私は例のリコール署名偽造事件に強い関心を持っています。当然、これに関する報道には細部まで目を通しているつもりです。ところが、最近は報道量が大きく減ってしまいましたね。事件の核心というか容疑者の逮捕まであと一歩というところまで来ているはずなのに、どうしてここで止まる? 歯がゆい気持ちを抑えられません。
念のためにざっと振り返っておきますと、ことの発端は愛知県で開催された”あいちトリエンナーレ2019 表現の不自由展”において展示された天皇の肖像を燃やす動画が天皇を侮辱しているとして、美容外科医・高須克弥氏や名古屋市長・河村たかし氏らが、この催しに公金を支出した愛知県知事をリコールしようとしたことです。
そもそも、この焼かれた天皇の肖像とは富山県立美術館で展示されていた昭和天皇の肖像を含むコラージュ作品が富山県議会で不快とされ、美術館から撤去されて燃やされるところを録画したもので、天皇を侮辱しているという批判は当たらないという指摘や、この件で愛知県知事を相手にリコール運動するのは相手が違うだろうという指摘もありますが、それはここでは置いておきます。
8月25日にリコール活動が始まりましたが、一部の自治体ではまだ署名募集期間が残っているというのに、11月7日に高須氏の病気を理由に愛知100万人リコールの会が活動の中止を宣言します。この時点でリコールが成立するだけの署名が集まっていれば特に何の疑問も生じませんが、成立には86万余筆の署名が必要なのに、その時点では43万余筆しか集まっていなかったにも関わらずです。
全身癌だとおっしゃる高須氏は、はた目には今もすこぶるお元気に見えますが、病気であれば仕方がない。しかし、代理を立てるとか代表者を交代するとかして活動を継続することもできたはずなのに、ここで中止? しかもリコール成立までにはかなり遠い署名数しかないのに落ち込んだ様子もなく、ご満悦の表情。少なくとも敗北感は無いように見受けられました。
百田や竹田などの支援者も含めて元々私には好きになれない顔ぶれが始めた活動ではありますが、このあたりでこの活動に対する違和感が増幅してきます。
そして、署名集めの実働部隊であったボランティアの中から不正署名の内部告発が上がって来て、マスコミで報じられるようになりました。最初の内は同一筆跡の署名が複数含まれているといった程度の話でしたが、佐賀県内でアルバイトを動員して組織的に偽造されていたことまで判明し、”勝つためにちょっとズルをした”程度では済まない、組織的犯罪臭の強い話になってきます。報道では「民主主義に対する冒涜」なんて表現も見られましたが、リコールの不成立は動かないとしても決して大げさすぎることは無い表現だと思います。
これが判明したときの高須、河村両氏の発言「私も被害者だ」には呆れました。開いた口がふさがりません。高須氏は「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」の設立者であり代表者であるのに、どうしてまるで他人事のようにこんなことが言えるんでしょうか。署名の偽造に高須氏が直接的な関与をしていないとしても、組織の代表としての責任を感じない人なんでしょうか。仮に高須氏がちょっと匂わせているような、外部の者の破壊活動だったとしても、こんな大々的な偽造に気づけなかったことに落ち度はないと言うのでしょうか。
しかも、フェイスブックなどでボランティアの告発の詳細を読むと、ある程度の同一筆跡の署名が含まれていたことは代表である高須氏には伝わっていたようですが、それを黙殺して選管に提出させたらしい。ですから、高須氏は偽造を知っていた疑いは残ります。
一方の名古屋市長の河村氏も事件化後は一応、謝罪の言葉は口にしたものの、「ワシは応援団だった。高須さんに頼まれただけ」などと腰の引けた発言をし始め、逃げに転じてみっともないことこの上ない。
そして、4月に迫った名古屋市長選に出るのか出ないのか、一時は態度を保留しますが、結局出馬することに決めたようです。
「市長選に出ないと不正関与を認めたことになる」なんて発言もありましたが、そんな不純な動機の立候補に付き合わされる名古屋市民には同情を禁じえません。
ただ、河村氏の当選の可能性は低くはないとも思うんですよね。残念ですが。
最近の有権者は自治体の首長に行政手腕以上に全国への発信力を求める傾向が顕著です。それには知名度が高い人ほどいい。
東京、大阪は言うに及ばず、かつての宮崎県知事の東国原氏、千葉県の森田健作氏など行政経験のない人でも首長になれちゃう。東国原なんて講談社襲撃メンバーの一人であり、不起訴になったとは言え未成年との淫行で騒がれた人物ですよ。そんな人が知事に選ばれちゃう。
それに比べりゃ河村氏なんて元国会議員ですからまだましか?
しかし、あの人もこれまで色々と横車を押してきましたよね。議員報酬の減額や減税はいくらかは歓迎する人もいたとしても、名古屋市内に蒸気機関車を走らせたり、最近は名古屋城を木造で再建しようとしたりで、誰得なのかよくわからないし、ついていけない市の職員の愚痴も聞こえてきそう。
それでも他の候補に比べれば知名度は・・・。
結局、有権者が悪いだけの話なのかも知れません。
冒頭の話に戻りますが、最近、このリコール関係の報道が無くなったのは市長選に配慮してのことなんでしょうか? 影響が出るような方向に進むってことなんでしょうか? 私としては、ちゃっちゃと逮捕まで進んで欲しいんですが。
ひょっとするとここまで読んで、リコールを仕掛けられた側の大村愛知県知事を認めていると思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、それは違います。
そりゃ、辞めさせようとされたわけですから、河村氏を恨む気持ちは分かりますが、黙って無視しておけば大物感を醸し出せたかも知れないのに、ムキになって対立候補を支持するとか言い出したりして・・・。惜しいなぁ。
河村、大村両氏には共通して小物感が漂うんですよね、残念ながら。
結果的に選管に提出されたリコールの署名43万5000筆の内、実に83.2%が無効で、有効だったのは約7万3000筆。愛知県の有権者数は約613万人ですので、リコール賛成の実数は全有権者の1%強ということです。
じゃあ、残りの99%近くの有権者は大村知事を支持してると言えるのかというと、そうじゃないですよね。示しているのは無関心だと思います。
知事のリコールにもですが、天皇の肖像が燃やされたことにも大した関心はない。そんなところなんだろうと思います。
そこに健全さを感じる私は変ですかね?
Posted at 2021/03/21 22:38:24 | |
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