【トヨタ ビスタ/コロナ/ナディア、コネクティングロッド取付ボルトが破損】
2012年4月11日(水)
トヨタ自動車は11日、『ビスタ』『コロナ』『ナディア』3車種のコネクティングロッド取付ボルトに不具合があるとして国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届け出た。
対象となるのは、1996年12月9日~2001年12月3日に製作された7万0410台。
原動機内部のコネクティングロッド取付ボルトの強度が不足しているため、エンジンオイル中の成分の影響でボルトが折損し、エンジンが破損して走行不能や火災に至るおそれがある。
全車両、コネクティングロッド取付ボルトを対策品と交換する。また、使用者に定期的なエンジンオイル交換の必要性について周知する。
不具合発生件数は107件で、市場からの情報と国土交通省からの指摘でわかった。現在のところ、事故は起きていない。
(レスポンス 編集部)
96年以降に生産された3S-FSE搭載車の、その全てではなく一部車種でのみ起きた不具合らしい。
不具合の原因が「エンジンオイル中の成分の影響」というのが非常に奇異に思えて、自分が思考を巡らせても何の得にもならないことを連々と書いてみる。
3S-FSEということは、2リッターの3S系の「ハイメカツインカム(非ヤマハ設計)」のEFI-S仕様ということで、3S-GE搭載車よりは下だが比較的上級グレードにある車が対象と読み取れる。
EFI-S仕様とEFI仕様とで腰下が異なるとは思えないが、EFI-S仕様のほうが高出力のため、一見、コンロッド大端の応力が大きくなってボルトが耐えられなくなったということのようにも思える。
ハイフン直下の『F』の符号は「ハイメカツインカム(笑)」仕様を表し、それはつまり『G』符号のスポーツエンジン(ヤマハ設計)とは異なりトヨタ社内で設計された廉価版ということである。スポーツエンジンではないから、主にコストダウンのため各部の強度を落としてくる。安価な材質へ切り替えるとか、薄肉化して材料の使用量を減らすとか、加工工程を省く(表面加工とか熱処理とかショットピーニングとか)等、必要とされる強度を低く見ることで仕様を落とすことが可能となる。
もし、そうしたコストダウンがトラブルの原因である「強度不足」を招いたのであれば、全ての3S-FSE搭載車にリスクがあるということになるが、リコール対象には同エンジンを搭載したセリカ、カリーナED、コロナエクシヴ、カルディナ等は含まれず、限られた時期に生産された一部の車種に限定されている。
車種が絞り込めるということは、組んだ工場が絞り込めるということでもある。対象車種のうち1代限りでモデル廃止になったナディアはトヨタ車体の富士宮工場で組まれている。問題の3S-FSEエンジン自体を富士宮で組んでいたかどうかは知らないが、当然、富士宮で搭載される3S-FSEに使われる部品を供給する部品メーカーが絞られてくる。全ての3S-FSEが対象でない理由がここにあると推察される。
世界一品質管理に五月蝿いトヨタのこと、トヨタ自身が設計し定めたであろう各部品の製造工程や仕上精度から外れる部品(しかもエンジン内部の重要部品)を部品メーカーが納入したとは考えにくい。使用する材料も指定され、材料の成分は全てミルシートで管理されている筈。つまり、恐らく部品メーカーはミスを犯していない。
ここで引っ掛かるのが原因とされる
「エンジンオイル中の成分の影響」というもの。
トヨタのサイトで確認すると、
「劣化したエンジンオイル中の成分の影響」とある。一語抜けるだけで大分話が変わってくるぞレスポンス 編集部よ。
劣化したオイルには何らかの酸化物なり硫化物なりが生成しているだろうから、これが金属材料に影響することは有得る。コンロッド大端ボルトは当然合金であるから、主成分である鉄に幾つもの元素を添加して機械的性質を得ている。合金は、マヨネーズにおける酢と油と鶏卵のように化学反応によってひとつの性質を成しているわけではないので、合金に含有される元素と強く結び付く性質がある物質と触れると、合金に含有される元素は合金から脱してしまい、結果、合金は所期の機械的性質を失ってしまう。
では何故富士宮だけなのか。
ボルトのメーカーは往々にして重厚長大企業ではないから、材料である金属を自社で精錬していない。恐らくは特殊鋼メーカーからの購入である。特殊鋼メーカーは合金を精錬するのが仕事だが、高炉を持っていないので主原料である「鉄」を鉄鉱石から作ることが出来ない。従って鉄は高炉を持っている大手鉄鋼メーカーから購入することになる。
が、実は別の購入ルートがある。スクラップ(鉄屑)や、スクラップを原料として鉄を作る電炉メーカー材である。高炉材と異なり、スクラップや電炉材では微量元素の含有が避けられない。バージンパルプと再生紙の違いと似たようなもので、スクラップや電炉材はいくら精錬しても微量の異物が残り、それはあまりにも微量なのでミルシートには表記されない。つまり、管理できない。その「異物」として介在する微量元素が、劣化オイル中の成分と結び付いて材料強度の低下を招いたのではないか。
かなり昔の話ではあるが、かつて某2輪メーカーのアルミシリンダーにクラックが入る不具合が頻発し、その材料を調べると、微量のSiが含まれていた、と。材料であるアルミ塊を購入して自社で鋳造するのだが、購入材はSiを含む仕様になっておらず、よくよく調べると、アルミ塊を生産した工場では副原料としてアルミスクラップを使用していた、と。そのスクラップは主に自動車用アルミホイールで、そのアルミホイール材に合金元素として含有されるSiが、アルミ塊へ再生されてもなお微量元素として残留していたのが原因であり、材料購入先を変更したら不具合は解消した、という話を聞いた。
今回のトヨタの不具合も、それに類する問題なのだろう。他の工場の3S-FSEで問題が起きていないのは、ボルトの材料の購入先が異なるからであろう、と。
本当かどうかは私の知ったことではない( -`д-´)キリッ
ここまで書いてきてふと気になったのが、ホンダが最近発売した低価格オートバイ「NC700シリーズ」。あれのフレームは、インドで買った鋼パイプをタイで曲げて仮組みまでやったものを日本で溶接しているらしい。コストと品質を天秤に掛けて妥協しまくった結果だろうが、インドのパイプは本当に大丈夫なのかと。環境の悪いところで使ったら介在物のせいで溶接が剥がれたりしてバラバラになったら嫌だな(;・∀・)
Posted at 2012/04/12 21:37:13 | |
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