SunLakeの成績がボロボロだったおかげで 表彰台に上る必要も無く(^^;;;
芦屋の準備にとりかかる。
今年の学生君は 例年とは異なりよく声が出てて学生君主導で統制が取れている
・・・といっても レースの経験が無いので節目節目には指示する必要がある。
グリッドまでは一緒に車を持っていく。
グリッドは2番 フロントロー

問題なさそうなので PITにもどり マネジメント準備
目標は64周回 予めスタートドライバーMAには目標タイムは伝えてあるけど
無線チェックで再確認。

ドライバー連続時間制限の関係で 5時間耐久でのスティントは4スティント
順番は 芦屋OBのMA⇒T(SunLakeにも乗った)⇒学生キャプテンMI⇒MA
スタートドライバーのMAは ソーラーカー業界でもトップ数人に入る腕前の持ち主
芦屋OBなので車も知り尽くしているので不安は無い。
僕の作戦は MAとTで目標タイムより早めで周回してもらい レースが落ち着いた時点で初心者MI 多分目標タイム出せないだろうから 最後はMAのスプリント力に賭けるというもの。
今回 芦屋は新品のLI-ionバッテリーを使っており
しかも 車の空力を大幅に改善できており 昨日のFPでのデータでは晴れていれば目標タイムは楽勝! のはずであった。
オープニングLAPでは MAが高揚していたのか?無茶苦茶早いタイム
電力消費も多すぎる 2周目もかなり早く電力を食っている。
あ~~ 食いすぎだよ~ 3周目からようやく目標タイムへ
・・・・ただ天気がものすごく悪く
しかも 数十分後には雷雨予想となっている。
苦しい しかし 一度ペース落として 急に回復した場合
最高速の伸びない芦屋は苦しい展開となる。
僕の決断は 4分30ペースを4分50まで落とす・・・であったが・・・
OBであり スポンサーでもあるN君が「今すぐ5分30まで落とすべき」
と強く言ってくる 5分フラットまで落として様子見の決断にしたんだけど
鈴鹿のアナウンスとかマーシャルが直接ピットに来て「ドライバー感電対策大丈夫か?」とか言ってくるごたごたに負けて5分20まで落とす指示をしてしまった。マネジメントの電力消費カーブにおいては正解のこの指示が後々の
大きな大きなつけとして終盤に大きく影響してしまうとは
この時点では予想できなかった。
1時間24分で ドライバー交換 2ndドライバーは相棒T君
天候が回復してきたので ペースを4分45に戻す
さずがT君 恐ろしいほどのタイム精度と電力消費の安定感
ここらは やはり制限クラスで長年乗ってきたドライバーならではの業
消費が良いので タイムをさらに上げさせても電力消費は良好で結構貯金ができた。
T君とは気心も知れているので 無線の声の雰囲気で車の調子やドライバーの状態がわかる。しかも安心安全 マネジメント担当としては楽できる貴重な時間。
T君ドライブの間に昼飯に買ってきたおにぎりとパンを食べて昼食終了。
レース開始2時間46分経過時に ドライバー交換とRモーター側のタイヤ交換
予選&FPでタイヤの減り具合をトレッド厚みと重量変化のデータ見て
タイヤ交換はモーター駆動輪のみで良いと判断した。

