2019年01月30日
1996年、「スカイラインワゴン復活!」ということで大いに話題になったステージアだが、実際のところスタイリングは当時のスカイラインとは似ても似つかず、さりとて型式から読み取れるその車の正体は実は「ローレルワゴン」であったステージアであるけれども、時は折しもワゴンブームでステーションワゴンの販売が絶好調であった時期、スカイラインのブランド力を大いに利用してステージアは結構売れたのである。
また、ニッサンのLクラスワゴンと言えば一応セドリックワゴンはあったものの、その当時で既に3世代前のモデルを継続生産し続けるという旧態依然ぶりだったので、真っ当なLクラスワゴンを求めるユーザーからも一定の支持を集めたものと思われる。
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ところでC34ステージアと言えば、何が悪かったのかわからないのだが、凄まじいくらいに燃費が悪い車として非常に有名であった。
当時のステーションワゴンと言えば大馬力ターボに4駆は当たり前という華々しい時代であったが、それでもステージアは頭一つ抜けて燃費については評判が悪かった。
RB25ターボ・アテーサ・重量級のボディ・ATしかないミッションなど、確かに燃費が良くなる要素はどこにも無かったものの、とにかくリッター5kmくらいは当たり前というくらいの大食らいであった。
でもカタログ燃費調べてみたら10・15モードで7.7kmとかいう、元からしてかなりアレな数字が載っていた。
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何はともあれやはりこの時代のニッサン車特有の雰囲気がぷんぷんする車。
今の車よりも全体的にベルトラインが低く総じて見切りのいい視界、ニッサンセダン系車種に共通する低めのドラポジ。そんな車の運転席に収まって入ってくる景色はまさしくザ・90年代のニッサン車である。
走った感じもスカイラインとかあの辺りの雰囲気と一緒。
最近知ったんだけど、4駆のステージアってフロントサスがマルチリンクになってたのね。
型式から見て中身はローレルと全くおんなじだとずっと思ってたけど、4駆は少なくともメカニカル面ではスカイラインと同等にグレードアップされていたわけだ。
そのせいか、901世代の車特有の、線が細い感じがするんだけどしなやかな走りをするんだよね。
インフィニティみたいな重量級でもふた回りは小さいような車と同じようなフットワークをしていた軽さ。
それでいてフラットに落ち着いた走り。
最も、同時に剛性が低い感じがするのもあの当時のニッサン車って感じで、この辺りが特有の線の細さの原因だと思うんだけど、たぶんダンパーがヘタってたのも大きいと思うけど、サスストロークが間に合ってる時の繊細さに似合わない、ドンと突き上げられた時の強めのハーシュネスもまた懐かしい感じだった。
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RB25DETエンジンは後期の280馬力仕様。
とはいえ意外とトルク感もスムーズだし、振動感が無いのは直6のご利益か。
イジるとあんまりいい印象無いけど、ノーマルだと割りといい感じね。
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そういうわけで、見た目はローレルともスカイラインとも取れない微妙なスタイリングをしていたけど、中身は確かにスカイラインだったんだなぁとちょっと思ったわけである。
最も、あの当時のニッサンの中上級車がだいたい似たような走りをしていた、と言えばそれまでだけど。
Posted at 2019/01/30 03:37:39 | |
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2019年01月28日
初代は当時世界的に評価と売上を急激に伸ばしていたアウディフィロソフィの究極系とも言える宇宙船のような斬新なスタイリングが評判を呼んだものの、宇宙船っぽいのは格好だけにしておけばいいのに、なんと条件が揃うと実際に宇宙へ向かってアイキャンフライしてしまうという問題を起こしてしまい、同時期に低品質モデルを乱発していたベンツと並んでドイツ車の凋落の象徴のような存在にもなっていた。
しかしTT特有とも言えるシルエットは何者にも変え難く、なんとなくおっとりしたイメージも強かった初代に対して2代目以降は「如何にもアウディ」「如何にもスポーツカー」というイケメンフェイスが組み合わされつつ、初代のUFOみたいなシルエットのまま生き残っているアウディのミドルクラスクーペである。
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しかしながら、意外とこの車は「格好だけ」の車と言える。
