングル」という一人用個室です。どうしても北九州~関西の2社と比較しての評価になってしまうのですが。

個室が並ぶ廊下です

これがシングルの部屋です。広くも無く狭くもない、ちょうどいい広さでした

机はPCを広げてマウスの操作が出来る位の広さがあり、またドリンクホルダー用の窪みがあり、これまた良い感じ。下には引き出しがあって施錠できます。でもこれ、鍵をかけられる個室ではあまり意味がない気がしますが

この個室に一つだけあるコンセントです。個人的にはもう一つ欲しい気がしますが

テーブルの上には、アメニティの入った袋がありました。意外と種類が多くて驚きました

テレビもあります。他社同様に現在地等が表示されますし、通常のテレビ番組が見られます。やはりと言うか、航行中はBSしか見られませんが。でも音声は、妙な位置から聞こえます

テレビのスピーカーは机の脇に設置されていて、寝ていると耳元から音が聞こえる仕掛けです。つまり、騒音対策ですね。思わぬ配慮に感心しました

この個室で一番感心するのは、収納スペースがきちんと確保されていること。ベッド下にスーツケースを余裕で納められるスペースがあり、他社の個室にはなかなかありません。尚、ベッドの布団は羽毛でした
その一方で、こんなことも。壁は薄いらしく、隣の部屋のイビキが意外と響いてくるのです。椅子はクッションの無いもので、それは良いのですが、鎖でがっちり固定されていて殆ど動かせない! もう少し緩めにして動かせるようにしてほしいものですねえ。そして空調…ありません。扉下のルーバー?の開閉で凌ぐのでしょうか? 私が乗ったときは暑くも寒くも無かったのですが、人によってはもう少し調整したい事もあるでしょう。エアコンを丸ごと設置しろとは言いませんが、某カフェの個室みたいな風の流入量を調整できる空調の吹き出し口があればいいのですが。また洗面台はありません。厳しい財政事情のためか、全体的にコスト優先の印象を受けました。
あと、Wi-Fiもあります。

利用するのは忘れましたが(笑)
22時頃、浴室に行きました。混雑しているかどうか気になりましたが、幸い空いていました。浴室は、洗い場は数が多くていいのですが、それに対して横長の浴槽は狭い気がしますが。それに入りにくいです。混雑時は出入りしにくく、浴槽の利用を諦める人が多い気がします。脱衣所はコインのリターン式で施錠できるのですが、事前にそんな案内はありません。だから鍵をかけている方は殆どいません。個室にある方式の方が良かったのでは?
翌朝。5時過ぎた頃にデッキに出ると、ちょうど雲の隙間から太陽が顔を出したところでした。

テレビの撮影クルーがいて撮影を行っていました
この船では朝食の営業もあります。
朝食のレストランですが、営業開始が7時。到着時刻に対して、営業開始が遅くて利用可能な時間が短いです。勤務時間の都合もあるのでしょうが、できれば6時半から始めて欲しいのが本音です。6時20分過ぎから並んで2番目でしたが、6時半を回った頃には後ろに長い行列ができていました。列に並んで食事をするのはあまり好きではありませんが、今回ばかりは仕方がありません。

後ろから煽られている気分で、辛うじてこんな盛り付けとなりました。後から追加を取りに行く事はほぼ不可能でした
朝食については、ウインナーや筑前煮など、さすがに定番の食材が並んでいますが、その中でも生卵やホウレンソウ等で宮崎県産の食材を使っていて、好感が持てました。金額から考えれば、破格のコストパフォーマンスでしょうね。この辺りは、宮崎県が多額の出資をしている事が影響しているのでしょうか?
食事中に眺めた景色は一面の海で陸地は何も見えないのですが、トビウオの飛行?が見られて、面白かったです。
8時近くになったので外の様子を見ると、早くもシーガイアが横に見えていました。これは早く行動しなければ、と部屋を出て、案内所に自室の鍵を返却。すぐに下船口に並びました。既に数人が並んでいて、一番とはなりませんでした。8時30分前に軽い衝撃があり、接岸したようです。その数分後に扉が開き、下船が始まりました。

宮崎港に到着しました
満を持して登場したこの新造船ですが、宮崎県にとって期待の星らしく、あちこちでこの新造船について紹介があり、宮崎空港にまで「新造船就航」のバナーがあったのには面食らいました。少々コスト優先な面はあるものの、全体的には満足です。特にレストランのメニューは良かったですよ。
この新造船の、今後の活躍に期待します。