ドライバーはT君⇒学生初心者MI
昨日のFPでは目標タイム4分50切はできている。
・・・が本戦は結構車が走っているし 同一ペースに近い車とのやり取りができるかな~~~
このころにはレースの情勢がだいぶ固まってきた
芦屋は 総合4位クラス4位 総合3位クラス3位 の車との位置はすごく近い
総合4位クラス4位ということは 3位の車を抜かないと何の章典も無い
だがしかし MIは初心者なので器用なことができるわけでもなくペース指示しか出せない
「走りやすいポジションで 目標タイムを出せ」のみであるが・・・・
ちょうど 3位の車と絡みだした・・・
3位の車(以後KAと呼ぶ)
KAは最新コンセプトの車で空力が良いので縦が早いがコーナリングはいまいち
芦屋は設計は古く最高速は伸びないがコーナリングは安定して早く走れる。
絡むと走りのパターンが違うので電力ロスになるんで後ろに下げたいけど
ここでタイムロスもしたくない
MIから「KAと絡んで すごく走りにくいけど どうしたらいいですか?」と連絡が入る。
この時は 鈴鹿サーキットのモニターで2台のバトルの様子がずっと映っていた。
MIの走りが予想より良かったので「抜けるんなら 思い切り行って 1回抜いて離れたらペース守ってくれ」という指示を出す。
頑張ってくれて一度は抜いたんだけど KAも3位を死守したいらしく ペースを上げて再度抜かれる。
KAがペースを上げてくれたおかげで、MIには 「後ろで良いから目標タイム出してくれ」と指示するものの・・・
結局は目標タイムを切れたのは1度のみ
タイムにして1周5~10秒遅いんだけど これが10数週になるとボディブローのように効いてくる。
チェッカーまで残り1時間半を切った時点でアンカードライバーのMAから「いつでも行けますよ!」と声がかかるが・・・・・
芦屋は学生チーム ドライバーMIはキャプテンとして頑張ってくれたこともあり なるべく長く乗せたい。
勝負師としては失格なこの判断 戦略担当として僕はダメな人間です。
残り1時間10分の時点でドライバー交換 KAは芦屋より1周先にドライバー交換している。 アンダーカットできるか?
ダメだ こうなるともうドライバー頼み
とにかくKAよりも 先にチェッカー受けないと表彰台は無い
この時点で 残り20分まで 見えるか?見えない位置で着いて行って
最後のスプリントで勝負するのか? 今すぐ勝負仕掛けて前に出て抜かせない作戦で行くのか?の選択に迫られた。
僕が長年やっていた制限クラスだと使える電力が無いので残り20分くらいまでは動かないんだけど・・・・
なんせ芦屋の車は電力はある。
ドライバーには「とにかくKAを抜け 抜いたら抜かれるな! 電力は心配すんな!」という指示。
そして 今大会で1番激しかった 3位争いのドッグファイトが始まった。
MAは期待通りにKAを抜いたんだけど KAも必死に食い下がる。
・・・だけどMAを前に出した時点で 芦屋を抜くことはできないだろう。
芦屋の関係者の全員がそう考えていた・・・・・・
KAは直線が早い 鈴鹿のモニターに映し出されるバックストレートの速度差は10~15Kmも芦屋より早い。デグナーからスプーンで見えないくらに離れていてもシケイン手前でビタビタに着けてくる。
MAからは「KA 縦が速い ヤバイ・・・」
ピットからの連絡は「コントロールラインでタイム差1.6秒」とか タイム差のみ
ドライバーからは 時折電力を心配していたが
「電力は心配すんな! とにかく抜かれるな!!!」と繰り返す。
・・・・・が実は バトルモードでの電力消費は予想をはるかに超えており
電力的にもヤバい
だがしかし 引くわけにはいかない あわよくばコーナー苦手なKAが頑張りすぎてスピンするか?タイヤバーストするか?でもしてくれないか?
最もタイヤの心配は芦屋もであるが、ドッグファイトを仕掛けたのはコッチであり 行けるとこまでいっちゃえ~!
ソーラーカーレースの3位争いとしては史上まれにみる僅差の攻防は40分以上にわたって繰り広げられた。