そもそもエンジンからして標準仕様には230馬力の2リッターターボと180馬力の1.8リッターターボという、最近の潮流からすれば非常におとなしいエンジンしか用意されていない始末で、雰囲気的にはA4にクーペのボディを被せたような車と言ってしまえばそれで事足りる感じ。
元々硬質な乗り味が特徴のアウディだからそれでもスポーティな感じは十分に出ているんだけれども、この車らしい走りの個性というものは無いに等しい。
それだけに乗っていて快適なスポーツカーではあるんだけれども、本気の走りには付き合えない車ということで、とどのつまり日本で言えばプレリュードみたいなポジションの車なんだよね。これ。
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とはいえ、アウディはVWグループの実験場的な趣も強いが、先進的なスタイリングを備えるTTはまさにそういう最先端テクノロジーを後先考えず搭載するにはうってつけといった感じで、全面液晶パネルを採用し、インフォテイメント関係をほぼ全てそこに統合したデジタルコックピットがまさにその象徴とも言える。
逆を言うと、計器類は勿論のことオーディオからナビから車両設定に至るまで、全てが運転席のメーターパネル「のみ」に表示されるため、同乗者には全くつまらない車になっているということを心しておかなければいけない。
それを受け入れることが出来るのならば、敢えて虚飾を廃したインテリアもまたハイテクを表現するデザインとして肯定的に受け入れられるもので、ある意味テスラやプリウスなんかのどでかいモニターがセンターに配されているデザインよりも更に先鋭的で未来的な印象を受ける。
便利かと言われると微妙な感じもしますけど。
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ところで、最近ドイツ勢が熱心に効率改善の手段として導入しているDCTのコースティングモードを初めて体験した。
何、なんてことはない単にアクセルを離して惰性走行に移った際にクラッチを切ってしまうという、如何にもDCTらしい構造上の特徴を活かした機能である。
とはいえ常にコースティングモードは作動しているわけではなく、いわゆるエコモード(アウディではエフィシェンシーモード)に入れないと動作しないものである。
そしていざエフィシェンシーモードにしてコースティングモードを作動させてみると・・・アクセルを離した途端クラッチが切れてエンジンはアイドリングに落ちる。
そして車はスーッと滑るように「滑走」する。
昔のトルコンオートマみたいだ。
しかしアクセルは勿論ブレーキを踏んでもクラッチはエンゲージされ、制動時には有効にエンジンブレーキと回生充電の活用が行われる。
この辺りの一連の制御は極めてスムーズに自然に行われるが、自然過ぎて昔のトルコンATに先祖返りしたような挙動にも感じられる。
結局トルコンでいいんじゃん。
しかしながら、残念ながら自分が思っていた懸念の部分もまたコースティングモードは予想通りの挙動であった。
結局、惰性走行で走れる距離を大幅に伸ばす・・・という思想は良いのだけれども、クラッチが切れている以上、一緒に燃料カットをしてしまうとエンジンが止まってしまうのでアイドリングはさせ続ける。
しかしエンジンを回し続ける以上は一定の燃料は消費し続けるわけで、当然瞬間燃費的に見ればコースティング中はかなり「悪い」数字を指す上、回生充電で回収できたはずのエネルギーまで捨ててしまっている・・・これで本当に「経済的」なのかっていうね。
しかも高いギアならクラッチ繋ぎっぱなしでもエンブレの強さなんてたかが知れてるしね。
電車みたいな走り方を理想とするのならばコースティングモードも生きる運転法があるのかもしれないけれども、少なくとも自動車の特質やそもそもゴムタイヤと鉄輪の摩擦の差、或いは自動車の実用上の加減速の比率から考えると、「電車みたいな走り方」を自動車でするのってかなり無理があるんだよね。
この機能が初めて出てきた頃にも考察したけれども、コースティングモードが現状有効に活用できるシチュエーションって非常に特殊だと思うんだ。
日本なら田舎の山ン中をブチ抜くバイパスを走っているようなときとか。
或いはドイツ・ヨーロッパではそういう道が頻出するのか。
どのみち交通量は極端に少なくて、「自分」の走りが存分に出来なければ意味がない。
結局これって卓上で理論をこねくり回しただけの機能なんじゃないかなって。
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正直な話、万能の効率向上策としてコースティングモードを有効に活用しようと思ったら一緒にアイドリングストップさせてしまう以外に方法が思いつかない。
最近の車なら補機類の電動化が進んでいるので、極端な話走行中にエンジンを切ってしまっても安全性は確保できると考えられるし。
或いは、クラッチを繋いだままでもコースティング並みに車を惰性走行させる術もあるんですよ。
