
カマキンと聞いてすぐに何のことかわかる人はまれでしょうね。
オカマの金○とちゃいますよ。(すみません、品のないオヤジギャグで)
カマキンとは鎌倉近代美術館。
以前から一度行ってみたいと思ってはいたものの、ま、その内行けばいいわと悠長に構えていましたが、どうしても今月中に行かなければいけないことになってしまいました。なんと今月で閉館。
鎌倉近代美術館は鶴岡八幡宮の境内の中にあり、敷地は期限付きの借地で、今月いっぱいがその期限とのこと。現在のところ、解体はされないとのことですが、もう一般の人が気軽に中に入ることはできなくなると思われます。
設計は私が生まれ育った羽島市出身の坂倉準三。鎌倉近代美術館は彼の代表作であり、出世作です。この地方の人は羽島に千代菊と言う酒造メーカーがあるのをご存知だと思います。坂倉は1901年にその蔵元の四男として生まれました。私の高校の遠い先輩でもあります。
フランスに、20世紀最大の建築家ル・コルビジェという建築家がいました。このル・コルビジェに弟子入りした日本人が3人いました。丹下健三(代々木体育館や新旧都庁等が代表作)、前川國男(京都会館、東京文化会館等が代表作)、そして坂倉準三。
この内、前川國男だけは学生時代に講演を聞いたことがあります。
鎌倉近代美術館はもちろん坂倉準三の代表作の一つですが、他にも1937年パリ万博日本館を始めとして、東京なら新宿西口、小田急百貨店本店、名古屋だと名古屋近鉄ビル、岐阜市内だと岐阜市民会館、そして故郷である羽島市内にも市役所を始めとしていくつかの建物があります。

(人様のHPからいただいてきました)
この羽島市役所には忘れられない思い出があります。保育園から小学校卒業まで、毎年、ゴールデンウィーク中にこの羽島市役所の写生大会が催され、貴重な祭日がそれで潰されたからです。提出した絵が後日審査され、入賞作が選ばれ表彰されたりしたわけですが、幼少の頃より絵がうまかった私は、一度も入選を逃したことがありませんでした(エヘン)。
しかし、毎年描いていて、毎年思っていました。「なんでこの建物は変テコな形をしてるんだ。真四角なら描きやすいのに。」と。
ところが、大学に進学してある日図書館で「世界の建築」と題した本を手に取ってページをめくるとこの羽島市役所が載ってるじゃありませんか! 「世界の建築」ですよ! やがて授業を受け、ル・コルビジェなども知るようになって振り返ると、日本のモダニズムが地方にも広がって行く時期の象徴的な建物であると、その価値が分かるようになってきます。
そんな坂倉準三の出世作、見れなくなるのが分かっていて見ないわけには行きません。(前振りが長いなぁ)
3連休の中日、11日に家族と見に行ってきました。当日はいいお天気でした。
由比パーキングエリアから見た富士。これを期待して新東名は選ばずに東名で。
10年ほど前に鎌倉に行った時、高速を降りて茅ヶ崎辺りでスピード違反で捕まっているので、今回はスピードを控えるつもりでいたんですが、かなりの部分で渋滞していてその必要もありませんでした。
鶴岡八幡宮に着いたものの、あたりは参拝客で込み合い、渋滞も激しい。やっとことで駐車場の空きをみつけて駐車。我が家は初詣にも行っていないし、せっかく鶴岡八幡宮に来たんだからと、まずは参拝。ところが、これもすごい人出。
階段に登る人を区切って調整しなければいけないほどの混雑。
参拝を済ませて、やっと美術館へ。
ところがここも長い列。今月いっぱいで見納めと言うことで、こちらも込み合っていました。上の写真は入場を待っている間に退屈しのぎに撮ったベビーカーの孫。
そしてやっと入館。
1階からではなく、まず2階に上げて入館させるという手法です。
鎌倉近代美術館と言えばこのアングルの写真が最も代表的と言えるでしょうか。池に張り出した2階を池に置いた石に鉄骨を建てて支えています。この鉄骨が細い。今、設計しなおしたら、とてもこの細さでは済まないでしょうね。でも美しい。
その柱を見上げる。何ともシンプルな納まり。鉄骨の耐火被覆もなし。
中庭。中央やや左の白い靴跡にご注目。
この靴跡、実は1955年にル・コルビジェが日本を訪れ、坂倉が彼を案内したときに撮られた上の写真の二人の立ち位置を示したものでした。それを知った娘どもが・・・
なんて恐れ多い・・・。
現在、鎌倉近代美術館は自らの歴史を振り返る展覧会を催しています。展示品にはこんなものも。
「窓外の化粧」。私は確か以前にもどこかでこの作品を見ていますが、美術の教科書にも載っていた作品に出合えたりして、こじんまりとした美術館ですが、近代美術に的を絞っていることもあり、展示作品も見ごたえがありました。
今の一般の人の目で見ちゃうと、小さくて安普請の美術館にしか見えないでしょうね。戦後の建築物ではありますが、その価値は建築歴史の中で位置づけられる存在としての価値だと思います。
期待を上回るような建物だったかと聞かれると「う~ん」と唸ることになりますが、これを見ておけたことで、義務を果たしたような、一つ胸のつかえが取た気持ちです。
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Posted at
2016/01/24 01:47:56