2011年05月27日
おばあちゃんの存在・・・・抜書き(その4)
もう10年以上前ですから本の名前も忘れてしまいましたが、ある生物学の本を読んでいたら、人間を他の哺乳類と比較したときの二つの大きな特徴について書いてありました。
一つは、雌雄の固体の大きさにあまり差がないこと。
オットセイなどの、ボスのオスが群の中のメスを独占するような動物は、オスとメスの固体の大きさに差があり、ひどいときはオスがメスの6倍もの体重になるそうです。他のオスとの戦いに明け暮れるわけですから、そうなってしまうんでしょうね。それに比べれば確かに人間の男女の大きさの差はたいしたこと無い。
もう一つの特徴は、おばあちゃんが存在すること。この時、初めて知ったんですが、おばあちゃんがいるのは、哺乳類の中でも人間だけなんです。そしておばあちゃんの存在が人類の発展にどのように関わっているのかは、まだよく分かっていないと書いてありました。
ここから昨日に引き続き、内田亮子著「生命をつなぐ進化のふしぎ」から引用しつつ、これについてご説明します。
半世紀にわたる野生チンパンジー行動生態調査を統合したものによると、チンパンジーの雌は約13歳で最初の子供を産み(最も若いのは9.5歳)、40代から出産は顕著に減少するが繁殖は一生可能である。高齢出産は49歳、55歳の記録がある。飼育下のチンパンジーとゴリラの雌で閉経の事例は報告されているが、野生チンパンジーの雌では繁殖能力が完全に停止する前に死亡するのが一般的である。
ちょうど、今夜、50代の女性が妊娠・出産するってドラマ「生まれる」をやってますが、人間より寿命の短いチンパンジー(野生の死亡年齢の最頻値は15年で、飼育下だと42年)でも50代の出産例があるのには驚きました。
そう、ここで言うおばあちゃんとは、生殖能力を失った、つまり閉経後の女性のことをさします。そして、閉経後のメスが長生きするのは人間だけ。逆の言い方をすると、他の哺乳類は、人間にごく近いはずの霊長類も含めて、メスは繁殖において生涯現役ってことのようです。
どうして人間にだけおばあちゃんが存在するのか? 昔読んだ本にはその理由はまだよく分からないと書いてあったと言いましたが、この本には答えらしきことが書いてありました。
子どもとの関係で母親以外にどの大人が側にいることで子どもの生存率があがるかという問題について45の調査集団の研究をまとめてみると、血縁関係者が少なくとも誰か一人いることで、生存率が上がる傾向がある。とくに母方の祖母、そして同居する兄弟姉妹は役立つようだが、父方の祖母の効果はバラツキが大きい。父親のポジティブな貢献を確認したのは3分の1に過ぎず、これまでのところあまり役に立っているという証拠は多くない。
おばあちゃん、それも母方のおばあちゃんが孫の側にいるってことは、子どもの生存率向上に大きく関わってるようですね。それに比べて父親の影の薄いこと・・・・。おばあちゃん以下かよ!
もちろん、おばあちゃんにとっても孫といることはメリットがあります。
現代人は、繁殖機能と身体全体の老化の進行を切り離して寿命を延ばした。この進化説明については、さまざまな議論がなされている。なかでも女性の閉経後の人生の適応的意義について説明を試みる「おばあちゃん仮設」はよく知られている。これは自分自身は繁殖能力をもたないが、子どもや孫の生存を助けることで共有する遺伝子の複製の確率を高めるという血縁選択理論での説明である。
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Posted at
2011/05/27 23:50:56
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