気筒休止を活用するとかね・・・。
Posted at 2019/01/28 21:52:26 | |
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2019年01月24日
いよいよエアロモデルは顔面だけ見たら1000馬力くらいありそうな見た目になった30アルファードの後期型だけれども、後期型になって装備だけでなくシャーシの方も結構変わっている。
特にV6モデルはエンジン・トランスミッションまで新型に換装となったが、今回はまず4気筒。
第一にボディ剛性の強化が図られたらしいが、それに関して「前の方が乗り心地が良かった」という声が割りと聞かれるような気がする。
勿論ボディ剛性でも乗り心地は変わるけれども、直截的に良し悪しが変わるくらい変化するか?と言われると、実際乗ってみて感じたんだけれども、これ足回りも変わってるな。
公式では明言されていないのでよくわからないけれども、一応メディア方面では少なくともダンパーには手が入っていることを記事にしている媒体は存在している。
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ではどういう風に変わったか、と言われると、一言で言えば「昔のクラウンから今のクラウンの乗り心地になった」である(笑
アルファードはその巨体故か、かつてのハイエースからの伝統なのか、基本的に素早い動きが苦手な柔らかい乗り味が特徴的であり、何事にもまずサスペンションが沈み込み荷重が動くのを待ってから車が動き出すような感じで、まさにそれがペリメーターフレーム時代のクラウンそのものな感じであった。
それが故に大変乗り心地の良いクルマであり、この辺りイマドキの高級セダンでは失われた古き良き時代の上質感が息づいている感じだったのである。
しかし、30後期型ではマイチェンでシャーシ全体に手が入り、特にダンパーがしっかりとした感じになったので、この辺りの動きの鈍さがいい感じに消えて、車格なりにシャッキリとした動きをするようになった。
勿論、絶対的なレベルでのアジリティはようやくエルグランドに並んだ?ってレベルであるけれども、ある意味昔のクラウンレベルの機動性しか無かったアルファードからすれば長足の進歩である。
ただ、その分だけいい意味で取ればフラットな乗り心地に変化したのだが、減衰力の立ち上がりが確実になった分硬くなっているのも確かで、今までならソフトにいなしていた部分も今度の車は割りとハッキリ路面の状況を伝えてくるので、この辺りがパッセンジャーの視点から見れば「乗り心地が悪くなった」と捉えられたのだろう。
ドライバーズカー、或いはアクティブセーフティの観点から考えれば良い方向に進化しているのだが、反面この車はすでに世界に名だたる高級パッセンジャーカーの1台であり、乗員目線からすれば必ずしも正解ではないところにこういうところの難しさを感じるのである。
でも、普通の人がテキトーに乗っても車酔いしにくくはなっていると思う。
しかし、そうまでしても二者択一のパッシブサスを選び一挙両得の電子制御サスすら復活しないのがアルファードの不思議なところ。
Posted at 2019/01/24 21:42:46 | |
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2019年01月07日
ポルシェというブランドは何気にエントリーモデル対策もしっかりとやっている会社で、FRスポーツのお手本にもなったの924~968辺りなどは記憶に新しいところであるけれども、21世紀のポルシェはマカンのようなグループ内でプラットフォームを使い回してるような流行りモノや911のコンポーネントを有効活用したボクスターをそのポジションに据えている。
奇しくも初代ボクスターは911の21世紀の形として、水冷化や涙目と呼ばれたイメチェンで賛否を呼んだ996型と同時期に、上記のような生い立ちを持って登場してきたので、非常に注目を集めたモデルでもある。
しかしコンポーネントを流用しているとはいえ911の兄弟車なのかといえば何故かRRよりも素性的に有利なミッドシップになったりと、意外と一筋縄ではいかないのだが、エントリーモデルらしくバリューを重視した作りになっているので、スポーツカーとしての序列は当然911>ボクスター(現・718)である。
またボクスターはオープン専用モデルであるなど、単なる廉価モデルとはちょっと違った立ち位置にも位置づけられているようで、かつてのFRポルシェのような安物感が出ることもなく、新世代のポルシェを象徴する存在として現在までその命脈を繋いでいる。
ちなみに2代目からはボクスターのクローズドルーフモデルとしてケイマンが派出している。
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スポーツカーの代名詞・ポルシェとはいえ、大変ボクスターは乗りやすい。