その攻防はモニターにずっと映し出されている。KAは周回遅れを巧みに使いながら微妙なラインでKAの勢いをそぎ落とす「上手い 実に上手い」
ソーラーカーでのバトルをやったものにしかわからない微妙なやり取りを実に上手く制している。普通の車とは違うスキルが必要なこのバトル 地味ではあるが、判っているものには実に面白いものであった。
残り30分を切って KAが今までと違うスーパーLAP4分17秒をたたき出し芦屋を抜いた。
このタイムは予選モードの走り レース終盤にこのタイムが出せるという事は電力の余裕は明らかにKAが有利であることの証明。
おりしも 芦屋の電力も心配な水準に入ってきた。
ドライバーには「できれば見える位置くらいでプレッシャーかけてほしい」と指示 しかし 長時間のバトルモードで電力使いまくったおかげで 放電レートが高かったせいか? 電圧の落ちが若干早く 残り15分で完走モードに切り替える。
50分にもわたるドッグファイトに決着がついた 勝負あり KAがパンクでもしない限り芦屋の表彰台は無い。
チェッカーを受けることに目標を切り替える。
淡々と2周回してチェッカー受けるだけ 誰もがそう思っていた。
そして チェッカーを受ける1周回前 チェッカー提示までアト5分
MAから緊急無線連絡「デグナーで左前ホイール外れた。レース終了後回収車に乗って帰る!」
どよめく芦屋PIT 「なんで? ちゃんとチェックしたのに???」
とにかく 芦屋の戦いは唐突に終わった 念願のチェッカーもかなわず・・・
ドライバーMAが帰ってきて ホイール外れの真相がわかった。
外れたのはモーター駆動輪 レース途中に交換したホイールだ。
なんで「左前が外れた」と言ったのか? それはOBであるMAの学生くんたちへの優しさ「だってさ~ あの時点で”モーター駆動輪”って言ったらさ~ 交換してくれた学生くんへのショックが大きすぎでしょ!」
とっさにそんなことも考えれるのか? MA 優しすぎるぜ
ま~~~ 交換してくれた学生くんは真相を知ったその後泣き崩れたのだが・・・・
「君らのせいじゃないよ ”交換時にはオーバートルクでシッカリ締めろ”って指示出さなかった僕の責任だよ」
レース展開にしても 序盤に信念貫いてペースを落とすのを5分までで耐えていれば僅かだけどKAに勝てるシナリオはあった。
学生くんたちに いつも偉そうに講釈垂れていたのが恥ずかしい。
まあしかし ホイールが外れようとチェッカー受けようと5位の車には周回差をつけていたので順位は総合・クラス共に4位で何ら変わらずなんだけど ソーラーカー耐久でのチェッカーは非常に重要な意味を持つ。最後まであきらめなかった証 だからこそ僕はチェッカーにこだわり続けてきた。
鈴鹿最後のチェッカーを学生くんたちと楽しみたかった。
2チームで最低でもどっちか表彰台には乗れるよね~
レース前 僕は簡単に考えていた。
SunLakeは車体ポテンシャル的には確実に総合3位クラス3位は狙えたが、バッテリー管理すらまともにできない僕らにはその資格はなかった。
芦屋は3位になるシナリオはあったが僕の信念の無さがそれをつぶしてしまった。
ただ、最後までわくわくしたレースを学生くんたちと楽しめたのは良い思い出になる。

最後の鈴鹿は アマじょっぱい感じで終了。
負ける人が居て 初めて勝つ人が居る

思えば 良い思いもさせてもらった クラス4連覇 そして史上初800Wクラスでの総合2位 3位 3位 の3年連続総合表彰台で 4年で7回のシャンパンファイト
ギリシャのプレオリンピックイベントの招待状をもらいWRCスタッフ運営のギリシャラリーにも参加できた。
敗者として素直に今日の主役を 祝福しよう。

何にせよ 1994年から僕の夏は鈴鹿サーキットのレースでピークを迎え
レース終了後に夏が終わる それを27年間も繰り返してきた。
一旦はレースから撤退したけど 僕は芦屋の某大学に拾ってもらい
結局は鈴鹿から離れられなかった。
入り口があって出口がある。始まりがあって終わりがある。
僕の夏は終わった。
了