普通に乗ると拍子抜けするくらい乗用車のようなおっとりとした動きを見せるのがボクスターで、スポーツモデルに乗るにあたっての緊張感など普段遣いでは一切いらない。
操作系もスポーツモデルとしては軽く、クラッチ以外には大きな力はほとんど必要ない。
爪の先まで神経が行き渡っているようなシャープな走りという意味ではBMWや、或いはその他のスポーツモデルの方がいつ何時もそういうわかりやすさはあると思う。
しかし万事そういう緩い動きなのかと言えばドライバーが素早い操作・・・つまりそういう動きを要求すればそれに呼応してスポーツカーらしい研ぎ澄まされた部分を出してくるなど、この辺りの懐の深さ・引き出しの多さはよく出来た車特有のもの。
ベンツとは違った意味で実家に帰ってきたような・・・そんな昔からずっと乗っているかのような錯覚を覚える車である。
ボクスターの場合ミッドシップなので、前後オーバーハングの慣性感無く中央に集まったマスを軸に旋回する感覚も心地よい。
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エンジンはフラット6・2.7リッターのNA。
初代の頃から変わらぬエントリー仕様のエンジン・・・と思ったら、一旦2.9リッターまで排気量が拡大されたあと981でまた2.7に戻ってたのね。
最早水冷であるのに、何故か空冷時代のようなバサバサしたサウンドも残しつつも綺麗に回るエンジンだけど、正直パワー感はあんまりない・・・しかし大変トルクフルでフレキシブルなエンジンで、アイドリング付近からの加速も全く苦しがらずこなすほどの粘り強い特性。
恐らくパワー感をあんまり感じなかったのは完璧なまでのフラットトルク特性な部分もありそう。
正直、スポーツカーエンジンでしかも6発の割には小排気量になるのでこの辺りの乗りやすさは全く期待していなかったので、これは嬉しい誤算。
しかもクラッチやスロットルの味付けも最高に調律されていて、必要な駆動力を繊細に自在に引き出すことが出来る。
こんな乗りやすいドライブトレーンは早々にあるもんじゃない。
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流石に乗り心地・・・という点ではスポーツカーセッティングであり、硬いバネにストロークの短いアシでは路面のギャップ・アンジュレーションを片っ端から拾いまくる。
残念ながらPASMは非装着車だったので、この車ではそういう如何にもスポーツカーっぽいところを常に甘受することになる。
しかしオープンボディとは思えないほどの強靭なシャーシのお陰でハーシュネスは完全に抑え込まれており、それらの入力をともすればインフォメーションに転化している。
ただ、この辺りの力を力で押さえつけているような作りのお陰で、なんだかんだで乗り味はしなやか・軽快という言葉からは程遠く重くゴツい。
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ポルシェのブレーキは世界最高のブレーキとよく言われるけれども、確かにペダルの剛性感や制動力のリニアリティは今までに体感したことがないレベルで、効き以外はどこのブレーキも一緒でしょと思っていた自分から見てもポルシェのブレーキはまさに別格。
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ユーザビリティの面では、オートエアコンのように見えて実はマニュアルエアコンという謎の仕様が気になった(笑
あと、乗降性が大変悪い。
恐らくドラポジが低く寝すぎているのが原因。
かつて911では「車を着る」と評されるほどタイトなコックピットが特色でもあったが、そんな「着る」と言うほど室内は狭くない、むしろオープンモデルとして考えれば快適で広いくらいなのにちょっとこれは・・・と思うレベルなのは、どこまでも快適かつ完璧にドライブできるドライビングポジションを優先しすぎた弊害って感じ。
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トータルで見ると、この車はスポーツカーというよりはGTに近い感じ。
単に何も考えずに乗ればZの親玉みたいな、そんな車。
(そういえばプアマンズポルシェとかよく言われますね。あの車)
なんだかんだでエントリーモデルなので、万人受けを狙った感じなんだろうね。
でも、ドライバーが考えていることを完璧に見透かしているような車の動きはまさに良い素材を良い腕で料理した機械特有の、いい意味での精度の高さ・繊細さが車全体に漲っていて、ポルシェの名刺代わりとしてこれ以上の存在は無いと思う。
なんせこれで当時600万でしたからね。
ただあまりに機械として完璧過ぎるので、色気的なものが薄い。
そういう意味ではオタクチックだし、フェラーリなどの官能性優先のブランドとの棲み分けも出来る、そんな車。
Posted at 2019/01/07 20:52:38 | |
インプレッション | 日記